4-20 幕間:鎧切りとマズル家の剣 (1)
「フミル! シチュー2つ頼む!」
狼肉の焼き加減をじっと見ていたフミルと呼ばれた青年が声の方を向く。
「……うい」
フミルは声の主――自分の雇用主であり、ヴァイン亭の亭主でもあるヘイアンに小さく頷き、独り言のような返事をしたかと思うと、焼き途中の三本の狼肉を裏返した。そうしてしばらくじっと肉を眺めていたが、やがてくるりと振り向き、火にかけられた鍋に向かう。
ヘイアンのいるヴァイン亭のカウンター席と奥にある厨房まではさほど距離があるわけではない。
とはいえ。フミルの短い返事は、とてもじゃないが、ヘイアンに聞こえるようには思えない“ひゃっくり”のような声量だった。
ヘイアンは始めは声を出すよう言っていたが、結局大して出る見込みはなさそうだった。フミルに「声を出す才能がない」のはすぐに分かった。なにより仕事をしっかりやってくれたのでどうでもよくなった。
こっそり料理を食べている様子もなければ、盗みを働いたことも一度もないのだ。それだけでも立派なものだ。
今となっては、ヘイアンや嫁のステラよりも作るのが速い上に、作業の無駄もなくなった。近頃は料理人としての気概も出てきている。
フミルはヴァイン亭の料理をかれこれ三年作っている。いまさら素行に関する文句などあるはずもない。強いて何か言うなら……彼に女の影が全くないことか。
ヘイアンはステラという女との出会いによって人生観を変えられた。彼にもそういう幸福な変化が訪れてくれれば、とはヘイアンは時々思う。ただ、その相手は娘のニーア以外であってほしい、とも思う。
ヘイアンはフミルが頷いたことを確認して視線を調理場からカウンター席に座っている客に戻した。もちろんフミルの声は聞こえてない。
「じゃあ、適当にくつろいでいってくださいよ。そのうち料理出ますんで」
「うむ。待っておる」
鷹揚にそう返答した黒いフェルト帽をかぶり、クリーム色の長い外套を着た長身の貴族が、奥の席に向かう。長い髪を紐で背骨のように一本に束ね、頭頂部をヘアネットで覆った黄色いドレスを着た、俯いていた婦人もそわそわした様子でそれに続いた。
貴族は体にぴったりと合う薄紅の上着と水色のタイツを履き、クリーム色の外套の上にはテンの毛皮。テンの毛皮は言わずもがな、衣類はどれも上等の一品だろう。
婦人も同様に、青いストライプが随所に入り、腕には流行のリボン結びの紐がついているクリーム色のドレスを着ている。仕立てさせたものだろう。宝石をちりばめたブローチの額飾りも合わせて、およそたかだか田舎村の宿で食事をするための服装ではない。
(男爵と男爵婦人が巻いてんのは、ありゃあ高いテンだな。別に何着てても構わないが、汚れてもしらねえぞ?)
と、ヘイアンはオルバーン男爵夫妻にそんなことを内心で思う。
とはいえ、仮に衣服が汚れたとしても彼らが文句を言ってくることはないだろうとは踏んでいた。
なぜならオルバーン男爵はここ、ヴァイン亭にあしげく通っている常連の一人であり、男爵婦人もまたこの宿の料理に虜になった客の一人だからだ。夫人に至っては、食べる前にああやってそわそわするくらいだ。
ヴァイン亭にわざわざ足を運ぶ変わり者の貴族たちは基本的に行動パターンが決まっている。
挨拶し、食べて、さっさと帰る。基本的にはそれだけだ。貴族である彼らからしてみれば、ヴァイン亭のような庶民の店に足を運ぶのは恥。だからすぐに帰るのだ。大した会話をすることもない。
もっとも、オルバーン男爵夫妻のように、「婦人同伴で来る」という変わり者の中でもさらに変わり者の彼らの場合は、他の庶民と同じように食事中には控えめだが楽しげな会話をぽつぽつとするのだったが。
二人の様子を見ると、貴族も俺たち庶民と変わらないよな、とヘイアンは思ったりする。悪い気分ではないが、変な光景ではある。当初は後々変なことが起こらないか、歯に魚の骨でも挟まった気分になったものだ。
近頃、ヴァイン亭にお忍びで通うことは貴族間で小さな流行らしい。偶然に鉢合わせることも考えてか、ああやって上等な衣類を着て訪問してくるようだ。
ヘイアンとしては、「どういう格好して貴族の面子と体裁を維持しようが勝手だが、もう少し気を抜いて食べてほしいもんだ」と思ったりもする。
ヘイアンは貴族に対して臆するような感情は何一つ持っていない。
一応相応の対応はするが、屁理屈ばかりで保身ばかり考える者を好きにはなれないというのもある。剣をある程度振れるようになればいくらかマシな顔になるだろうに。とは、彼らに関して幾度となく考える事柄だ。
ちなみに、ヴァイン亭の客たちは時折来訪してくる貴族たちには慣れたもので、多少声を潜めたりすることはあるものの特別様子が変わることはない。
彼らをつっついたところで平民の自分たちには何のメリットもないのを知っているからだ。親しげに話を振ったところで貴族たちは気さくに返事を返したりはせず、むしろ眉をひそめるのが常だ。
幸いにして罪状を言い渡され、首をはねられた者はまだいないが、「貴様、無礼だぞ! ひっ捕らえられたいか」と声を張り上げたのがいたことがある。
名前は……アルハイム男爵だっただろうか?
ここに来るような舌の肥えた日和見貴族にしては悪くない威勢だとヘイアンは思ったものだ。
間もなくコトリとカウンターの隅に木皿が二つ置かれた。フミルがよそった狼肉のシチューを置いたようだった。
シチューには、キャベツの葉と中に入れた半円に綺麗に切られた蒸したジャガイモが添えてある。
「……旦那。置いときます」
「おう。ごくろうさん」
シチューの片隅にキャベツを置き、その上に蒸した野菜を乗せるというアイデアはフミルによるものだ。
横で工程を見てみれば、フミルはわざわざシチューをよそう前に芯を折ったキャベツの葉で皿の隅で仕切りを作り、野菜を乗せてからシチューをよそっていた。キャベツの葉の中にできるだけシチューを入れないようにしているものらしい。
(こんなことしなくても客は来るだろ。うちの評判の理由はシンプルに美味い野菜と肉にあるからな)
と、ヘイアンは美味い野菜と肉を与えてくれる銀竜への信仰心を胸にそう思ったものだが、予想を裏切って評判は思った以上だった。
特に貴族たちに受けがいい。各地の料理を知っている商人たちもこぞって褒めるもんだから、ヘイアンも黙認するほかなかった。
他にもまあ色々とフミルは時々細工師のような器用さを発揮して小技を披露しては、味はもちろん、食べるのが少々惜しくなるといったコメントを中心に方々から評判を得ているが、そのうちどこぞの貴族の料理番として引っ張られやしないか、ヘイアンはそれが少し不安でもある。
口下手のフミルが果たして貴族の家でやっていけるのかということと、ヴァイン亭の優秀な料理番がいなくなってしまう、二つの不安からだ。
・
男爵夫妻が去り、客足が少し落ち着いた頃、ヘイアンは裏の倉庫の野菜置き場で在庫チェックをしていた。
「ふう。近頃はすぐに野菜の在庫がなくなっちまうなぁ……。いつになったら客足落ち着くんだ? 飽きろよなぁ、そろそろ。……ふうむ。ほんと、もう一人人手が欲しいところだ」
ヘイアンは残り8本しか入ってないニンジンの木箱を眺めながら腰に手を当ててため息をつくが、その顔には確かな充実感があった。
ヘイアンは自分の太い腕が目に入った。
触る。
一般的な大柄の男としてはじゅうぶんに硬い腕だっだが、ヘイアンは内心で苦笑した。昔はもっと筋肉で引き締まっていた。肉がついたものだ。
傭兵で腕を鳴らしていた頃――まだ若かった15年以上前から料理は好きだった。右腕に大怪我をして療養した頃、ステラと暮らすようになってからはもっと上手くなった。
フミルが料理に慣れてからは商人や貴族の客も増えて、パトロンもできた。食材の調達と経営資金にはもう苦労する気配はない。
前の主人のヴァインさんから宿を譲り受けた頃には、こんなに繁盛するとは思わなかっただろう。
素材がいいので元からそれなりに評判ではあったのだが、ヴァインさんの料理の腕はカルマンや他の街の安宿の主人と同じで、「塩をかけるか、焼けば何でも食べれる」と豪語するレベルだったからだ。それもまあそうなのだが、それでは客は大して喜んではくれない。
(人手か……ニーアがもう少し動いてくれたらなぁ)
人出について、ヘイアンはよくよくそう思うが、誰も彼もがニーアに話しかけるので、ニーアが給仕の務めを完全にこなせないのはどうにもこうにもしようがない部分でもあった。
そもそも、ニーアが村の者や商人たちを交えて楽しくお喋りし、ヴァイン亭の雰囲気作りに貢献しているのを見るのは決して悪い気分じゃない。
「お父さーん、二人来たよー!」
ニーアから呼び出しがかかったので、去来した充足感と人手の問題を胸に留めつつ、ヘイアンは食堂に向かう。
入り口にいたのは黒髪の少年と白髪の少女の二人組だった。
普通なら、ヴァイン亭の噂でも聞き付けてケプラの貧民街から有り金はたきにでも来たのか、もしくは混血児と一緒に逃げてきた不幸な子供とでもヘイアンは思うところだが、……
ヘイアンは“萎縮”した。尋常ならざる巨大な気配、あまりにも密度の濃い気配が感じられたからだ。
だがすぐにその気配も、それに反応したヘイアンの第六感――戦士としての勘も消えた。ヘイアンにはスキルの《気配察知》もある。スキルにばかり頼っていたわけではないが、気のせいだとヘイアンは思った。
しかし……ヘイアンの額からは冷汗が一筋流れた。
誰かと対峙して冷や汗を流す経験など、宿の経営を始めてから一度もない。そんな猛者はこの村にはいないからだ。
村人からは警備隊長のバリアンと同列に扱われているが、実力の差は明らかだった。当時のバリアンはすぐに気付き、実力の差を認めたものだ。相変わらず怒鳴り散らしているようだが、それがヘイアンに向くことは一度もなかった。
仮に猛者がふらりとこの宿にやってきても、全盛期のヘイアンを超える逸材――レベル45を超える者などそうそういない。レベル45というと、たいていどこぞの国が将軍として迎え入れ、部隊を束ねる身になっている。
もし、ヘイアンが全盛期のままで、将軍クラスの奴と対峙したとしても、冷や汗は流れなかっただろう。なぜならそういう者たちとヘイアンは剣を打ち合い、時には酒を酌み交わしたりもしていたからだ。
魔導士が絡むと少し違うが、奴らの戦い方は極めて素直。いっそ清々しいくらいだ。
そして彼らは忠誠心を抱き、国や部隊を背負っているからこそ、無闇に剣を突き付けないことをヘイアンは知っている。たとえ賊上がりでも、だ。
賊上がりの連中はろくなものを食べてこなかった者が多い。食のありがたみというものを知っている者が、美味い飯を食わせてくれる奴を何の理由もなくどうにかするのは、ほとんどない。
それにヘイアンには彼らから剣を突き付けられる理由も特に浮かばない。
ヘイアンはもうその手の煩わしいものからは足を洗い、ファーブル村長はもちろん、ケプラの市長とも気さくに話ができるくらいなのだから。領主のベルマー辺境伯の信頼も得ている。
“ヘイアン自身”は冷や汗の理由が皆目見当もつかなかった。だから二人が不気味だった。
だけども……かつての本能が唐突に蘇り、うるさくヘイアンに叫んでいた。
自分が委縮し、冷や汗をかかされた相手は二人だと。
そして、今はその巨大な気配を殺しおおせているのもまた、目の前にいる二人だと。
剣を置いた者は年月とともにレベルが落ちていく。
当然身体能力も落ちるし判断力も鈍るが、培われた勘だけは消えない。消えたように見えて実のところ、活躍の場を今か今かと待ち焦がれ、心の奥底に潜んでいるのだ。スキルも質は落ちるが、似たようなものだ。
二人には武器の類はなく、少年が短剣を腰に提げているのみだ。
少年にせよ、少女にせよ、二人のいずれかが武術をやるにしては体がまるで出来ていなかった。武術といっても魔法を駆使するタイプもいるが……元相棒のように、魔法を極めた魔導士の目の色をしてもいない。
ヘイアンは挙動不審にならぬように努めて二人の元へと歩いた。
素性も性格も攻撃の手段も何も分からない相手に近づく時、挙動不審は死を早めることがある。二人が暗殺者だというなら、話は別だが。
さながら魔力の密度に面食らいながらも分け入った魔族の領域の一つ――カルドハイムの虚ろな沼地に分け入るかのような心境にあった中、ヘイアンは昔の二つの経験を呼び起こされていた。
一つはウリッシュ・ガスパルンという現七影魔導連の一人と初めて対峙した時の感覚。
もう一つは、名も知らぬ魔人から必死に気配を殺して逃げていた時のことだ。
だが傍に来て二人と距離を詰めても、ヘイアンにも、そして二人にも、一向に何の変化も訪れなかった。
少年の方がテロンド人かシルシェン人かの血が入っていて、武器を振るわなさそうな体の割に“立ち様”が悪くないこと。
少女の白髪だと思っていた髪が銀糸のような類まれな代物であり、瞳もまた薄灰色で、ずいぶん亜人の血が色濃いようであること。
新しく見つかったことはそのくらいだ。
「……ん? 二人だけか?」
二人に近づくにつれて、また冷汗が一つ浮き出て流れてしまったが、ヘイアンは平然を装って二人に話しかけた。
それでも警戒心は顔に残ったままで、宿の亭主としてはもうほとんど出していない厳めしいシワが寄っていたが、ヘイアンはそこまで気にする余裕がない。
「え、ええ。俺たちだけですよ」
「そうか」
理由は分からないが少年が自分に狼狽えているらしいのを見ると、ヘイアンの少しずつ研ぎ澄まされつつあった精神の荒波は静かになっていった。警戒の狼煙は依然として上がっていたが。
剣を置く実力者が恐れるものは主に2つある。1つは腕が鈍ること。もう1つは過ぎていく歳月だ。死は恐れない。それは剣を置くときに半ば覚悟しているから。
俺も歳なんだろう。ヘイアンはそれで納得した。
どんなに凶悪な魔物を切り伏せようとも、残虐非道な悪漢の首を落とそうとも、寄せてくる時の波にはあがきようがないのだ。
歳を食っていきなり気が狂った者もヘイアンは何人も見てきた。
チェシャ婆さんは元からだったが、バリアンだってそうだし、役所のボルバーラ婆さんだってそうだ。ケプラでも、アマリアでも、コルヴァンでも、獣人でも、エルフでも。その精神の仕組みは地域・種族に関わらず何一つ変わらない。つくづく、嫌な話だとヘイアンは思った。
「すまんね、うちのうるさいのが。そのうち村の悪いのに絡まれるぞと言ったりしてるんだが、こいつはなかなか治らねえんだ」
「うるさいのじゃない。ニーア」
「おー怖い怖い」
少年はヘイアンとニーアのやり取りをいくぶん表情を緩めて眺めていた。結構寛容な性格のようだ。隣の意志の強そうだった少女も、ニーアを見てずいぶん頬を緩ませている。
あまり子供じみたところもなければ、不幸を背負っている様子もない二人に、ヘイアンはますます自分が歳を食ったのだと実感した。歳を取れば取るほど疑り深くなるものだ。
◇
「いっちまったなぁ……」
「ええ。寂しくなるわね」
「ま、元々旅してた身だったしな。仕方ねえさ」
ニーアは、ジョルデとハリィとともに離れていくダイチとイン、そしてディアラとヘルミラの6人の小さな後ろ姿を名残惜しそうに眺めていたが、やがて何かを決意したかのようにヘイアンとステラの元に駆けてくる。
「ねえ、今度金櫛荘に遊びに行こうよ! 二人に会いに! びっくりさせようよ!」
「ああ?? ああー……」
ヘイアンは少し困った。会いに行くのはいい。金もまあ、貯蓄はあるので、泊まれることは泊まれる。
だが、金櫛荘は平民の自分たちが気軽に訪れるような場所ではない。第一、ヘイアンの家には平民用の服しかない。ヘイアン自体は、辺境伯に会いに行くときに着た一張羅があるのだが……。
「ニーア。金櫛荘ってどんな宿か知ってるか?」
高いんじゃないの? と、ニーアが、安宿の娘でありながらこともなげに発言する。その様子にヘイアンは息をついた。
「ベルマー伯爵様やマイアン公爵様も泊まるような宿だぞ。俺たちみたいな平民がひょいっと遊びに行けるような場所じゃあない。もしかしたら蹴られるかもしれねえな? 『なんでこんなところに平民の娘っこがいやがるんだ!』ってな」
ヘイアンは後半は両手を上げ、遅い掛かるかのような仕草をして、悪い顔をしつつふざけて言ったが、ニーアは明らかに不服な顔をした。
ヘイアンは言ってから、自分たちの身分を持ち出さずに、シンプルに自分が貴族御用達の宿の雰囲気が嫌いだとそう言えばよかっただろうかと考えを巡らせた。
ニーアは貴族が、侮辱罪だの蔑視罪だので簡単に平民の自分たちを牢獄に入れたり、処刑できたりすることは知っているのだが、じゃあ、彼らが蹴るだの殴るだのの話で他の子供と同じように、怯えたり、わめいたり、それらしい反応を見せるかと言うとそうでもない。
自分の父親は、貴族以外に限るが、宿にきた態度のでかい強襲彗星団の奴や、元セティシア兵の酔っ払いなどのめんどくさい連中を殴り飛ばして黙らせたことが何度かあるからだ。
それに。
「でもお父さん昔は昔の七星たちとも仲が良かったんでしょ? ちょっと“つて”でも出せばいいじゃない!」
ヘイアンはやっぱり出てきた、娘が稀に出してくる「秘密の追撃」にため息をついた。この追撃をかいくぐるには父親のヘイアンはあまりいい術を持たないのだ。
ステラがくすくすと笑みをこぼした。なんとかしてくれよ、とヘイアンは静観している嫁に思う。
「お母さんだって楽団の巡業で高い旅館に泊まったことあるんでしょ? 私だけないのはおかしくない??」
そうねぇ、とステラが苦い顔になる。どうやらステラも頼りにならないようだ。
「あー……もうあの頃の七星とはずいぶん顔を合わしてねえし、それに、」
「私の給仕の勉強になるかもしれないよ??」
ヘイアンは再びため息をついた。
(今度は勉強ときたか。いつも給仕をほっぽって客と話してばかりいるのはどこのどいつなんだか)
と、思う。子供ってのはなんでこう大人を困らせるのが得意なんだろうと、いつまでも解決のされない人類皆が抱える問題の一つに直面しつつ。
(まあ……ここまで人に会うのを楽しみにしてるニーアもなかなか見ないしな。ダイチ君たちもそんなに迷惑には思わねえだろう。ニーアの一張羅の服は……一枚くらい持っててもいいか)
「……前向きに考えとくよ」
「ほんとに??」
「ああ、ほんとだよ」
やった! と喜びを露わにする娘を見ながら、どうせ店を閉めるんならフミルでも連れていってみるか? とヘイアンは一考した。
別にこれ以上ヴァイン亭を大きくしたいわけでもなければ、貴族の宿風の料理を出したいわけではないが、フミル自身にはいい刺激になるだろうと思って。
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