7-23 ハンツ・ホイツフェラーの仇討ち (4) - 正義の奪還者
各々補助魔法をかけあったあと、俺たちはさきほどランハルトたちが話していた突き出した木々の前に集まった。
隊列は、俺たちに仇討ちをやらしてくれと言っていたように、ホイツフェラー氏が連れてきた
仇討ち戦だし、この隊列には俺は別に文句はない。他のみんなも特にそんな雰囲気はなかった。
混成隊は20名ほどだ。対する<山の剣>はマップ情報によれば30人ほど。俺たちを加えると、お互いにだいたい同じくらいの数になる。
勝利という部分に焦点を当てるなら、俺とインがいる時点で勝利は確約されたも同然ではある。相手の実力を知りきっているわけではないので100%ではないが、これまで奴らと戦ってみたのから察するに相手にならない。
ただ、俺たちは今回はサポート役のようなものだ。さらに相手は屋敷内にいて、現在は姿が見えない。
くわえて奴らには召喚士も魔導士もいた。仮に魔法の類の戦力はもうなく、全員が単に切りかかってくるだけだったとしても、屋内戦闘になるのなら戦況はちょっと込み入るのではないかと考えてしまう。
俺はいざとなれば屋敷内の家具をもろともせずに斬ることはできるが、もちろんそういうことではない。だいたい伯爵邸を壊したいわけではない。誰だって狭い場所で剣を振れば壁に剣が当たったり、刺さったりする。大振りの斧であれば、その隙は致命的になることもあるだろう。
この戦いの主戦力はレベル62のホイツフェラー氏とレベル40のラディスラウスさんになるだろう。まさか山賊に七影や七星クラスの者がいるようには思えないので、苦戦することはあっても、負けることはないように思う。
まあ、俺があれこれ考えずとも戦闘のプロの彼らだ。色々と考慮して動くことだろう。
「……解せん状況だ」
先頭で伯爵邸の方をじっと見ているホイツフェラー氏がぼやいた。
「はい。衛兵を殺してはいますが、本当に見張りも何もないとはおかしなことです」
やっぱり赤斧休憩所の見張りがここの見張りを兼ねてたんじゃないか? 通り道だし。
ちなみに伯爵邸は石塀はあるが、門の類はない。伯爵邸にも見張りはいない。
斥候役をしている兵たちに知らせに行ったマルフトさんを待っていると、村の方から兵士がやってきた。
彼は俺たちの近くまでくると、ホイツフェラー氏とラディスラウスさんのところまで静かに移動した。彼は中性的な顔立ちをしていた。
「あの、ハンツ様。保護している者で戦闘に加わりたいと言っている者がいるのですが……ハンツ様たちと仇討ちをしたいと。フィッタの警備兵だそうです」
声が高い。よくよく見れば、可愛らしい顔をしていた。女性だったか。
ホイツフェラー氏とラディスラウスさんが目くばせした。ドルボイさんが「ハスターか? 黒ヒゲの奴だ」と訊ねると、兵士が肯定した。
「……いいだろう、連れてこい。お前たちは引き続き警備をしろ」
女性兵士が引き下がっていく。
「参加しなかったら一生後悔させたかもしれんな」
ホイツフェラー氏の発言に周りの兵士たちが同意した。
確かに生存者の兵士で戦いに加わっていなかったのはハスターさんだけだったな。残りは男手はベンさんだけになるが、警備もいるし大丈夫だろう。ベンさんはあの性格だと戦いには加わりたがらないだろうし。
「あの女兵士誰だ?」
「ヘッセーの警備兵だな」
「名前は?」
「あー、マニーとかじゃなかったか。なんだ気でもあんのか」
「そんなんじゃねえよ」
「残念だったな。あの子には恋人がいるぞ」
「え、そうなのか……」
という、ランハルトとイーボックさんの小声のやり取り。ランハルトの声は聞き取りやすいので、他の兵士も聞こえただろう。
ラディスラウスさんが静かにしろ、と言うと2人が慌てて返事をして静かになる。
やがてハスターさんが村の方からやってきた。俺がつけた《
ハスターさんはホイツフェラー氏に向けて膝を地面につけた。左胸に手をあてて、「感謝致します。閣下」と静かに礼を言った。
「ああ。頼りにしている。適当に配置につけ」
ハスターさんは頷くと、列の端にいたドルボイさんの近くで待機した。《氷結装具》について聞かれるかと思ったが、とくに何もないようだ。
しばらくして、森の方から気配。マルフトさんが森の方から兵士を1人連れてやってきた。斥候をしていた兵だろう。
「イングラムがきましたね」
「ああ」
彼――イングラムさんの腰には長剣と薪割りに使いそうな手斧が下がっている。切れ長で、やや据わった目つきだが、体格もいいように見えるし、頼もしそうな兵士だ。
「窓から奴らが見えることがありましたが、依然変わった動きはありません。何一つ。馬も一頭いるだけです」
「そうか。……弓を持って、ここにいろ」
馬か。動きがあるなら確かに馬も増減するだろうな。村の厩舎の方は馬は一匹もいなかった。
イングラムさんは頷くと、俺たちの近くに雑に置かれてある予備武器の山から弓と矢筒を取って、矢筒を装着した。これで弓を持ってるのは、ベルナートさんを含めると4人ほどになった。
3分ほど間があった。物音は鎧がずれる音くらいのもので、静かだった。
その間に、端の方からこんな小声の会話。
「――ネーベル、奴らはどう出ると思う」
「――分かりません。油断ができないのは確かです」
「――……私はいつになったら前に出れるんだろうな」
「――仕方ありませんよ。フルト様はビュッサー家の唯一の跡継ぎですから」
「――ああ。分かってる」
ネーベルという兵士は従者かなにかだろう。彼もまた貴族らしいが、察するに色々事情があるらしい。まあ、貴族ならあっさり死ぬのは困るよな。ホイツフェラー氏の責任問題にもなりかねない。
インが念話で、人の子の戦というのは時間がかかるの、と態度には出してないが、声音で退屈そうにこぼしてくる。
――状況もよくないからね。相手の動向の予測ができないなら安易に動けないよ。
『中にいることは分かっておるのにのう』
――まあね。
やがて木々の間から伯爵邸をじっと見ていたホイツフェラー氏が傍のラディスラウスさんに語りかける。
「……そろそろやるぞ。奴らがいつまでもオトマールの屋敷を占拠してるのは我慢ならん」
抑えてはいるようだが、声からは腹立たしさがじゅうぶん伝わってきた。
「……もう少し見ることもできますが」
「どうせ何も出てこんだろう。これまで動きが何一つなかった上に、奴らは屋敷から一歩たりとも出てないのだからな。屋敷には地下はある。だが、酒を保管しているだけで外に逃げる通路はない」
ラディスラウスさんとマルフトさんが顔を見合わせた。
難しい判断だろうな。ただの山賊ならここまで警戒しないんだろうが、いかんせんエルフの、つまり他国の人間の召喚士がいたほどの組織だ。ラディスラウスさんがもう少し様子を見たいのも分かる。
「
だが進軍することに決めたようで、ラディスラウスさんがそう呼びかけると、縦長の逆三角形型の盾、カイトシールドを持った兵たちが3人出てきて2人がホイツフェラー氏の左右、1人が前につく。
ホイツフェラー氏も立ち上がった。そうして前で盾を構えた兵士に、横にいろと言って、前を開けさせる。
「行くぞお前たち。奴らの姿はろくに見ていない。何があるか分からん。注意しろ」
みんなが頷くと、俺たちは進軍を開始した。
ホイツフェラー氏は先頭らしい。レベルという強さの指標があり、魔法やスキルという人間的な限界を超えられる能力があるとしても、勇ましい人だ。
木々を迂回して現れた伯爵邸の敷地の入り口には2人の衛兵が倒れていた。2人ともしっかり鎧は着こんでいるが、額から血を流している。片方は避けたのか頬に切り傷もある。
伯爵邸は2階建ての瀟洒な建物だった。赤斧休憩所より少し小さいくらいの広さがある。傍には長屋が一棟と、厩舎がある。敷地の周りは石の壁で覆われている。
屋敷の前の道の周りは、豪勢というにはちょっと足りない植木が綺麗に手入れされている配置にこだわったこじゃれた庭があるが、屋敷内の人間だろう、使用人風味の服を着た人たちがぽつぽつと倒れている。
ホイツフェラー氏が1人の衛兵の死体の元にしゃがんで、熱湯か、とつぶやいた。
熱湯!
「魔道士ですね」
「ああ」
召喚士と一緒に魔導士を始末したが、奴だろうか?
それにしても……確かに衛兵の鎧は首元も守っているため防刃耐性は抜群だが、ハット式の冑のため顔は開いている。バイザー式だとしても視界と呼吸のための隙間はある。鎧だってそうだ。
顔ではなく体にかけるのであっても、液体なら鎧のどこかしらから浸透するし、効果はあるだろう。火傷をした際に身動きしない人間は痛覚のない奴だけだ。
ホイツフェラー氏とラディスラウスさんがさほど驚いていないのを見るにポピュラーな使い方のように思える。水魔法はこういう使い方もあるのか……。
ラディスラウスさんと兵士が衛兵の2人を軽く道の脇に引っ張っていく。
伯爵邸には相変わらず動きはないが、屋敷の方に集中するとうっすらと会話が聞こえてきた。
「――伯爵くらいになれば、こんくらいの屋敷みんな持てるのか?」
「――全員が全員持てるわけじゃねえよ。男爵でもでかい屋敷を持ってる奴はいるし、伯爵でも小さな屋敷しか持ててない奴もいる。金遣いの荒い奴とか運の悪い奴がいるからな。まあ、伯爵ってのは屋敷の代わりに城や領地を任されることもあるし、そうなるとそうそう金は使い込めねえがな」
「――城もいいねぇ。一度でいいから住んでみたいもんだ」
「――お、おい! 敵が来たぞ!! 戦斧名士の奴らもいる!!」
「――……マジだな」
どこから見たのかは分からないが、気付いたか。
「――レフ!」
「――分かってるさ。……くふふ。そう慌てるな。コックスとアルバーノとルカスは2階に行け。クロスボウで奴らを射抜いてやれ。魔道具も忘れんなよ。第一射は1階の俺たちが出てからだ。その時奴らは動きを止めるからな」
「――あいよ!」
「――了解!」
クロスボウか。普通に攻撃してくるようだ。しかし魔道具まであるのか。でも<タリーズの刃>も持ってたか。
「乗り込むぞ。射手は隊から少し離れてついてこい」
俺にもたらされた《聞き耳》の内部情報の慌ただしい動きとは裏腹に、ホイツフェラー混成軍はゆっくりと進んでいく。
「――他の奴らはここにいろ。奴らが近づいてきたら出るぞ。……そうそう。くく、ちゃ~んと鎧を着こんでるからな? 村人を殺す時みたいに勢いだけの馬鹿になって剣を振り回すだけで殺せると思うなよ? お前らが死んでも誰も泣かないからな」
「――鎧の隙間がなく、バシネットをかぶってる奴が相手のときは剣は切ろうとするな。叩き、殴るつもりで振れ。――ここ。首だ。思い切りやればひるむ。運が良ければ骨をやれて、そのままダウンだ。当たればだがな」
「――それか頭を横殴りだろ? ひるんだら倒してバイザーに突き刺す。先にめくれれば上等」
「――そうだ。混戦状態では敵が倒れても無闇に行くなよ?」
「――ああ、分かってる。“タイミングを図れ”だろ?」
「――そういや、コートたちはともかく……フェリクスやエルフの奴もやられたってことか?」
「――……さあな。いない奴のことはあてにするな。レフや俺の言う通りに動け。いつも言ってるが、お前らが感情的になり、自分で適当に動くよりも生存できるからな」
「――ふふ。いつもながら頼もしいよ、カスパル。うちは君がいなかったらここまでしっかりとした組織になってなかっただろうねぇ。じゃあ俺はクラウスたちに伝えてくる」
「――了解。……真ん中の角のついた冑を被ってる奴は俺とレフが相手をする。間違っても単独で切りかかるな」
「――やべえ奴か」
「――……ああ。死にたくなければ相手にするな。切りかかったあとのことは責任持たん」
警戒されたもんだな。ジョーラを相手にするようなものだしな。当然の措置ではある。
それにしても信用されてるようだが……レフっていうリーダー格はなんか気持ち悪い奴だ。もう1人のカスパルの方がそれらしいが、カスパルはカスパルで元訓練教官という感じで全く山賊っぽくはない。
……そもそも山賊なんてものは誰が集まるか分からないところあるだろうし、山賊らしさなんてないのかもしれない。
「……2階に人がいきました。左右です。窓から弓がくるかもしれません」
と、イングラムさんの言葉。俺も伝えようとしていたのでちょうどよかった。さすが偵察に行くだけあって、探知能力は高いらしい。
ラディスラウスさんが軽く振り向いて弓がくることを俺たちに伝える。
「気をつけろよ。エルフの召喚士まで持ってた連中だからな、クロスボウの可能性もある。盾からは顔をなるべく離しておけ。射手と魔導士は連中が顔を出し次第相手しろ」
ラディスラウスさんの注意喚起により、盾持ちが頭の上に盾を掲げ始めた。前方は斜め前に掲げた。
全員をカバーするには盾数が足りないので、扇のような形にも並べ、その後ろに兵士たちがついた。
「――盾を上げ始めたぞ」
「――ふっ。さすがだな」
「――どうする?」
「――どうも何もない。前の奴の腹と脚が空いてる。こちらも弓で応戦するだけだ。力のある奴は剣で足を払ってやれ」
落ち着いてるな。
「俺のことは気にしなくていい。なるべく他の奴も盾に入れてやれ。……このまま進むぞ」
ホイツフェラー氏は相変わらず、盾はいらないようだ。前に出た盾持ちはとくに文句を言わずに従った。
ラディスラウスさんが左右の盾持ちに、いつでも閣下をカバーできるようにな、と言葉を飛ばす。
そうして、
「数名を屋敷の後ろにまわします」
と、ラディスラウスさん。別れるらしい。
「ああ」
「マルフト、ランブレー、クヴァルツの3人は裏手にまわれ」
呼ばれた3名は言われた通り、隊から離れ、頭を低くしつつ迅速に屋敷の裏手に向かう。
射手は気配が強まり、魔導士たちは魔力が集まり始めた。ベルナートさんやヘルミラも同様だ。
いつの間にか盾を借りていたベイアーが、俺たちにも盾を構えてくれる。もちろんこれだけではみんなを収めるのに足りないのだが、ダゴバートも後ろに来てくれて盾を構えてくれた。
俺も一応盾持ちの2人の近くに寄ったが、正直なところ、対処に関しては盾がなくとも問題ないだろう。自分で言うのもなんだが、俺自身が防御兵器みたいなものだ。
姉妹は盾からはみ出してしまっているので、それならと、2人になるべく俺の近くにいるように言っておく。……なぜかアレクサンドラも俺の方に寄ってきた。キスを見られたのはウィルマさんだけなので、この言動を目ざとく結びつける人はここにはいないけれども。
と、なんにせよ、盾を構えたベイアーとダゴバートたち含め、俺の付近では絶対に誰も殺させはしない。インは盾に寄りつつも悠々と窓の方を見上げていた。
俺も窓を見上げる。窓はガラス窓のようだが、どこも開いている。窓は5つあるが、そのうちの左右と真ん中の3つの窓に人の気配がある。魔道具が発動している雰囲気はとくにない。
「――戻ったか。盾を出したぞ」
「――さすがだねぇ。しばらく相手してくれってさ」
「――そうか。出る準備をしてくれ」
「――了解」
奴ら結構余裕そうだな……。油断できないな。
しばらく“お互いに”無言のまま、俺たちは進軍し続け、伯爵邸の玄関があと10メートルといったところで、扉が開け放たれた。
「やあやあ諸君。いらっしゃい~〜〜」
まるでこれから開演とばかりにずいぶん陽気な言葉とともに男が出てきた。後ろにももう1人いる。
左右には俺たちと同じくカイトシールドがある。左の盾は警備兵が持っていた大胆に色分けされた盾だが、右の盾は鈍色が輝いている立派な盾だ。持ち運びは難しそうだし、屋敷にあったものだろう。
前にいる男はにんまりと笑みを浮かべている一方で、白髪が多く、結構年齢のいった男だった。装備は鎖帷子の上に革の胸当てを着て、肩には他の連中もつけている者がいたがショールのような当てものをつけ、手足は立派な金属の装備をつけている。
長身なこともあるだろうが、逞しいというよりはしなやかな印象を受ける奴だ。いらっしゃいなどという言葉は、クロスボウや魔道具や、もしくは自分の力量に対する自信か。
「さすが戦斧名士の皆さんですねぇ。おみそれしましたよ」
屋敷から出てきながら、軽い語り口で白髪の男が言葉を続ける。
おそらく奴がレフと呼ばれていた男だろう。会話での印象通り、ちょっと気味が悪いというか、うさんくさい男だ。
彼の後ろにいる男がバイザーを下げ、顔が見えなくなる。短髪だったし、白髪量はレフほどではなかったが、それなりの歳を重ねていそうな男だった。彼はレフとは違い、オランドル隊長系の精悍な顔つきだった。
そんな彼はきっちりと各部位を金属の鎧で覆っている。ケプラ騎士団が俺たちの捜索時に着ていた
玄関から2メートルほど出てきたところでレフは止まった。混成隊もホイツフェラー氏が止まれといったことで適当な距離を残して進行を止める。
「ここに来たってことは他の奴らをやってきたってわけだ。うちのホープのエルフの召喚士君まで」
「俺たちがやったわけではないがな」
「へえぇ、それは興味深い。七星や七影以外で彼をどうにかできる逸材っていうのはなかなかいないと思うんですがね」
――と、そんな会話の折に、風をずいぶん鋭く切り裂く音が到来してくる。
3つだ。どれも俺たちの方には向かっていない。
3本とも全て前方の盾に刺さった……いや、1本は、ホイツフェラー氏が例のクライシス産の巨斧、ドゥームズデイ・ルーターではじき返していた。
さらには左手ではナイフを掴んでいた。レフが投げたものらしく、レフの左手にはもう1本のナイフがあった。油断がならないが、それにしても放っておけといった意味がよく分かった。さすが隊長だ。
2階の窓に向けて、俺たちの方から素早く矢が返される。
だが、真ん中の窓に向けて放たれた1本は部屋の奥に飛んでいっただけで、左のベルナートさんが射った白い矢は見えない壁によって防がれた。魔道具か。
魔道具をどうにかするべく、防がれた窓に向けて牛突槍を放ってみた。
じゃっかんの抵抗があったが、窓辺で魔力が散った気配があり、牛突槍はしっかり貫いたようだ。ベルナートさんから頷かれる。頼みましたよ。
――再び風を切る音が立て続けて3つ。今度は1階かららしく、1人がうめき声とともに膝をついた。が、命には別状がなさそうで、立ち上がった。
次いでレフとカスパルらしき2人が屋敷の中に逃げるように駆けていく。それと同じく、1階の窓のすべてにうちの兵士たちが攻撃を仕掛けるために駆け寄ったが、ホイツフェラー氏が物々しく巨斧を構えていた。少し下がる盾持ちたち。
「――はあっ!!」
――そしてあったのは、あまり想像してなかった速さで彼らに迫ったホイツフェラー氏と、レフとカスパルの前で盾を持っていた2人の分断された姿だ。盾ごと、それも金属の盾の方まで真っ二つだ。
1階の窓の左右からもうめき声があがる。バイザーを提げているので誰かは分からないが、長剣持ちと射手が仕留めたらしい。
「かかれ!! 復讐の狼煙をあげろ!!」
ホイツフェラー氏が血を払うように、分断した死体に斧を軽く振ってそう怒鳴ると、混成軍は呼応して伯爵邸になだれ込んだ。
ホイツフェラー氏は相変わらず先頭だったので、ちょっと危ないのではと思ったりもしたが、そう簡単にやられるはずもなく……
――このあとは意外にも……一言で言えば虐殺だった。正義はこっちにあるけどね。
跳躍しては黒い斧の剛撃をお見舞いしていくホイツフェラー氏の鬼のような強さに戦意を喪失したり逃亡し始める連中を、俺たちが仕留め、追いかけるという構図がそこかしこで見かけられた。
>称号「侵略者たちの征伐に成功した」を獲得しました。
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