第4話彩る日常

 伊山君からメールでアトリエに下絵を持って欲しいとあったので、仕事帰りに寄った。

「こんにちは、神崎です。下絵を持って来ました。pcに取り込んであるので、良ければお貸しします。」

「ありがとう、助かる。実は制作途中で、行き詰まって、何かヒントを探してたら、神崎さんが浮かんできて。じゃあ、お言葉に甘えてお借りします。」

彼はちょっと疲れた顔だった。

「疲れてます?なんか顔色も悪いですよ。ちゃんと睡眠、食事取ってます?」

 伊山君はゆかいそうに笑い言った。

「神崎さん、うちの母さんみたいな事言うなぁ。ありがとう、大丈夫!」

 急にいたずらっ子な表情になった伊山君は「神崎さんの膝は大丈夫?跡になってない?」と聞いた。

「えっ何で、膝なの?」私はよくわからなくて、呟いた。

 「あれ、僕の事覚えてない?絆創膏。」彼は愉快そうに笑顔で言った。

 「えっ伊山君覚えてたの?絶対忘れてると思ってた。私は一目見て気づいてたよ。」

 「忘れてる訳ないじゃん。僕も一目で分かったよ。でも言い出すタイミングがなくてさ。」彼は楽しいそうに笑った。あの時を思い出し、散々笑いあって楽しい時間を過ごした。

 帰り道、私は足取りが軽くなっているのを感じながら帰った。

 

数日後、試作品を作った。彼らに見て貰うため、アトリエを訪れた。

 「試作品持ってきたので、ご意見頂ければと思います。」

私が意見を求めると、まず伊山君が

「ここの色味抑えつつももう少しメリハリを出したいなぁ」

「では、この植物なんかどうでしょう?フォルムや彩度にメリハリがつくと思います。」など皆が色々と意見を刺激的な時間を過ごした。

国近さんは伊山君が言ったようにいつもの国近さん、いやいつも以上の国近さんにパワーアップしていた。

皆の生き生きした表情は私には、心の太陽になっていた。

 

 

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