7-3 木材の村フィッタ (3) - 護衛とアカカブガエル
「じゃあまたね!」
「はい、また」
アルルナの別れの挨拶に、姉妹もまた笑みを返して手を振った。
当初は呼び止められたきっかけが自分たちということで遠慮がちにしていたけど、二人はそのうちに打ち解けた様子を見せていた。
姉妹の精神年齢的には20代後半なので、本当はアルルナのような10台の子の相手をさせるには筋違いだと後で気付いてしまったが……同年代で28歳のグンドゥラは引っ込み思案でろくに喋らなかったしな。
ま、二人のことだしあるとは思ってなかったけど、特に何もなくて何よりだ。あの子にも良い思い出になったことだろう。うんうん。
警戒戦の内容やケプラ騎士団についての話を少ししたあと、会合はお開きになり、俺たちはダゴバートたちと別れることになった。ダゴバートが同じく警備の人たちから呼ばれたためだ。
コンスタンツェさんも仕事に戻るらしかった。彼女はああ見えて帽子工の準親方でもあるらしい。親方になったら帽子工と表示されるだろうか?
「ダイチ君はああいうことが好きなのかい?」
再び赤斧休憩所へ向かい始めて間もなくベルナートさんからそんな疑問。
「ああいうことって?」
「井戸端話だよ。なんていうのかな。……彼らと話すのを好ましく思っているというか、ずいぶん手慣れたものを感じてね。旅をしているだけあるね」
ベルナートさんがそう言って、アレクサンドラに目線を投げる。手慣れたものか。ベルナートさんがそう言うならそうなんだろうな。
「ダイチ殿ははじめから私たちとも気さくに話をしてくれてたぞ」
「確かにそうだったね」
「私はさほど不思議には思いませんでしたが、良家の人は平民と話すのを嫌がる人は大勢いますからね。その点ダイチ殿はいい領主になるでしょう。もっとも、家の者たちは肝を冷やす機会も多いでしょうが」
さきほど領主の話をしたせいか、領主の言葉を持ち出したベイアーに、全くだね、とベルナートさん。アレクサンドラもまた、そうですね、と同意した。
領主ね。氷竜なんかよりはずっと楽そうだ。
俺のイメージになるが、辺境の領主程度だといい感じだ。
のどかだけど、仮にも領主なのでそれなりに忙しい。年に数度、首都などに赴き階級の高い人と食事をする時には身が引き締まる思いがし。それ以外だと毎年の冬越えのための備えをし始めると再び忙しくなり。輩に関しては俺が出向いてもいい。辺境なので人の行き来は少なく、領民の数も少なく。平穏な余生も過ごせるだろう。
一方の「氷竜業」は人としての暮らしの想像ができないし、インを見るに、そもそも人としての暮らしができなくなる可能性がある。
もしインのように、自分の家に常に引っ込まなければならないというのなら少々考え物だ。堕落が目に見えている。クライシスがプレイできるっていうなら話は別だが。ゲームの長時間プレイは堕落じゃないのかって? もちろん。外見上は動かないが、頭はフル回転してるからな。まあ、多かれ少なかれゲームの目的は“頭を回さないようにする”なんだけど。
どうにか一般人レベルは難しいにしても領主レベルくらいにはシフトチェンジできないものかな。
それにしても肝を冷やすってなにが?
「まあ、ダイチ君に護衛をつける場合は、戦闘力だけじゃなくて別の何かが突出していないとお役に立てそうにないけどね」
いくらかしたり顔で一歩踏み込んできたベルナートさんに、俺はなるほどと思いつつも肩をすくめた。
「なんだお主ら、自分が役立たずだと思っておるのか?」
「いや、そんなことはないよ。でも俺らの本分は兵士だからね。自分たちよりも実力がある人を護衛するのはどうしたもんかと考えることはあってね。なかなかないんだよ? こういう仕事って。俺らは団長ほど強くもなければ、騎士でも何でもないからね」
あー、なるほど。結構赤裸々な意見だと思うが納得した。……案内役とか気軽に考えるわけにはいかないんだろうか?
道は、相変わらず一般住居と思しきログハウスの建物が続いている。家の前のテーブルでのんびりしているのがお決まりのようだが、フィッタでは店の類、人が集まる類の施設は村の入り口近くに集まっているようで、少々代り映えのしない景色だ。
また、家々の後方では背が高く枝も少ない似たようなマツらしき木が延々と生えていて、少し不気味な感じもある。こうした未開拓の自然の光景にはだいぶ見慣れたはずだが、風景に情報量がなさすぎるのも考え物だ。人工物がないのはかえって不安になる。
「お主ら護衛だったのか?」
「え、まあ……うん。団長やロウテック隊長にも頼まれたし」
インは護衛だとは思ってなかったらしい。まあぶっちゃければむしろ守る側だしなぁ。ベルナートさんは不意をつかれた様子で、ちょっと弱々しい苦い笑みを浮かべている。
インは全く悪気はないだろうけど、ちょっとかわいそうになってきた。少しフォローしとくか。
「兵士とか護衛の仕事は何も戦いだけではないと思いますよ」
「え? どういうことだい?」
「護衛対象や市民の精神的な不安を取り除くことも仕事じゃないかな、と。メンタルケアですね。実力はともかく警備の兵士が配備されているだけでも住人は安心するでしょうし、そうなると街の雰囲気はだいぶ違うと思いますよ」
「なるほど……。確かにそうだね。それは俺たち騎士団の役割でもあるし」
ベイアーとアレクサンドラも俺の意見に同意見のようで、頷いたところを見せた。
と、ベルナートさんが振り向いてくる。
「……ダイチ君は俺らに囲まれて安心できてるのかい?」
そう訊ねてくるベルナートさんは少しうかがうような様子がある。そういう風には見えなかったが、俺たちに同伴することは、兵士としてそんなに懸念事案だったか?
それにしてもベルナートさんは俺たちに体を向けたまま歩いている。器用な人だ。弓をやってると後ろ歩きも習うんだろうか。
「もちろんですよ。インやディアラやヘルミラの存在も俺の精神的不安を取り除いてはくれますが、彼らも全てを知っているわけではありませんからね。人がいればいるほど安心はできます。土地勘のある人ならなおさらですね」
インが眉をあげて、私は別に不安などないが? といった感じで見てきていたが、スルーした。
……いや、またそんな風に周囲に良い顔をして、か? そうだとしたら、何も言えないな。性格における美徳の概念がなく、謙虚さというものもお国柄と言う割に美徳として昇華できてない経済大国で育った人間ないし「いい人たち」の哀れな点だな。
「もしかしたら俺には不安なんて何もないと思っているかもしれませんが、……俺は世間知らずで、知らないことが多いんです。だからこうして色んな人と交流を持てるのは有益な経験だと思っていますし、フィッタの案内も助かってます。案内人も鎧を着てない村人よりは、鎧を着てる強そうな人の方がいいでしょ? あまり物々しくても窮屈な思いがして困るでしょうが……ベルナートさんたちのことは頼もしく思っていますよ。おそらく、ベルナートさんたちが思う以上に」
不安を取り除くべく、俺に常につきまとっている不安要素を少し丁寧にこぼしてみると、横の2人の歩みが止まった。
「何でも言ってくださいね。私の出来る範囲でお手伝いしますから」
「俺もです。フィッタは何度か訪れている馴染みの村なので、何でも聞いてください」
2人が決意を表情に込めてそんなことを言ってくる。真面目に語りすぎたかな?
俺はありがとうございます、と微笑して返した。そういえば、厩舎でベイアーに似たようなこと言った気がするな。
ベルナートさんからも「俺も出来る限り助力するよ」というコメント。こちらは表情を緩めている。
姉妹からもじゃっかん慌て気味に、「私たちもです」とアイドルポーズと共に言葉をもらったので、ありがとね、と返した。
「……ダイチ君は若いのに立派だね。世慣れて……はないんだったね。なんというか、……賢者然としていてびっくりするよ。さすが良家のご子息様だ」
良家のご子息設定はともかく、賢者か。言葉はアレだが、武術家とか魔導士とかよりは断然賢者だろうな。
この世界で賢者と呼ばれるに相応しい、大工でも裁縫でも料理でもアウトドア関係でもなんでもいいけど、なにか前時代的な役に立つ知識があればよかったんだけど。その手の趣味は残念ながら俺にはない。こっちもあっちも必要なのは技術者か。
中世ヨーロッパの歴史や戦争の知識なんてもう忘れたも同然で出てこないし、医療に関しても分かるのは栄養方面だし、料理にしても役立ちそうなのはマヨネーズと照り焼きソースの材料くらいのものだ。クライシスのゲーム知識も披露するだけ無駄だろう。
TOEIK、ITパスポート、ファイナンシャルプランナー……ファイナンシャルプランダーは生きるだろうが、必要なのはむしろ趣味化しがちな経験や知識だ。
と、そんな話をしている中で、俺の視界の左手に赤いなにかが映り込んでくる。
家屋と家屋の間の小道にそれはあるんだが……カエル? 背中が妙に膨らんでいるカエルだ。結構でかいように見える。
「……ああ。あれはアカカブガエルですよ」
俺の視線を追ったらしく、ベイアーが答えてくれる。
「アカカブガエル?」
「背中が赤かぶのようになっているんですが、それでアカカブガエルと名付けられたんだと思います」
へえぇ……。まあ、名前的にそうだよね。
「毒とかはあるんですか?」
「ないですよ。たまに子供が捕まえるような無害なカエルです」
今度はアレクサンドラによる解説。子供が捕まえるなら、獰猛でもなさそうだな。カエルか……。
「ちょっと近くで見ても?」
「ええ、もちろん」
「カエルが好きなのかい?」
「割と」
一応逃げないよう、集中してゆっくり近づく。
アカカブガエルは俺が近づいていることに分かっているのか分かっていないのか、全く動かず、目線も地面に固定されているように動かない。《隠密動作》とかスキル発動してたりして。
中腰になって近づき続けて残り1メートルほどになったが、アカカブガエルは全く動いていなかった。しゃがんでも微動だにしない。大丈夫か? こいつ。カエルってこんなに動かなかったっけ。
それにしてもなかなかでかい。背中の赤いコブがでかいにしても、手のひらサイズは軽くあるようだ。
生のカエルを見たのはだいぶ久しぶりだが……ゴツくもなければ、そんなに変な顔をしているわけではないので、ヒキガエルとかアマガエルとかあの辺の種類だろうか。
もっとも、色は泥の色で、赤い背中――正確にはえんじ色だ――以外では迷彩柄のようなまだら模様が描かれている。
「ほお。ほんとにカブのようだのう」
インも後ろからついてきてたんだが、見たことがないようだ。
「見たことないの?」
「うむ。カエルはよう知らん」
まあ、竜にとってはごくごく小さい生き物だしねぇ。
「しかし……太った奴だのう。腹も出とる。ガンリルみたいだな」
確かに。背中もでかいが腹も確かに出ている。アレクサンドラがふふ、と笑いを押し殺した。
と、そこでようやくカエルの方に動きがあった。
グロロロロ。
グロロッ。
グロロ? 口がわずかに開いて喉も膨らんでいたので鳴き声だと思うが、カエルってこんな鳴き声だったっけ。口の中でうがいでもしてるような鳴き声だ。
「今の鳴き声?」
「そうですね。ちょっと面白い鳴き方するんですよ、アカカブガエルは」
ふうん……。ベイアーはアカカブガエルに詳しいものらしい。
グロロロロロ。キョロロロロ。
グロロロロ。ウーーーーーーアーーーーーーオーーーーーー。
突然の変な鳴き声に笑ってしまった。ウーアーオーって。なんだこの鳴き声。
「くく……なにこの鳴き声……ふくく……」
あまり大きく笑うと逃げそうなので抑えてるんだが、難しい。とはいえ、アカカブガエルにはとくに逃げる様子はない。
「変な鳴き声だのう……」
インも苦笑している。
あ、この鳴き声聞いたことあるかも、と後ろからディアラの発言。
「え、どこで? 森にこんなカエルいなかったと思うけど」
「トルアルエの森の近く。ほら、ドントリ川でジーファおじさんとお父さんたちが魚釣りやってた時」
「鳴いてたかなぁ……」
魚釣りか~。
「アカカブガエルは他のカエルに比べるとそんなに多くはないそうですが、バルフサの水辺なら割とどこでもいるそうですよ。南の方はいないそうですが」
「へえぇ。詳しいね? ベイアー、カエル好きなのかい?」
「まさか。まあ、別に嫌いでもないですが。俺の前の主人がリーロン氏と付き合いのあった時期があったんですよ。その際にちょっと教わりました」
「なるほどね」
リーロン氏って確か、博物学者だっけか。牛の骨を研究してたっていう。
隣家の住人が家から出てきた。
「……ん? あんたら何してるんだ?」
俺たちがしゃがみこんでいるのを変に思ったようで、住人の男性が声をかけてくる。
「あ、いや、別に変なことをしているわけじゃないですよ。ちょっとカエルを」
グロロロロ。キョロロロロ。
と、俺の言い訳に割り込むようにアカカブガエル。とくに逃げる気配はない。
その鳴き声につられて、住人の男性が柵の内側から覗き込んでくる。
「アカカブガエルが珍しいのか?」
「ええ、まあ。あまり見たことがなくて」
住人の彼は眼差しは厳しめだが、言動は落ち着いているものらしい。体つきも一般的なものだし、伐採の従事者ではないんだろう。
そもそも、じゃっかん珍しいオレンジがかった茶髪の彼は裕福そうな男性だった。清潔そうなシャツと模様入りのベストを着ていて、髪も短い前髪を後ろに固めている。手首には赤竜教のものらしき赤い宝石のついたブレスレット。
家もそういえば他の家よりも大きく、庭のテーブルセットには彫り物があり、長椅子も他の家のものとは違って和式の家財でも見かけそうな木を荒く削ったものをそのまま使っている。柵も他の家のものより分厚い。
「ここではたまに見かけるよ。レプロボス川の向こうにあるヘンジルータに行けば、ここよりも数が見つかるがね」
「確かにヘンジルータに行けばいるでしょうね」
「うむ。君たちは警戒地からだろ?」
「ええ。あとは夜の警戒だけですね」
「その様子だと順調だったようだな」
「ええ、まあ」
ベルナートさんから視線を外して、若いのに感心だね、と彼が俺やインに話しかけてくる。何と言えばいいのか困ったので、苦笑だけに留めてしまった。インは軽く鼻を鳴らした。1200歳、こらえてよ?
家の中から女性も出てきた。40代くらいと思しき彼とは違って、女性は若い。たぶん奥さんだよな。
何やら作業中のようで、白い頭巾と黄緑色のエプロンを着ていて、手には稲穂のようなものの束を持っている。
「ん? 何してるの?」
「兵士さんがたがアカカブガエルが珍しいんだとさ」
「ふうん。……あら、ダークエルフ。珍しいわね」
見れば、姉妹は何とも言えない顔をしていた。さっきも注意引いたもんね。
「赤斧休憩所に行くのか?」
「はい」
「泊まりか?」
「そうですよ」
男性はベルナートさんと短いやり取りをしながら、時々頷いては、改めて俺たちの顔ぶれをざっと見た。なんだろう?
「7人か。全員泊まるのか?」
「そうですが」
「ふむ。……ちょっと待っててくれ」
男性が少し慌てて家に引っ込むと、
「警戒戦は順調だった?」
と、入れ違いに女性から声をかけられる。
女性は美人度ではグンドゥラに劣るが、付き合いやすそうな気性がにじみ出ていて好感を覚える顔だ。ただ、ここの村出身というには少し垢抜けている気がしなくもない。
「順調に終わりましたよ。おそらく」
「おそらく?」
「彼らは初めて警戒戦に参戦したんですよ。まあ、一番活躍したのは俺たちよりも彼らでしたけどね」
ベルナートさんが得意げに女性に告げてしまう。見ればベルナートさんは俺に向けてニコリとした。ええ? 唐突な持ち上げ。
「ほんとに?? 若いのにすごいのねぇ……。あなたも警戒戦に行ってたのよね?」
今度は質問の矛先がアレクサンドラに向かう。
「私や彼は駐屯地の兵ではなく、ケプラ騎士団の団員ですが」
「あ! じゃあアレクサンドラってあなた??」
彼女はアレクサンドラのことを知っているようだ。番人のゴブリンたちも知ってたし、結構有名人か?
「なぜ私の名前を?」
「時々兵士さんたちの間で名前が出てるからね。自分たちより強い女剣士がケプラ騎士団には2人いるって。もう一人は何て言ったっけ……アリー……」
「アリーズですか?」
「そう! アリーズね。アリーズの方は醜女と聞いていたけど、あなたは兵士をやってるのがもったいないわね。……あ、ごめんなさいね、アリーズのこと悪く言うつもりはないのよ?」
「お気になさらず。剣への情熱は私よりも彼女の方がありますよ」
ふうん、と女性は数度頷く。あまり興味なさそうだ。
それにしても醜女ってワード、すぐ出るんだな。悪気はなさそうだし、そういう人なだけかもしれない。
やがて家から物音がして、男性が戻ってきた。手には紙切れを持っている。
「ズィビーが変なことを言わなかったか?」
「私がいつも変なこと言うみたいじゃない」
ズィビーというらしい女性のぼやきに取り合わず、男性が長方形の紙切れをベルナートさんに差し出してくる。
紙切れには「紹介状 18,4,S312 会計士ティルマン」と書いてある。名前は判子で、日付は殴り書きだ。今書いたのか。会計士だったんだな。
「それを渡せば、宿の代金が少し安くなるぞ」
「いいんですか?」
「代わりに、駐屯地のお仲間の方に赤斧休憩所の優れていた点を伝えてもらえれば」
優れていた点ね。
「私たちは駐屯地の者ではないのですが……」
「騎士団か? 攻略者か?」
「私と彼女は騎士団員で、彼はケプラの門番兵です。東門の」
ティルマンさんが紹介を聞いてアゴを動かして納得した様子を見せた後、ニコリとする。ああ、ならなおさらあげるかもな。新規顧客の獲得の機会だ。
「構わないよ。ケプラ騎士団とケプラの警備兵のみんなにも是非伝えてくれ。……毎回泊まり客全員にあげるわけにはいかないが、もし私と出会えることがあれば、何人かには同じものをあげるよ」
「伝えておきます。ありがとうございます」
いやいや、気にすることないよ、とティルマンさんが満足気な顔をする。なかなかやり手の人らしい。「何人か」とか憎い言い方だ。
「ああ、それと部屋が空いてなくて涼風とトウヒの木の亭に行くんなら、そこでも使えるぞ。ちなみにどっちの宿も一泊分しか割り引かれないからそこは注意してくれ」
「分かりました」
お? そっちの宿でも使えるのか。じゃあ、赤斧休憩所だけってわけではなく、心はフィッタ代表って感じか。目標は領主の家に出入りすることとかになるのだろうか。
アカカブガエルは捕まえていくのか? と訊ねられたので、そういうわけではないことを伝えて立ち上がる。
「では、そろそろ行きます」
「ああ。赤竜様のご加護と良い宿泊を」
そう言って、ティルマンさんは左胸に手を当てて目を伏せた。ズィビーなる嫁らしき女性も同様に胸に手を当てた。ジルの加護かぁ。うーん……。
彼らの元を去ろうとすると、アカカブガエルがまだその場で鎮座しているのが目に入る。
「あいつ動かないね」
「ガンリルはあの腹の割によく動くのにのう」
インのガンリルさんネタのぶりかえしに、アレクサンドラはまた笑いをこぼしていた。結構ツボらしい。
俺たちの視線が行くと、アレクサンドラは少し恥ずかしそうに咳ばらいをした。
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