葛藤
いやいやいやいや!?
おやおやおやおや!?
一体、どこまで私はクライヴに絆されているっていうんだ!?
あのあと一人にさせてほしいと言って部屋で一人になったものの、ジタバタと体が動いて止まらない。カーテンを閉じて誰にも見られないようにしているけど、見られていたら多分補佐官じゃいられなくなってしまうだろう。怖い。もしかしたら死刑になってしまうかもしれない。怖すぎる。
でも!
だって!
て、手の甲にキス!?
それはもう、普通にプロポーズなんじゃないかな!? いや、頬とかその、口じゃなかっただけマシと思うべきなのか……? でも、流れ的にそうなってもおかしくはなかったよね!?
私も私で、何を言っているんだろう。発言を取り消せる魔法があったら今すぐにでも習得したいくらいだ。魔法使えないけど。
絆されたらいけないのに。
残虐な敵将クライヴなのに……。
全然残虐じゃないんだもん、私にとっては。
他の人にとっては、残虐なのかもしれない。謎の地下があることも分かっているし、彼は多くの人を殺してきているというのは間違いない。
でも、それはこの世界では普通のことだ。
戦争があり、反乱され、それでも国を守るために戦っている。本人にその自覚があるかは、はなはだ疑問ではあるものの……。
日々の仕事を通じて見える彼の姿は、むしろ国と民を思う誠実な指導者のそれなんじゃないだろうか。まだあんまり、知らないけど……本当に残虐な将は、書類整理なんてしない気がする。
地下の施設の存在は気になるものの、この混沌とした時代で生きる上では、時として残酷な手段も必要なのかもしれない。いや、必要なんだろう。
というか、私にとっては必要だった。少なくとも、この世界で生きるために。
部屋で一人の落ち着かない体を抱きしめながら、私は考え続けた。
この感情は、単なる絆されただけのものなのだろうか。それとも……。
いや、考えてはいけない。異世界転移してきただけの人間としての立場を見失うわけにはいけないのだ。
でも、心の奥底では既に、答えは出ているのかもしれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます