7-6 赤斧休憩所 (3) - 赤竜の影と遊牧騎馬民族
部屋の物色を終えて1階に下りた頃にはすっかり日も暮れていた。
「奥に食堂があるけど、食べていくかい?」
「うむ! 肉をはよう頼むぞ!」
デレックさんがインに向けて、すぐに伝えるよ、と微笑する。
「食事代はここで渡した方がいいですか?」
「そうだね。お願いするよ」
デレックさんに各々代金を渡したあと、俺たちは食堂に向かう。食堂は伝わってくるざわめきの通りに斧と盾の部屋の廊下を行った先にあるようだ。
「今日の食事のメニューは何ですか?」
「プルシストの牛肉のステーキだね」
それ以外なかろう、とイン。はいはい。
「討伐後には食事はステーキに?」
「初日はそうだね。討伐の具合にもよるけど、だいたい2,3日はプルシストの肉が出てくるかな。今日は他にはモール豆のスープに、ラオリオとフェンネルの野菜炒めだね。明日になればプルシストの煮込みスープも出るよ。プルシストの牛肉の旨味をこれでもかとばかりに吸った美味しいスープさ」
モール豆のスープはヴァイン亭でも食べたスープだ。パプリカや豚肉が入っていた真っ赤なスープとして出されていたが、豆自体は目立った味わいでもなかった。フェンネルはなんだろうな。
「野菜炒めは何で炒めるんです?」
「オリーブオイルとニンニクだね。ああ、キノコも入ってるよ。キノコは今日はポルチーニさ。ダイチ君は料理に詳しいのかい?」
「いや、特にそういうわけでは……でも色々と美味しいものは食べたいですね」
「ほほぉ。ならうちを選んで正解だね。うちの料理人は美食家のマイアン公爵様の舌もうならせた人だからね」
おぉ~。やっぱりこの世界の料理は信頼度高いな。
「プルシストの牛肉は半年振りだなぁ」
「私もそんなところだ」
「ラユムンドとチャールダとイグナーツは前回の警戒戦の時にたらふく食べたらしいよ」
「珍しい組み合わせだな……ああ、チャールダの賭け事にでも巻き込まれたか?」
「その通り。……ベイアーはプルシストはいつ食べた?」
「私も前回の警戒戦の時に食べましたよ。警戒戦に参加はしていませんが、門番兵の中に毎回横流ししてくる者がいて半ば買わされたのです。まあ、隊長もマルトン殿も買ってましたし、美味でしたが」
「ああ、門番兵はそうだったね」
と、合間には後ろからそんな会話。微笑ましい内容だ。
話し声や笑い声、木製の食器が鳴る音などが徐々に大きくなってくる。怒鳴ったような声や下品めなおじさんの声もたくさんある。
ウエスタンドア式のドアを開けてやがて目に入ってきた食堂と客の姿は、ヴァイン亭や満腹処のような雰囲気だろうという俺の想像を裏切りはしなかった。
木造の食堂は窓からの日光によっていくらか明るかったが、少々薄暗い。天井からぶら下がったバスケットのようなものに入った灯りは、火の揺らめきと合わせて、この宿に入ってから幾度となく味わっている木造建築の味わい方を明確に示してくる。広さはヴァイン亭と満腹処の間くらいのようだ。
そのような室内では、各々テーブルについた客たちがそれぞれの楽しみ方で晩餐を楽しんでいた。席についたのなら喋らなければならないとでも言うように、みな何かしらの話をしては、様々な表情を浮かべている。
酒のにおい。牛肉のにおい。油のにおい。ニンニクのにおい。香ばしい植物のにおい。もちろん木のにおいもあり、扉のある奥の方からは血のにおいもある。屠殺は奥でしていると言っていたので、納得だ。
客層は木こりをやってそうなむさくるしい男たちや鎧を着た人ももちろんいるが、商人っぽい人や模様入りの服を着たティルマンさんのような裕福そうな人もいるようだ。
マイアン公爵が美食家だと言っていたし、中には貴族もいるのかもしれない。俺の中の貴族像は今までに間近で見たのがアルバンだけあって、いまだに庶民と食事をするのを嫌がるイメージはいまいち払しょくできていないが、その辺気にしない七影もいるようだしな。
人は多いし、例によってうるさくなるかもしれないので、《聞き耳》を切っておこうとしたら既に切ってあった。
「バカ言え! ヘンジルータの姑息な奴らが仕留められるのはウサギとシカだけだ。俺たちフィッタの村民はイノシシもプルシストも仕留める」
「ウラスロー家だってイノシシだろうがプルシストだろうが仕留めるだろ」
「そりゃあそうだろ。……ふう。話を逸らすな。俺が話してるのはヘンジルータの村人どもだ。七星の狩猟と同一に考えるな」
近くでそんな会話。フィッタの腕に覚えのある村人はプルシスト討伐に参戦くらいしてそうだ。
「おぉ、おぉ! これは美味い肉だのう!!」
インが、まだ食べてもいないのに既に口に入れたかのようにそんな言葉を口走る。
さっきの客とは反対側のドアの近くにいる鼻に切り傷のある目付きの悪い男性客がちらりとこちらを見て、変なものでも見たような顔をした。変なものではある。
そのまま俺たちをざっと見てちょっと目を丸くしたあと、少し慌ててスープの皿に口をつけてすすった。面々を軽く振り返ってみるが、驚くポイントはベイアーくらいしか思いつかない。でかいからな、ベイアー。ベイアーと目が合ったので、何でもないよという素振りで眉をあげておく。
ベイアーのお付きはオランドル隊長が推薦したものだが、俺が考えている以上にベイアーは活躍しているのかもしれない。酒が入ると暴れるとか、血の気が多いとか言ってたっけなぁ。
そう考えると、いくらかやってきている周りの視線が全て「ベイアー防御」によって防がれている気がしてくる。強いぞ、硬いぞ、ベイアー防御。
「あそこの奥の方が空いてるね。適当にかけててくれるかい? 料理を準備するように言うからさ」
デレックさんの指差した先は確かに空いている。壁際の席だ。テーブルは基本的に長椅子が2つくっついている形式。7人座るのはギリギリかもしれない。
「牛肉はダイチが殺ったやつだからな??」
「もちろん」
意地汚いインに、デレックさんが苦笑しながら頷く。デレックさんと目が合う。謝罪を込めて目を伏せた。うちの母親がほんとすみません。普通逆なんですけど……。
従業員らしき人が3名ほど食堂内を行き来している。1人は女性のようだ。まさかデレックさんが1人で宿をまわしているとは思ってなかったが、今は食堂を中心に動いているのかもしれない。
デレックさんが半ば駆け足で奥の扉の方に向かう。足ぶつけないようにしてくださいよ?
何かやってるのか、席への移動中に食堂の真ん中の方で歓声が起こった。
「あーー! くそが!!」
男が悔しがったままにバシンとテーブルを叩いた。結構大きな音だ。テーブルにはサイコロが数個ある。賭け事かなにかか。
男はフードのついた麻のチュニックシャツを締めただけのラフな労働者の格好をしているが、フィッタの労働者の男たちがだいたい喧嘩が強そうだったように、彼もまたなかなか体格がいい。
「へへ。俺の勝ちだな! だから言ったんだ、無理すんなって」
「マリア様はあんたみたいな短気な奴には微笑まないのよ。教会でお祈りでもしてもう少し言動に落ち着きを取り入れなさい。そうしたら自然とマリア様の強運がいただけるわよ。もしかすると女運の方が微笑むかもね?」
笑い声が起こる。マリア様? キリスト教圏ならよく聞く名前だろうけど。
勝った男もまたそれなりに体格がいいが、いくらか神経質な顔で、頭を使う方が得意そうだ。革の装備をつけているので、攻略者かもしれない。一方の女性の方は、いくらか色っぽい雰囲気の人で、ただ服の方はズィビーさんのようなワンピースドレスに胸元に紐のあるベストを着たよく見る格好だ。
「……ふん。赤竜様だって短気だって言うじゃねえか」
「うん? 俺たちの尺度で赤竜様を短気なんて言うもんじゃないぞ。第一、赤竜様は赤竜様であって、マリア様じゃない。マリア様はマリア様だ」
そんな話を小耳に入れつつ、俺たちは席についた。壁際だが、壁にはちょうど灯りがあり、席は明るい。
ちょっと気になったので、マリア様ってどういった人ですか? と、ベルナートさんに訊ねてみる。彼らの話し声は聞こえていたように思う。
「マリア・ランニールは創作上の人物だね。気が強くて賭け事にめっぽう強かった女性だよ」
やはり聞こえていたようで、ベルナールさんがさっと解説してくれる。
「彼女が出てくるのは『ムニアステイル』っていう昔の戯曲なんだけど、彼女は台詞もいいし、なかなか人気のキャラクターでね。うちの団にもいるんだけど、ダイスだのカードだの賭け事に目のない奴らは彼女を信奉してるのさ」
ほほう。
「ま、人気の理由はそれだけじゃないんだけどね。ムニアステイルの作者ルーカス・イゴーティエはね、自分の作品に登場する女性に毎回赤竜様の人柄を投影していたらしくてね」
赤竜の人柄?
七竜を創作に出すことは禁じられている。タペストリーでは竜が描かれているが、意図的なものか、そういう様式なのかは定かではないが、実際の2人の竜の姿とは似ても似つかないものがある。そもそも、竜を描いたもので見るのはタペストリーばかりだ。
インをちらりと見てみると、インの方も俺に気付いてみてくる。意味ありげに眉を持ち上げて口をへの字にしたが、念話はない。
「つまり……そのマリアという女性もまた赤竜様の人柄を描いていると」
インがとくに解説する気はなかったようなので会話を続ける。
「その通り。実際に赤竜様が賭け事が強いかどうかは分からないけど、七竜の中で一番気が強いことはよく知られているし、《
でも、なんで赤竜だって分かるんだ? 気が強いけど慈悲深い女性なんていくらでもいるように思うが……。
「マリア・ランニールが赤竜様の人柄を投影してるっていうのは何か根拠でも?」
「うーん。明確な根拠はないんじゃないかな。ルーカス・イゴーティエもこのことに関しては何も残していないようだし。……そもそも彼の作品は、彼が死んで半世紀してから人気が出たからね。彼の血縁の者が金欲しさに劇団に作品を売ったそうだよ」
ああ、俺の世界でもよくあったやつだ。
「ルーカス・イゴーティエは当時の赤竜教の総督司教様と親しかった人物でね。よく酒を飲んでた仲だったんだ。基本的に赤竜様と話ができるのは、総督司教様や王など、最高権力者だけだからね。酒を飲んでいて彼にぽろっとこぼしたのかもしれないと、研究者たちは推測してるのさ」
酒を飲んで会談の内容を漏らしてしまったのは白竜の信者だったか。
「ルーカス・イゴーティエ自身も優れた法廷弁護士だった。ということは、単に物書きができるだけの無教養の人間が書いた創作とは違う。何の意味も込めないわけがないと踏んだ、というわけでね。……まあ、そうしたら、活躍する女性の人物像に偏りがあることに気付いた。オレンジ色の髪か赤い髪をしていて、気が強くて、賭け事が強くて。舌鋒鋭く、リザードマンの用心棒を持つこともあるし、誰かしらに情けを必ず一度はかける。台詞も妙に毎回力入ってるらしいんだよね。……この女性たちが特定の男と親しい様子が一切ないのは、彼の信仰心ゆえだろうと考えているらしいよ」
賭け事の強さは知らないが、特徴はまあジルだな。男と寝ない部分はインとのやり取りを聞いた限りでは違うな。
それにしてもベルナートさんよく知ってるな。オルフェ人として長年生きたのなら、常識なのかもしれないけど。
「……まあ、この研究の真相はともかく、そのうちにマリア・ランニールは劇で人気になり、博打打ちの女神さまになったってわけだね。赤竜教の方では単に作者の女性の好みだと考えてるけどね」
ふうん。女性の好みね。現代だったら、男らしい女性が好きだというのはまだ分かるが、ここは中世ヨーロッパ的な世界だ。今のところは男尊女卑的なものはあまり感じないが……。
「彼は晩年は赤竜様の祠の番人になったんだったか」
「そうそう。羽ペンばかり握っていて剣もろくに振れないっていうのにね」
「ですが、祠を改修できたのは彼の功績だと」
「そうだね。従来のやり方で選んだ番人だったら祠は何も変わってなかっただろうね」
『ジルの奴、人里で賭け事にはまっとったのかもしれんな』
――え。やっぱそうなの?
『まあ、本人に聞かねば分からん。私らもそんなにしょっちゅう街中に行くわけではないが、話しとる奴のように、100年に1人くらいは広めることに成功するのがおるしな。吟遊詩人と法螺吹きの類も含めるなら、我らの噂を広める者は五万とおる。こっちは根も葉もない与太話の域を出んし、さほど鵜呑みにされんだろうがの』
100年に1人か。途方もないな。
板のお盆にジョッキを7つ置いた女性がやってくる。さすがに重くないか?
「飲み物お待ちどうさま。……あら。お酒大丈夫? シードルの方がいい?」
給仕の女性はインを見て俺たちの顔を見比べた。
「別に問題ないぞ」
インがブスっとそう言うのを聞くと、安心したわ、とニコリとしながら女性はジョッキを置いていった。中は……黄色い。ビールだ。
しかし。ビールも気になるが、女性のことも気になった。
給仕の女性は目は淡褐色なんだが、黒髪な上、アジア人顔だ。というより……割とガチで日本人に近い。
もっとも、どちらかといえばかわいい系の顔立ちなんだが整っているので、中国系か日本人系なのか分からなくなっている。軽く化粧でもしたら、今風の若手女優っぽくなるんじゃないだろうか。
ちょっと見過ぎていたせいか、女性の顔に疑問符が浮かんでいたので、「ああ、すみません。何でもないんです」と言っておく。料理が来るまで待ってくださいと微笑んで、女性は去っていった。
転生者または関係者だと勘ぐってみるには情報が足りないのもあるが……彼女はこの場所にちょっと馴染み過ぎているような気がする。まあ、接客業でいつまでもまごついていても仕方ないんだけど。
「あの給仕の女性が気になりますか?」
というアレクサンドラの質問。目ざとい。
「ええ、顔立ちがちょっと……故郷にいた女性と似ていたので。容姿は整っているようにも思いましたが」
横でベルナートさんが口元を緩ませていた。インがするような嫌味はない。さしずめ、この少年でも普通に女性と恋愛するんだなとか、そんな心境だろうと推測。
「確かに彼女はダイチ君と顔立ちが似ている感じはあったね。ダイチ君は……シルシェンって国知ってるかい?」
シルシェン? アレクサンドラが少し渋面をつくってベルナートさんのことを横目で見る。また曰く付きの場所か? アレクサンドラと目が合ったが、目線を逸らされてしまった。なんだか不平そうだ。なんだなんだ。
「いえ、知りませんが……ミージュリアのような滅びた国ですか?」
いやいや、今でもある国だよ、とベルナートさんが苦笑しながら手を振って否定する。
アレクサンドラは気にしたが、特にNGワードを言ったような雰囲気はベルナートさんにはない。とはいえ、目つきにはわずかだが探るものがある。出身国については隠しているので仕方ない部分はあるように思う。
「バルフサから東の海を渡った先にロンデルーっていう大陸があるんだけど、そこにある国さ。さっきの給仕の女性はよくてもバルフサ人との混血で、シルシェン人ではないと思うけど、彼女のような若々しい顔立ちの女性がシルシェンにはいるらしいね」
海を渡った先か……。やはり“東の国”らしい。ディアラたちは名前までは知らなかったな。
「シルシェンの人たちはどのような人たちですか?」
「俺はシルシェンに行ったことがないから噂で聞いただけだけど、武力は優れてるとは聞いてるよ。馬術と槍の技術に関しては、昔の
「なぜそこで私を出すんだ。勝てるわけないだろ」
抗議するアレクサンドラに、特に深い意味はないよ、とベルナートさんが肩をすくめる。
ちょっと苦笑してしまった。武力の話が耳に残ってるのは兵士らしいところか。俺が期待した答えは国民の気質とか暮らしぶりとかそういうのだ。
それにしても馬術に槍ね。日本ではなさそうだ。もし日本だったら、忍者や切腹と合わせて、刀と甲冑の話が出ないはずがないだろう。ファンタジー的にも、史実的にも。似ているようで似ていない国という可能性もあることはあるけども。
「シルシェンがとくに恐れている相手はユギアという遊牧騎馬民族の巨大な一派だそうで、都市はおろか国を落とすほどの勢いがある敵だそうです。彼らの王の広大な居城も、奪い取ったものだとか」
ベイアーは顔つきを少々厳しくしながら、さながら自分たちに現在起こっている深刻な事態でもあるかのように、語った。遊牧民族ね。
すぐそばの壁の灯りによって照らし出されていくらか緩和しているものの、丸顔気味ではあるがたっぷりの黒いヒゲで覆われた顔は貫禄はじゅうぶんだ。ヒゲを剃れば結構印象は変わるように思う。もちろん良い方に。
俺のベイアーへの印象は良い。礼儀正しいし、戦っている時にも非常に頼りがいがあった。
不幸、ということなんだろうが、貴族付きの兵士を当主の気鬱によって首になり、門番兵に留まっているのが惜しい逸材のようにも思える。今回のように、各地に派遣はされるようだが……優秀だが派遣社員に留まっている人の内心は穏やかじゃないだろう。そのポストにつくために必要だったのは能力ではなくタイミングだけだったりするが、優秀な人はそのタイミングを逃すことはままある。ベイアーの場合は、女性問題も一応それにあたるか。
「俺も名前は忘れたけど……そうらしいね。……敵があまりに恐ろしいものだから、シルシェンは端から端まで歩くのに2か月はかかる城をつくったらしいよ」
「グレーデン城は建設に10年かかったんだったか」
「確かそのくらいだね」
チンギス・ハンと万里の長城的なものか? 大陸を変えても、どこも戦ってるもんだな。
にしても踏破するのに2か月か〜。でも万里の長城はもっとかかったような気もするな。
目線を落とした先で、ビールが目に入る。色は澄んでいるが……この世界のビールに関しては明確な懸念事項が一つある。
ジョッキに手のひらを当てる。うん、特に冷たくない。俺はこの世界でキンキンに冷えた飲み物をまだ飲んたことがない。氷魔法もあるし、どこかの店では冷えたビールを出してもおかしくないとは思っていたけれども。
インがコトンとジョッキを置き、「はー!」と、盛大に息をついた。中身は空だ。なかなかいい飲みっぷりだ。そういやイン、ビール飲むの初めてじゃないか?
「いい飲みっぷりだねぇ」
ベルナートさんが笑う。ほんとだよ。インにほだされたようで、みんなも口をつけ始めた。
俺も飲もうと思って口をつけると、麦の香りが香った。結構強い。悪くない。
飲んでみると、なんていうのか……麦の味は濃いし、炭酸もあるんだが、苦みがあまりない。度数も高くないようで、常温なのも合わせてガツンとこない。なんだか別の飲み物を飲んだ気分だ。上品なビール?
続けて飲んでいく。うん、まあ、悪くはない。悪くはないよ。ヴァイン亭やソラリ農場で飲んだ赤ワインよりは全然。でもやはりこれがビールだと言われると、紛れもなく違う。
みんなとくに不満なく美味しそうに飲んでいる。他の客もそうだろう。
まずかった赤ワインもそうだけど、なんでこういうビールになって、なんでこれが美味いと感じるんだろうな。考えるまでもなく、約500年前の文明にいるからなんだけど……食べ物は結構普通に美味いんだけどな。冷えたビールと焼鳥が懐かしい。
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