3-21 夜露草の在り処 (2)
〈「夜露草 ー タタバミが七竜の魔力などにより変異した希少な種。煎じて飲めば、「至高の蜜酒」や聖浄魔法「不浄の滅殺」に匹敵する状態異常治療能力を持つ。〉
作成した夜露草と同時に出てきたウインドウの情報を読む。
「至高の蜜酒」はクライシスにもあったアイテムだ。残念ながら即捨てていたアイテムの一つなので手持ちにはないが、状態異常を全て回復するに加えて、MP/FPも500回復するアイテムだ。
状態異常回復系アイテムはそういえばこれもあったかー……。微妙にレアなアイテムなので忘れてた。
聖浄魔法の《不浄の滅殺》は、アークシャーマンのスキルだ。
全ての状態異常を治してくれるスキルだが、対象が一人なので状態異常攻撃をする敵を狩る場合に使うか使わないかといったところだ。文章を見るに、この世界で最上級の状態異常治療の魔法になっているらしい。
クライシスにある状態異常の治療魔法は他には、ハリィ君も唱えていた《
クライシス内だと状態異常治療系スキルは、範囲系やパッシブ以外あまり使わないが、死んだら終わるこの世界での有用度は計り知れない。
「おい、ダイチ」
そんなことを思いつつ、目の前で漂う青い魔力の粒の幻想的な光景に見惚れていると、後ろから聞きなれた声がかかる。若干語気が強い。
「き、きたんだ……」
仁王立ちで眉を吊り上げている。ヤバい。怒られそうな雰囲気。てか、いつの間に?
「きたんだ……じゃない!! 何をしておるのだ!!」
何って……。
「……《マナオステム》?」
そう答えると、インは眉をぴくぴくさせて睨んでくる。今にも噴火しそうだ。理由は分からないが……火に油を注いだらしい。
「そんなことは分かっとる!! 《
思わず耳を塞ぎそうになったインの小型犬のようなつんざき声だったが、すぐに鎮静化したようだった。インは肩で盛大にため息をついた。……心配してくれてるんだよな? たぶん、悪用されること辺りを。
「悪用はしないし、悪用されないように気をつけるからさ。なんかごめん?」
はあーーー、とさらに深いため息をつくイン。
「悪用されぬよう気を付けると宣言してそれで事なきを得るなら、騙し騙されの犯罪は起きておらん。……私が心配しておるのはだな……お主のその無知っぷりと妙な自信だ! 大方、『できるかな?』くらいの軽い認識でやったのであろう?」
図星なので何も言えない。でも自信があるわけじゃないんだが……。
できるかな? のところはなぜかぶりっ子っぽくなっていた。俺そんな声普段出してないのに。
「無知であることは良いことは何一つない。己自身を殺すこともあるし、お主が言うように、悪用せんとその無知さをつけ狙う奴が世の中には五万とおる。……もし仮に、ホムンクルスであるお主を利用せんと探している者がいて、さらに《魔素疎通》のその魔力残滓を辿れるとしたらどうする? その相手がホムンクルス対策を万全にしておる相手なら?」
むう……。そこまで考えてなかった。
「……実際にいるの? 《魔素疎通》の魔力残滓を辿れる者って」
「知らん。高等も高等の術だからの。私でも聞いたことがない。覚えとるのは七竜以外に知らんし、人の子らではおらんのではないか」
えぇ……。
「ふん。だがの、高等な術になればなるほど魔力は察知しやすい。そのことは知っておるか?」
俺は首を振った。
「ほぉれ! 知らんであろう?? 第一、お主は国や都市の名前すらろくに知らなんだのに、なぜそんなに泰然としておるのだ。何かあってもさほど表情も変えんしな。私はお主のそういうところをずっと気になっておったのだ。内心ではいつもひやひやしておるのだぞ?」
別に泰然としてるわけでもないんだけど……。でも文明的には何倍も現代が上だし、能力的にはスーパーマンだしで、その辺で驕っている部分はあったのかもしれない。
ただ驕るも何も驕りようがないのが現実ではある。俺としては精いっぱいやっているに過ぎない。諸々のクライシス譲りの桁外れの能力やアイテム、それにインがいなかったら、俺は自分がどうなっていたのか想像もつかない。
むしろ、魔物がいて、戦争のある世界で呑気に観光を楽しみたいと思っている軽佻浮薄な気持ちの方が目についた感じか?
というか、無表情じゃないと思うんだけど……。
「分からんのならもっとこう……しがみついて教えを請いたりのう……」
しがみつく? インは両腕を交差させて、自分に抱き着いているような仕草をした。……甘えられたいのか?
「……ふん。まあよい。自分がいかに人知を超える存在であるか、完全ではないにしても、ある程度は弁えてはおるようだしの。すまんの、騒いで。お主とて……被害者のようなものであるのに……。……ともかく。ここまでのレベルの《魔素疎通》は七竜の中でも私と緑竜しかできん。くれぐれも人の目のあるところでほいほい使うでないぞ?」
「分かったよ」
七竜がやっと使えるスキルならだいぶやばいな……。正直俺の使うスキルは高等のオンパレードだろうから、どれくらいが高等なのかいまいち分からないのだが……。
>称号「銀竜によく怒られる」を獲得しました。
むう……。
インが再度小さくため息をつくと、夜露草に近寄り、花弁に軽く振れる。
「……見事なものだの、昼であればこの煌めく青がここまで美しく映えなかったろうて。私の巣の付近でもここまで完全に咲き誇っているのはなかろうな。これを奴に飲ませるのだろ?」
夜露草の美しさに表情を緩めるインに頷く。その顔は夜露草の青い明かりで青みががっている。
「引っこ抜いていいのかとか全然分からないから、まずは報告しに行くよ」
「うむ。ハリィたちには大方、用を足しに行ったら見つけたとでも言うのだろ」
「まあ……」
「私もそれに一枚噛んどくからの。ダイチがここまで完璧な《魔素疎通》が使えるなどと信じる者もおらんだろうが、疑いはより薄れるだろうて」
色々とありがとねとお礼を言うと、気にするでないとインは夜露草に視線を戻した。
◇
「ほ、ほんとに夜露草だ……生えてるのを初めてみた……! 本にあったデッサンと同じ完全な夜露草だ! ああ、この喜びをどうすればいいのだろう……!」
夜露草の青い魔力が遠目から確認できるや否や駆け寄ったハムラが感動を露わにする。セリフはともかく、歓喜に歪んだ顔がちょっと気持ち悪い。
俺が用を足そうとしたところでたまたま見つけた、インも俺の姿を見つけ、ついでに青く光っていたのが気になってやってきた、そう説明してみたものの、このハムラの大げさな様子ではさほどの意味を持たないかもしれない。
インが肩をすくめた。気持ちはとても分かる。
「この美しい青い花弁……日光が降り注ぐコルヴァンの海のように煌めく青……大きくなり鋭くなった葉、太くしなやかな茎、……おや、茎の産毛がトゲのようになっている。本に載ってた記述とは少し違うな。いや、そもそも記載されてなかったか? ――ん? 魔力がかき消えない……? 魔力が濃いのか?」
「おいハムラ。……ハムラ!!」
「は、はいっ!」
ディディがはあ~~~と、インがさっきしたようなのと似た深いため息をつく。完全に自分の世界に入ってたもんな。
「ったく……。で? この夜露草は使えるのか?」
「えーと、問題ないと思います。少し見知らぬ点はありますが、私の採集仲間から聞いた特徴や本で見た夜露草とほぼ瓜二つです。他の植物と同じように、吸収する魔素や量によって多少生態が異なるようですが、夜露草に至ってはつぼみをつけている状態でも十分な解毒作用を発揮するはずです」
「よし! じゃあこれを姉さんのところに持っていかないとな。で、どのくらい必要なんだ?」
「それはですね……」
全部必要なので根元から丁重に掘ってくれというハムラに、ディディが半信半疑の表情になる。
「まあ、たくさんあっても問題なかろ」
インの擁護の言葉のままに、短剣を並べることで多少掘りやすい――ようはスコップだ――というハムラの助言にしたがって、俺とインとディディで掘り始める。
アルマシーとヘルミラが呼びに行ったディアラとともにやってきた。
「綺麗……この世のものじゃないみたい」
「そうですねぇ……」
「でしょう?? 美しいですよねぇ。……あ、根っこは通常のタタバミより倍近く長くなっているはずなので、深めに穴を掘って下さいね」
二人の率直な感想に、ハムラは美術館の館長か何かのようにニコニコしつつ、更なる指示を出す。
そうして代わるというので土掘りを姉妹に代わってもらうと、「もしかしたら亜種の可能性もないわけではないので、ちょっと観察させてもらいます」と言って、ハムラは夜露草につきっきりになった。
実際生態はハムラしか分からないしな。なにか有益な情報が出るかもしれない。ディディも黙認したようだ。
皆で少しずつ周りから穴を掘っていく。手で丁重に土を払いつつやがて抜けたので、巨石に向かう。夜露草は折らないよう、ディディとアルマシーの二人がかりで運搬した。
「これで隊長も完治だよな?」
「まず間違いないでしょうね。こんなに見事に咲き誇っている上、内包している魔力も濃いようですからね」
そう言えばと思い、ハムラに《魔力探知》をかけてみるように促してみる。
「なぜだい?」
「なんだか根っこの方が魔力が濃い気がして」
ハムラは移動しながら《魔力探知》を夜露草にかけた。
「……ああ、ダイチ君の言う通りだね。根の方が魔力の密度が濃いようだよ」
「お前の判断は間違ってなかったわけだな」
ディディがハムラの肩を軽く叩いてねぎらう。そうですね、とハムラが照れくさそうにした。
振りが首尾よくいったようで安堵した。俺だけの手柄になるかもしれないのが嫌だったのもあるが、ハムラのこれまでの労力を無駄にしたくなかったのだ。
学者的な喜びようはアレだが……なんべんも魔力枯渇状態になったハムラの甚大な疲労と努力は報われるべきだと思ったからね。
「特徴は聞いていましたが、なんとも美しい幻想的な花ですね……」
「でしょう? 俺も30年生きてきて初めて実物を見ましたが、この神秘性と美しさには驚きましたよ」
巨石で番をしていたハリィ君は、得意げなハムラに短めの感想を述べると、早速食事で使ったレジャーシート代わりの布を広げてくれる。
その上に夜露草を丁重に置く。花を中心とした魔力の粒は未だに放出を止めておらず、魔力の粒が、驚いて逃げる小さな妖精か何かのようにふわりと舞った。
「霊薬と同等の花というのもうなずけるな……。それで、どこを飲ませればいいんだ?」
「ディアラちゃんとヘルミラちゃんによれば、タタバミと同じと考えた場合どこでもいいそうなんですが、煎じて飲むなら葉を茹でるのがいいそうです」
「なんだハムラ、知らないのか?」
「俺が詳しいのは生態と採集のやり方の方です。食べる方は、まあ多少知識はありますが、信頼はしてません。もっと下の部隊にいたら、食費の削減とかで薬草やスープ作りにも励めたかもしれませんが……俺がいるのは何故か天下のジョーラ・ガンメルタの部隊ですからね。ジョーラ部隊はしっかり料理番がいますし、食料にも困ってないので、魔法の鍛錬ばかりで研究はからきしですよ」
「そりゃそうだ。これからも頼りにしてるよ」
ハリィ君がハムラの苦言に笑みを浮かべる。夜露草が見つかったためか、ハリィ君はだいぶ気が緩んでいるらしい。
ハリィ君が地面に手をかざし、黄色い魔法陣が出現すると、もこっと地面が盛り上がり、土という支えを失った草が根からぽとりぽとりと地面に落ちていって……たちまち小さな竈ができた。
「これは?」
「ああ、《
へえぇ……魔法は何でもできるなぁ……。
《土壁》で作った竈の上には夜露草の葉を入れた小鍋を置き、竈の中には中には適当にちぎったタタバミやクローバーを入れる。そして、鍋の中には《水射》でお湯を入れ、竈の草には《灯り》で火をくべた。
改めて思うが、魔法って便利だ。こうなると電気ポットもコンロもいらずだ。
ヴァイン亭の部屋を見た時には文明の低さに絶望したものだけど、ここまで魔法でどうにかなるのなら、文明が発展していないのも仕方ないかもしれない。
まもなくして軽く煮立ったお湯からは、夜露草の香りが漂ってくる。
ハーブの類ではないようで、さすがに伝説の薬草と言えども変わった匂いはしないようだ。というか、火元にくべた草にはドクダミもあったようで、そっちの方の匂いがきつい。
鍋の番をしているハリィ君が一番匂いがきついはずだが、ハリィ君は至って真剣な顔で、時折葉をつついて解毒効果が強まるようにかき混ぜている。
「霊薬にも勝るとも劣らない解毒草とはいえ、あんまり良い匂いではないのう」
「はは、仕方ないよ。夜露草はハーブじゃないし。それにこれは燃やしているドクダミの匂いの方が強いよ」
「あ、いい頃合いです。たぶんこの分だと苦いと思うので、少し塩を入れると飲みやすくなると思います」
一緒に鍋の番をしているヘルミラがそう告げたため、ハリィ君は言われたままにアルマシーにリュックから塩瓶を出してもらい、塩を少々入れて再びかき混ぜ始める。
「ご主人様、持ってきた乳やリンゴはどうしますか?」
「ん、何か入れたら解毒効果が薄まってしまうとか分かる?」
「……分かりません」
ハムラのことも見るが、いやと首を振られる。だよね。
乳やリンゴを入れる理由を聞いてくるので、甘い飲み物にして飲みやすくすることを軽く説明した。
「なるほどねぇ。ダイチ君は医術にでも詳しいのかい?」
ハムラの問いに多少は、と曖昧に返しておいた。栄養学はないっぽいからね。
「解毒が出来てから甘いのを作ろうか。苦くて飲みたくないって子供みたいなことを言わないようにね」
「はい。そうですね」
ヘルミラがくすりと笑う。アルマシーが「蜂蜜がありますが、使いますか?」と訊ねてくるので、是非使わせてもらうことにした。
舐めさせてもらうと、蜂蜜は普通に蜂蜜だった。アルマシーの実家の農場や王都近くの農場では養蜂をやっているのだとか。
そんな会話をしていると、鍋の中ではふつふつと音が立ち始め、薄い青い魔力の膜が取れた葉が柔らかくなってお湯を青緑色に染めていた。
ポーションは赤い液体だし、エーテルは青い液体なので今更抵抗感とかはないのだが、なんというか薄い絵の具というか、化学薬品めいた色合いだ。霊薬の汁なら白い方がいい。
「ダイチさん。ジョーラさんを起こしてもらってもいいですか?」
言われるままに隣で寝ているジョーラに声をかけつつ、体を軽く揺さぶる。
ジョーラは時々苦しそうに呻くが、起きそうにない。魔法で眠らせてたしなぁ。
「魔法使ってたけど、そんな簡単に起きる?」
「はい。ジョーラさんは睡眠魔法への耐性が高い人なので。それにあまり寝起きが良い方ではないので、もう少し強めにゆすっても大丈夫ですよ」
そう言いながら、ハリィ君は椀に夜露草の汁を注ぎ始める。
睡眠抵抗値は、クライシスでは状態異常抵抗の「身体系異常」というものにカテゴライズされていたものだけれども。ちなみに俺の状態異常抵抗値は0%だ。上げたら睡眠時間も減るだろうか?
言われるままに少し強めに揺すっていると、ジョーラはゆっくりと目を覚ました。表情には寝起きだからもあるだろうが、少し陰りがあり、弱々しい。
首や手足には吐血した時ほどではないが、例の黒い模様がうっすらと複数浮き出ていた。《大治療》直後よりも模様は濃くなっている。
ゲームなら毒状態の時に回復魔法をかけても一時しのぎにしかならない。毒は時間が経つか、行動をするかで、少ないながらも体力バーを確実に減らしていくからだ。
実際に蛇だの蜂だのの毒の類にかかったこともなければ、周りにそういう人もいなかったが、徐々に体力を削るのは実際の毒と同じだろう。
「ん……ダイチ、か? ……今際の際に浮かぶのがダイチの顔とは。……私は相当ダイチに入れ込んでいたんだな。もう少し……なにか……アプローチでもしてみればよかったか?……」
ぼんやりとしばらく俺の顔を眺めた後、ジョーラはぼそぼそとそんな言葉をこぼした。いつものジョーラらしくないのは仕方ないとは言え、なんとも対応に困る内容だ。これから生還させようというのに。
ハリィ君から椀を渡される。
気付けば、アルマシーは仏のような笑みをこぼしていて、ディディは「ほらみろ俺の言った通りだろ」とばかりにひょうきんに眉をあげてくる。なんだよ君ら、もう復活する前提じゃないか。
インは……ニヤニヤしていた。まあ、インは分かってたよ。
「ダイチさん、お願いします」
周囲のことは置いといて、ハリィ君に言われるがままジョーラに向かう。熱そうだったので少しふうふうして冷ましてやる。
「ジョーラ、起きて。夜露草の汁だよ」
「夜露草? あったのか……」
いったん椀を置き、ジョーラの体を起こしてやる。寝ていた割には少し体が熱い。
毒のせいか、寝起きだからかは分からないが、目に力はないし、手元がおぼつかないようだ。不安だったので俺がそのまま椀を口に近づけてやることにした。
「……にが」
「良薬は口に苦しですよ、ジョーラさん」
汁の苦さとハリィ君の言葉に渋面を見せたジョーラは、俺の顔を見たあと、薬を飲む自分のことを真剣に、あるいは不安げに見つめてくる面々の顔を眺める。
夜露草の存在にも気付いたようだ。目を見開いて、「あれが夜露草か?」という質問に、ハリィ君が頷く。
「すまないな……。世話をかけた」
今度は自分で椀を持って汁を嚥下していく。
苦さに顔を一瞬歪ませたが、何も文句は言わなかった。汁を全て飲むと、ジョーラはしばらく空の椀を眺め、それから夜露草を眺めた。
「ずいぶん美しい花だな」
「ええ、私も驚きました。霊薬の力を持つのも頷けます」
「ああ、そうだな……」
ジョーラの情報ウインドウを出して状態欄を見ていると、やがて「状態:アトラク毒」から「状態:健康」に変わった。
ずいぶん効きが早い。さすが霊薬だ。なんにせよ、しっかり効いてくれたらしい。一安心だ。衰弱とかでない辺り、下山するのも問題なさそうだ。
「……ん。体が楽になった気がするな」
「姉さん! 腕の模様が」
ディディの言葉に見てみれば、腕にうっすら出ていた模様がなくなっている。少し見せてもらうが、完全になくなったようだ。
「うん、なくなってる」
まあ、完治したのは分かってはいるんだけどね。よかったよかった。
ディディの「いよっし!」とかアルマシーの「よかったですね、隊長!」とか、ぱぁっと歓喜に湧く周囲。本来なら、死に至るほどの毒だしまだ喜ぶ場面ではないんだが……情報ウインドウではしっかり証明してくれているしね。このデータを疑う気にはちょっとなれない。
「ジョーラさん、夜露草はダイチさんが見つけてくれたんですよ」
「いや、俺だけが頑張ったわけじゃないよ。みんなが頑張ってくれたおかげだよ。特にハムラさん」
などと、俺は言おうと思ったんだが、半分も言わないうちにインやおぶったディアラよりも一回り大きな重みが俺を襲った。一瞬倒れるかと思ったが、そうはならない。
「ダイチ! 本当に、ありがとう……! ……う、ひぐっ……」
ジョーラは泣き始めた。
体が少し震えていた。俺は背中をぽんぽんと叩いてやった。しっかり現実だと教えてやるように。
良かったよ、しっかり生きたいと心では思ってて。
>称号「命の恩人」を獲得しました。
>称号「七星の大剣を救った」を獲得しました。
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