幕間:思案する女 (1) - キツツキ


「はっ……はっ…………ここまで、……来れば……」


 薄汚れたガルムの革鎧をまとった男は多少走る速度を落としながら、身を隠す場所を探すべく周囲を見渡した。


 だが、松林は一向に終わる気配はない。


「クソッ……! ……ふっ、……はぁ!………はぁ…………」


 男は脳裏に付近の地図を浮かべた。しかしこの辺りはくまなく歩きまわったことがあったわけでもなければ、襲撃の計画立てをしたことがあったわけでもない。

 だいたい男の両脚はきしみ、息も絶え絶えだった。騎兵に追い付かれないよう、セティシアから全力で走り続けてきたためだ。思考は淀んでいた。悪知恵の1つも浮かばないほどには。


 松林を抜ければ<灰色の霧の丘>にたどり着く。

 視野を遠慮なく狭くする濃霧にくわえ、巨石や低崖などもある高低差の激しい隆起した道々は、騎兵が賊を追うのに最も嫌う部類の地形だ。


 男には<灰色の霧の丘>にたどり着きさえすればどのような敵からも逃れる自信があった。

 地図も易々と浮かぶ。マッピングは完璧だ。隠れる場所もいくらでもある。


 濃霧を利用して幾度となく通行者を襲撃してきたためだった。男は射手であり、仲間と協力する形だが、兵士はもちろん騎兵も殺したことがある。


 問題は果たして丘まで辿り着けるかという話だ。


(せめてもう少し様子をうかがってから逃げ出してくるべきだった。そうすればこんな羽目には……。だいたい俺は分かってたんだ。確かに兵団は全滅したが、セティシアの警戒レベルは爆上がりしてるって。七星や七影が揃ってるし、いくら町はずれ狙いでも襲撃は俺たちなんかじゃ無理だって。サズラブの野郎め!! 少し俺たちより実力があるからってホンヤックを殺しやがって!!)


 男の脳裏は走り出してからというものの絶えずこのような考えで占められていた。

 窮地に追い込まれた時、人はもはや考えても仕方のないことを延々と考えることがあるが、男もまた例外ではなかったらしく、愚かな襲撃を決断をし、そしてあっさりと死んでいった頭目に恨み言を言うばかりだった。


 やがて耳に飛び込んできた馬の蹄の音に男は絶望し、焦り、自分が早急の選択を迫られている事実を悟った。


 再び全速力で走り続けるか。それとも――


 相手は1人だ。たとえ、相手が国が誇る<七星の大剣>の隊長であろうとも1人だ。なら――


 と、そんな中、確かに選択肢の1つではあるが、何の説得力もない希望観測的な考えが男には浮かぶ。

 男はレベル25にすら満たないし、スキルも1つも持たないというのに。今は仲間もおらず、たった1人だというのに。


 すぐに男の思考は愚かな考えから離れ、冷静になる。勝機など鼻からまるでないことにも今気付いたかのように気付き、これまでの自分の行動を内心で毒づいた。

 分かっていたことだ。頭目のサズラブから参加しなければ殺すと言われる前も、言われた後も。


「ちく、しょ……!」


 ただ、隠れる場所はない。相変わらず男をあざ笑うかのように見晴らしのいい松林が延々と続いている。

 <灰色の霧の丘>まで全力で走り抜けるならどこかで一度呼吸を整える必要があるが、あいにくとそれはできそうにない。体力も底をつきかけている。


「……俺の、ふぅ、……ふぅ! …………悪運も、……ここまでか……」


 男はついそうこぼして自分の人生の終幕を予感した。

 男の人生の幕切れとその先がいったいどのようなものになるのか。男は生粋の賊だ。想像するまでもない。


 男の魂が最果ての黒砂の地ブラックグラウンドに向かい、責め苦を受けるのは確実だった。


 男はやるせない笑みを浮かべた。もはや拷問などどうでもよくなってくる。しょせん肉体が受ける痛みではないとたかをくくった。

 ただ……生き残らなければならなかった。どうしても。男にはこの芽生えた「心境の変化」の仔細について、何も分からない。


 いつからだったか。男は死に対して恐怖感が薄れるようになっていった。


 物を盗み、金を盗み、人を騙し、人を殺し、女を犯し、孤児の子供を売り飛ばし、……彼はそんなどこにでもいる悪党で、畜生の賊の1人で、いつか訪れるであろう自分の凄惨な死に際にすら同情していなかった。

 戦争孤児であり、物心ついた時から仲間と悪だくみをしてきた根っからの賊の宿命だったし、彼らに平等に訪れもする自分の死への悟りでもあった。仲間が次々と死んでいく中、生き延び続けたことを半ば誇りに思っていたし、運がいい男だとも得意げになり始めていた。


 ただ、ここ一ヶ月の男はそんな普通の賊とは違った行動を見せていた。訓練に一人精を出すようになっていたのだった。

 根城でやってもよかったが、仲間から茶化されるので森や人気のない開けた場所を選んだ。<灰色の霧の丘>だったこともある。射手だし訓練は確かに必要だが、ストイックに1人で訓練に明け暮れる賊もそういない。


 名誉。犯罪者である彼とはもちろん縁のない代物だ。

 だが、近頃は男はこの名誉という見えないものに翻弄され、気にかかっていた。人に賞賛されることはどのような金品よりも価値のあるものに見えていた。


 何がキッカケだったのか?


 男がある襲撃の作戦中、隊商の護衛をしていた攻略者にとどめを刺した時。

 攻略者は血を吐き出しながら薄い笑みを浮かべた。彼から「お前のクソみたいな人生はいつまでも変わらない。いつまでも暗い闇の中だ」と言われて以来、男は考え事が多くなった。たいした罵り文句ではなかったがこの時は妙に印象に残った。なぜだか。


 もちろん別に自分の人生について、男が高尚に考えるようになったわけではない。

 男は生きるために賊をしているだけに過ぎない。庶民ですらもないというのに、単なる賊に人生の選択権など鼻からない。だいたい男に学などない。


 その後。ある日。


 男は森の中で倒れていた老婆に水をやったことがある。老婆は乞食のように薄汚く、盗るものがなさそうだったので、男は同情の気分で気まぐれに水をやっただけだったのだが、老婆は涙を流しながら感謝の言葉を男に連呼した。シワだらけの死にそうな顔に慈悲深い笑みをたたえ、「これからのあなたに赤竜様の加護と多大なる幸がありますよう」という言葉も添えて。

 そそくさと老婆の元を去ってしまった男だったが、その夜は実によく眠れた。仲間に酒を奢ったのもあるかもしれない。祭りにでも参加してきた気分だった。馬鹿にされるだろうし、善行をして浮かれたなどとは口が裂けても言えなかった。


 翌日、気になって老婆のいた場所に行ったが、もう老婆はいなかった。老婆がどうなったかは分からない。ただ近くの木に老婆にやった水入れが置かれてあった。以来、今日までに大きな盗みの計画が2回あったが、男は2回とも腹痛と頭痛を理由に留守番を申し出た。

 さきほども言ったが、男にこの自身の心境の変化について説明する明快な言葉は持たない。ただ、訓練に精を出すと男は妙に気持ちがすっきりした。だから訓練の時間が増えていったのだった。充実感もあり、男のレベルは1上がっていた。


 訓練といえばちょうどこの頃、男は市民に扮して街に行った折にセティシア兵団の詰め所の訓練を眺めていたこともある。

 残念ながらもう彼らは討ち死にしてしまったが、兵団主催の手合わせの大会の最後を飾る、総隊長ボジェクと副団長アイクの戦いは男を実に興奮させた。


 ボジェクは国境都市を守る総隊長にしてはしょうもない男だった。


 退役間近と揶揄されていた男で、警備はするが訓練には出ず、ボジェクと似たしょうもない男たちと駄弁るか娼館に通うばかりで、「足くさボジェク」と市民から呼ばれるくらいしょうもなかった。

 とはいえ、アイクに負けた打ち合いの内容はとくに腕利きでない男の目から見ても素晴らしかった。僅差だった。ボジェクという情けない男を見直すのにじゅうぶんな内容だった。拍手喝采があり、男も熱心に拍手を送ったものだった。


 拍手喝采は勝った時期総隊長のアイクへの賞賛ももちろんあったが、多くはボジェクへの声だ。

 打ち合いへの賞賛と過去の功績を持ち出しての健闘を称える声と、それから、くたばるまでくらいはもう少し真面目に頑張ってくれという実に和やかな野次だった。……


 男は立ち止まると一度深く呼吸をして、迅速な動作で矢筒から矢を1本取り出した。


 男は矢を弓にあてがい、勇気を振り絞って振り返った。


 馬は――いた。もうすぐそこだ。


 男は息を落ちつけながら集中した。かつてないほどに。

 そしてわずかに高揚感も覚えた。今まで感じたことのない高揚感だ。自分の罪深さを棚に上げ、これから決死の正義の行いに身を投じるようなそんな純粋な覚悟に、孤独な訓練で培った集中力を無自覚ながら伴って。


「……赤竜様。……ふぅ……。……こんな俺ですが御力を…………」


 男は自分の矢がまぐれでも当たるのを願った。当てた先にはボジェクとアイクが浴びたような名誉の賞賛があるはずだったから。


 そして男は素早く――自分を追ってくる追跡者に向けて矢を放った。


 男の弓は仲間内で3番目でそれなりの腕前だったが、死線という沼の中で発揮された集中力は男の弓の腕をずいぶん引き上げた。

 この矢は男にとっては生涯一の渾身の一撃だったかもしれない。狙いは正確で、わずかな追い風も幸いして速度も出ていた。


 地形もよかった。

 走るのに必死で男は気付かなかったが、マツの木の絶妙な配置によって騎兵は緩いカーブを走らされていた。矢は騎兵に当たる直前には木に隠れていた。仮に避けられて当たらなくとも馬との連携が乱れ、落馬する可能性はじゅうぶんあった。


 この松林、この男の置かれた状況下における不意打ちの一手としては、これほどのものはなかったと言えた。

 七竜は悪人に味方はしない。男と仲間たちが勝手に曲解して信奉しているだけだが、悪運は確かにもたらされたと言えたかもしれない。


 放たれた矢は、弓術名士ボウマスター所属の射手が距離、風、地形、そして運すらも視野に入れた緻密に計算された末のものであるかのように、馬で追跡してくる者の首を寸分たがわず穿つ――


 はずだった。


 標的の騎兵はあろうことか、上体を思い切り横に逸らした。左手で鞍に備え付けの“持ち手”をつかみ、左足の鐙はそのままに右足は右の鐙を引っかけ、馬の左腹部に仰向けの姿勢で貼りついたのだった。

 曲芸師じみた動きを見せて矢を避けた兵士は結局落馬することもなく、何事もなく体を馬上に戻した。剣を手にしていたため、仮に目の前に敵がいたとしても無茶な姿勢のまま切り伏せていたかもしれない。


 男は目を丸くした。

 もちろん矢が外れたことに対してではない。


 そして男が絶望も感嘆もする暇もなく――騎兵は姿勢を戻すや否や、「駆けろっ!!」と鋭く叫んだ。

 馬の足元それぞれに小さな緑色の魔法陣が出現したかと思うと馬の速度が爆発的に上がった。


 ――突風が通り過ぎるように一瞬の出来事だった。


 男は松林の枝葉に浸食された空を眺めることになった。

 だが、目がまわっていて空を眺めるどころではなかった。


 男は目をつぶった。


 (勝てるわけもなかったんだよな……。でも当たってた。俺の矢は、絶対当たってた! あの陣風騎長ストームライダーの隊長ブラナリに!)




 賊の死体の元にミスリルの鎧の騎兵がやってくる。鎧の装飾は豪華で、光沢は消されている。騎兵は馬から降りて剣を鞘にしまう。

 ミスリルの馬面をかぶった葦毛の馬がブルルと勇んだ。兵士はアーチェと静かに呼び、馬の黄金色のたてがみを撫でた。


 馬の腹の下には穂先が革袋に包まれた意匠が独特ながら見事な出来栄えのランス。黄鉄鉱色の穂先は半分しか収まっていないし、見識のある者、七星をよく知っている者が見ればすぐに分かるだろう。

 このランスが神級法具アーティファクトのクールグラスであり、持ち主である彼が陣風騎長の隊長ブラナリであることは。


 ブラナリは馬から降り、死体を足先で軽く転がしたあと、傍で膝をついた。そうしてバイザーを上げる素振りを見せたが、彼にはそもそも冑はなかった。風で乱れた頭髪があるだけだ。

 ブラナリは小さく息をついたあと手を握り、下ろした。


 彼のヒゲは薄く、体つきも小柄でもあって、七星の隊長と言うにはやや風采が上がらない男だった。もっとも眼差しに一切の油断はないのは確かで、名うての兵士には見えた。

 ブラナリはしばらく死体を一瞥した。やがて死体の腕を軽く持ち上げた。


 賊の腕には草色の布が巻かれ、たいした出来ではないが、黒い翼を持った鳥の刺繍があった。

 嘴は獣人の鉤爪のように湾曲していて鋭く、灰色だ。おそらく金属製の嘴用の装備なのだろう。そして下には標語。


 ――我らは夜啼きのキツツキ団


 目的は賊の腕章だったらしい。ブラナリは腕から手を離し、立ち上がった。


「――馬上のあなたに半端な放出系の魔法は逆効果なのでしょうね、ブラナリ。いつも惚れ惚れするわ、あなたの馬術には」


 女の声がブラナリの頭上で響いた。

 ブラナリは立ち止まりかけたが、それほど驚いた素振りもないまま馬の元に行く。


 女がふわりとブラナリの後ろに着地した。飛翔魔法だ。

 橙の瞳を持った美しい女だった。波打つ艶やかな黒髪が風になびき、辺りにはジャスミンの華やかな香りがふわりと漂う。


 魔法的付与も施したカトブレパスの濃紺の革鎧を身にまとった女の手には、核石コアであるレドフィリオを逆巻く白い翼に抱かせた風雅な杖があった。

 ブラナリのクールグラスほどの価値は持たないが、この杖――蒼穹の覇者は現在魔導賢人が所持し、一門の風魔導士なら誰もが欲しがる魔法道具マジックアイテムだ。


「馬を狙えばいい話だ。たいてい兵を狙うがな」

「なぜ馬を狙わないのかしらね。騎兵の馬を狙うのは合理的なのに」

「その質問に意味はあるのか? 魔導賢人ソーサレスのウルスラ」


 ブラナリは振り向かないまま答えた。

 ウルスラは小首を傾げたあと、別にたいした意味はないわ、と肩をすくめた。蒼穹の覇者の赤い光が静まる。


「1回で仕留める方が効率的だものね。騎兵を失った馬は戦えない。一番は土魔導師が《石壁ストーンウォール》を出すことだけど」


 ウルスラはそう言って死体に目を留めた。


 死体は右手が握りしめられている。矢を放った直後なら手は開いているはずだった。

 首は7歩ほど離れた場所に落ちている。ウルスラは首に視線を向け、しばらくの間、眉をひそめた。やがて緩める。


「……死霊術の痕跡はないわね。これで最後?」

「どうだかな」

「書いてあった? 夜に啼くキツツキだって」


 ブラナリは馬に跨った。問いには答えないまま歩き出し、ウルスラも後ろから続いた。


「キツツキが夜に啼いて何の意味があるんだかな」

「さあ? 答えられる人はあなたたち陣風騎長部隊が仕留めてしまったし」

「喪中の国境都市に襲撃する愚か者など生かしておく道理はない」

「そうね。でも襲撃理由は気になるでしょ。伯爵の寝ている屋敷がすぐ近くにあるし」

「情報が漏れているにしては腑抜けた連中だった。頭目の男が死ぬと奴らはいっせいに逃げ始めたからな」

「紋章と標語の共有による結束力の強化は誰かの入れ知恵だったのかしら」

「奴らは俺たちに見つかったあと粉ひき屋を狙おうとしていたぞ」

「つまり金目当て?」


 ブラナリが「時期はよくないがな」と同意する。

 ウルスラは息をついた。


「間が刺した、空腹だから、金が欲しいからという襲撃の三大原則からは外れなかったのね」

「……王狙いの可能性もなくはない。代理だが金は取れる。護衛に俺たちがつくことを想定できず、俺たちを見くびっている愚者ならあり得る話だ」

「そうね」


 しばらく2人の間に静寂が訪れた。その間ウルスラは今後のセティシアについて少し考えた。


 ウルスラは彼ら――<夜啼きのキツツキ団>が単なる賊である説を強めた。ブラナリもそうだろう。

 確かに襲撃先の近くにはディーター伯の宿泊している屋敷が傍にあった。そのために身代金狙いの可能性もある。だが、それにしては戦力が低すぎた。数も20人程度で、とても王と七星を相手にしようという大それた魂胆は見えてこない。


 呪術者集団や異教徒の類、もしくはそのような相手から利用されたにしても、魔法的痕跡がまるでなかった。

 魔導師にくわえて精霊術師までいた<山の剣>は稀な例だ。<夜啼きのキツツキ団>には《火弾ファイアーボール》を撃ってきたのが1人いただけだった。ウルスラが子供の頃に撃ったものより劣る代物だった。


 夜に啼くキツツキという団名からもたいした思想は感じられない。

 構成員たちも特筆すべき者もおらず、各々逃げるうちに仕留められた。ブラナリの言うように“単なる愚者”なのかもしれない。


 だが……タイミングは悪い。


 王の代理としてやってきたディーター伯爵は寝込んでしまっている。幸いにしてただの疲労で、そのことは市民にも伝えてあるが……。

 代理とは言え王がいる手前、警備の状態をこのままにしてはおけない。セティシアは都市の存亡がかかっている。これ以上、市民の不安は煽ってはいけない。市民の流出は防がなければならない。


 かと言って、警備の強化を図るにも兵士の絶対数が足りない。


 現状の兵数が、兵団が生きていた時の半分にも満たず、警備に回せる人員となるとそこからさらに1/3を下回る。支援者が多いことにより過剰気味に防壁を高くしているケプラなら多少楽観視できただろうが。

 なんにせよ、夜番に加えてしばらくは周辺警戒を徹底する必要がある。ただ、どちらも今のところは増員は期待できない。であれば……


「……篝火の数を増やしましょう。防壁の補修と増設を終えるまでは拒馬や木杭による防壁を都市の周りに増やして」

「ヘッセーに打診するといいだろう。防壁も篝火も全てな。ハンツも少しは重荷が減るだろ」

「フィッタの売れない木材の在庫も減らせるわね。ホイツフェラー様に直接言うのもいいけど、ディーター伯に打診することになるでしょうね」


 お前の得意技じゃないか、とブラナリが淡々と言うので、ウルスラは不機嫌そうに口を曲げた。


「何度も言ってるけど。私は世がうそぶく女の幸せとやらに興味はないの。最終的に女の幸せとやらの境地に行きつくのだとしても、それまでの生きた道程は私という個人で考え抜いた結論の連鎖よ。性別に囚われないわ。それに私は生粋の魔道士。生まれ変わっても魔導士になるつもりよ。どんなことがあっても絶対に」


 ブラナリはそれがお前の得意技だというんだ、とつぶやいた。だが、同時に馬の歩みを速めたため、ウルスラには聞こえなかった。

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