第11話 新人冒険者、ゴブリンを殲滅する。
「グォァァァァァッギャォァァァッ!!??」
ゴブリン達の断末魔。そして、土かまくらの中で突如出現した火の手に怯えたオロチがその場で怯んで一歩後ずさる。
その隙に、ローグは傷ついたグランと魔法術師を階層階段の壁まで運んでいった。
献身的に女性の
単純な切り傷や噛み傷以外にも、状態異常の神経毒が混ざっていることも原因だろう。
「何で新人がこんな所にいるんだ……?」
グランが、苦痛と汗で顔を歪ませながらも強気で言う。
「第1階層の清掃任務が終わり、第6階層『ドレッド・ファイア』の任務の様子を見学していたんですよ。そうしたら、下の方に異変が見えたので走ってきた次第です。何とか間に合って良かった……!」
グランは、ふぅと深く息を吐いた。
ローグは悔しそうに患部を見つめる。
「すみません、俺、回復魔法は結構しょぼくて力になれそうにありません……!」
事実、ローグはそこまで回復術に精通しているわけではない。
本職が
不死の軍勢を率いるとなると、回復術もほとんど必要なかったことに加えてローグ自身が戦闘によって傷を負うことが全くと言うほどなかったために、回復すること自体、機会に恵まれなかったこともある。
「こんなことだったら、回復術についてもっと学んでおけば……!」
ローグの言に、魔法術師は「あっはっは」と快活に笑う。
「何言ってんだ。あの窮地救ってもらっただけで大助かりだってんだ。なぁ、グラン!」
「……あぁ、そうだな。新人、いや、ローグよ。助かった。礼を言う」
しゅぅぅ、と煙を上げて少しずつ修復してきたグランは、魔法術師と共に再び立ち上がった。
「グルルルル……? ルルル……?」
喉をごろごろと鳴らしながら辺りを散策するのは7つ頭のオロチ。
先ほどローグが作り上げた土かまくらがガラガラと音を立てて崩れ、その中からはゴブリン達の残骸である灰が空を舞った。
「このことは、俺からも包み隠さずカルファ様の方にお伝えしよう。残るはオロチ、奴のみだ。イレギュラー対応が出来なかった俺にはもう昇格の目はないだろうが、せめて後悔のないように最後までやらせてもらいたい」
グランの言葉に、魔法術師や
「ローグさん、ありがとうよ。ゴブリン達がいなくなったのも、ローグさんのおかげだ。ギルドに帰ったら死ぬほどエール奢らせてくれよ」
魔法術師がにこりと笑い、3人は再びオロチに立ち向かおうとする。
「――いや、まだだ」
そんななかで、違和感を覚えたのは、ローグだけだった。
「グランさん、
意味深長なローグに、不思議を感じながらもグランは「任せてくれるならば本望だ」とだけ呟いて、剣の柄を握った。
「ありがとうございます」
直後、ローグは右手に魔法力を溜める。
「土属性魔法、
ローグが短い魔法詠唱を終えると、ぐにゃりとローグの周りだけ地面が下降していく。
グランが、オロチに向き合いながらも後方のローグの姿に首を傾げる。
「何をするかと思えば……ここは《デラウェア》渓谷最深の第10階層だぞ。その下には何も――」
言いかけて、事の顛末を見守っていた
「だ、
「――なに!?」
「第11階層!? 聞いたことねぇぞ、そんなの!」
グランと魔法術師も驚きの声を上げる。
女性の
刃こぼれを起こした直剣や、皇国の銀鎧などが散乱していた。
「さ、サルディア皇国兵の銀鎧に、武器一式と……ギルド『アスカロン』にて捜索願が出されている最中のDランクパーティー『アーセナル』、Cランクパーティー『デスペラード』の構成員の所有物と思しきものが散乱しています! これは、一体……!」
ローグは、地面ごと階下に落下しつつ
「分かりました、オロチがこの場に落ちてこないようにしっかり留めておいて下さい! こいつらの持ってる遺品は回収しましょう!」
ダンッと、ローグが
「グギ……?」
第10階層の狭さとは打って変わって、広々とした空間が広がっている。
高さはおおよそ3メートルほどと高くはないが、奥に続いた暗い道はどこまで繋がっているかが分からない。
「おいおい、一体この国はどうなってんだよ……」
ローグを見るや否や襲い掛かってくるゴブリン達だが、以前のようにその長であるゴブリンキングの姿はない。
ここにいるのはおおよそ組織の中でも末端の末端だろう。
「これで全部か。何の目的があってこんなとこに巣食ってるのかは分からないけど、先輩の邪魔をしたのはいただけないな」
それでも、おおよそ数十体いるゴブリン達の群れを相手に少しも怯むことなくローグは呟いた。
「雷撃魔法、雷剣!」
ローグが唱えると、右手には雷の因子が迸る直剣が姿を現した。
ジジッと放電し、金色の光を放つその剣に、ゴブリン達が神経毒の入った小刀を構えつつも後ずさる。
「ひとまず、ここのは全部回収させてもらうよ。上には先輩冒険者さんもいるし、これ以上邪魔させるわけにもいかないからさ」
ローグは、眼前にいる全てのゴブリン達を屠るまで、一度も止まることなく剣を振り続けたのだった。
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