1-6 歓迎 (3)


 ……ん。


「起きたか」


 ぼんやり聞こえてくるその妙に通る声に自分が寝ていたのだと自覚する。

 頭の下に枕がある。俺は抱き枕は持っていないけど、枕を抱えて寝るのは好きだ。安心するんだよねー。


 そういや今回はかなり面白い夢だったな……。

 無数のドラゴンをなぎ倒す夢だ。ゲームのインターフェースがあったのは気にはなったけど、リアルだったしかなり緊迫した。俺だいぶ頑張ってた。戦いの中の緊張感っていいね。学生時代にバスケットやバドミントンの試合で白熱していたのを思い出すよ。

 痛いのは嫌だけどちょっと癖になるかもしんない。最後は負けたけどさ。


 俺は寝返りを打って、頭の下にあった“枕”を自分の方に寄せようとする。


「ひゃっ!」


 ん? 随分硬めの枕だ。うちのとくに低反発とかじゃないんだけどな。

 それにしても変わった弾力だな? すべすべしている。いや、むにむに?


「やめんか!!」


 頭がはたかれる。


 目を開けると、ヘソがあった。ヘソ? へぇそぉ……いやいや。ニルじゃないんだから。

 そのまま見上げると、成長期のおそらく少女の未成熟な胸があり、そして上には――見知らぬ少女の怒った顔があった。絵に描いたような綺麗な青空をバックに。


 女の子は幼く、ハーフっぽい子だ。それも……、逆光で正確ではないが、髪、目、睫毛と銀色らしい。

 コスプレとか天使とかの検索ワードを入れて出てきそうな超絶美少女の幼女だ。いや、幼女というほどじゃない、か?

 ん、語呂いいな。超絶美少女の幼女。超絶美少女の幼女。……てか少女よ、服着なさい。俺特に「幼女万歳!」な人じゃないけど、君かわいいから危ないよ。


「おい、大丈夫か? 傷は癒したから何も問題はないはずだが」


 そう言うと俺のおでこ辺りに手をかざす少女。頭ほどもないごくごく小さな白い魔法陣が出現したかと思うと、頭の中が霧が晴れたようにクリアになる。


 そうして脳裏によぎったのは銀竜との戦いの一幕だ。


 ああ、銀竜にやられたんだっけね。ということは俺はまだ夢の中か。

 それにしても傷は癒したと言っているし、この老成した言葉遣い……この少女はあれか。もしかして、……“アレ”か?


「君は……もしかして俺が戦ってた銀竜ですか?」

「うむ。人化は色々と制限もあるし、あまり長い時間は無理だがな」


 やっぱり。銀竜だけに銀髪だし。


 竜の人化かー……。ファンタジー界隈でおなじみだよね。どちらかといえばラノベ的?

 俺はラノベというよりノベルゲームをよくやってた口だけど、イラスト収集にはまっていた時、この子のような神秘的な雰囲気の少女のイラストもよく保存してた。


 敬語は別にいらんぞ、力のない者ならまだしもな、と銀竜少女。ドラゴンだし、喋り方的にも長命なんだろうなと思う。


 起き上がろうとすると、体、とくに肩と腹に少し違和感があった。矢が当たった場所だ。目立った傷とかはないようなんだが。


 銀竜が手で俺を制する。瞳孔が一瞬……魚の鱗のように虹色に光った。


「体の調子はどうだ?」

「ん。少し……肩とお腹に違和感があるかな」


 銀竜はふむ、と目線を落としたかと思うと、「まあ、横になっておれ。そのうち回復するであろうからな」というので、俺は再び膝枕をさせてもらうことになった。

 再びもたらされた膝の感触に申し訳ない気持ちになる。素直に気分がいいと思うには、膝の面積がちょっと小さすぎた。


「なんで膝枕?」


 申し訳なさからつい聞いてしまったが……服を着ない竜が人化しているのだからその辺の意識薄いのかもしれないけど、裸の幼女で膝枕って結構変態寄りだと思うよ?


「昔の人間の友人から男を労わるときはこうすると良いと聞いておってな。第一そのまま地面に放置するのもちょっと悪かったしな」


 そう特に恥ずかしげもなく言う銀竜。まあ……そうか。石の上のようだし。状況的には分からなくもない。

 膝枕は実際したことはないらしく、「どうだ?」と聞いてくるので気持ちいいよと答えておく。

 銀竜は表情を緩ませ、心なしか満足気だ。こてこてのアニメやマンガのように、さすがに特に頬を赤らめたりはしないようだ。銀竜は騙されやすいのかもしれないなと思う。


 てか、なんか気遣われることに驚き。ドラゴンたちは我先にと攻撃してきてそれはもう遠慮なかったしね。

 にしても裸で、さらには容姿がCGにも勝るとも劣らないレベルの幼女だと、年齢的には一回りも二回りも下の外見とはいえ、さすがにちょっと変な気持ちになってくるようだ。

 押し倒したいとか、そういう速急なものではないのだが……。竜だしね。


 俺は少女の裸体を見ないように反対側を向いた。

 向いた先には一部凍ったなんともファンタジーな草原があった。美しい。絵画にしたらさぞうっとりする好みの画だったろう。ただしその先には、抉れた形跡がそこかしこで見られる、これまたファンタジーではあるが見るも無残な草原の姿がある。

 ただ気絶させたはずの死屍累々なドラゴンの姿はどこにもなく、黒いドラゴンと紺のドラゴンが1匹ずつ傅くように、俺たちの傍で見守っているだけだった。


「倒したドラゴンたちは?」

「下がらせたぞ。一匹も死んではおらんから安心せい」


 側にいる二匹は銀竜の部下だろうか。とりあえず襲われる心配はなさそうだ。訪れた安全な空間と時間にいくらか力が抜ける。慌てて下に少女がいることを思い出して、力を入れる。


「力を抜いてよいぞ」


 少女が手で制したので、力を抜いた。


「重くない?」

「重いわけないだろう?」


 いやいや……。俺からしたら重たがるのが当然なんだが……。


 ……草原は何もないと思ってたけど、俺たちがいるのは大きな石の上だ。こんなのあったっけ? 石の表面は泥などもとくについているようには見えず、結構綺麗だ。


 草原の景色は、現実離れしている様相とは裏腹に実に静かだ。そよぐ風と草々が擦れる音は平和そのものだ。俺は安堵した。竜ではあるけど、人肌に触れているためかもしれない。


「服とかないのかい?」

「なんだ? 生まれたてのホムンクルスの癖にいっぱしに恥ずかしがっておるのか」


 少女が少しかがんできて、ちょっと歳と合わない感じで老獪に笑ってくる。……むう。なかなか可愛い。

 というか中身29歳だし、外見も人間と変わらないようだし、あまりホムンクルスって自覚はないんだけどね? むしろまだ夢見心地というかゲーム感覚というか。視界についてくるステータスウインドウやマップも健在だし。


「服はここにはない。お主が持っているなら別だが、そうでないなら我慢せい」


 この場合我慢も何もなく、むしろご褒美になると思うのだが……少女の方から我慢しろと言われるのは変な感じだ。全く平然としているしね。まあ、竜モードが通常モードなら服は着るはずもないし、裸への羞恥心もないんだろう。


 と、そんなことを考えてから、自分のシャツをあげようと思って起き上がる。ベルトを緩めて脱いだチュニックシャツを渡した。


「着てていいよ」


 銀竜は片方の眉をひょいとあげてなんとも言えない表情をしたが、受け取って着てくれる。だいぶでかい。裾が地面につきそうだ。ベルトを締めてくれというので、締めてやる。不安になるくらい細い。


 そういや、服に穴ないな。腹に魔法をくらった……よな?


「魔法をくらったと思うんだけど、服に穴とか開かないんだね」

「いや、開いてたぞ。修復したのだ。時間制限はあるが服程度なら簡単に修復できる。お主の腹は擦りむいたくらいだったがの」


 夢の世界なのであれこれ聞く気は失せたが、便利な話だ。というか、擦りむいたくらいって、俺頑丈だな……。


「まあ、外傷はそれですんでも衝撃は体内に伝わるからの」

「そうみたいだね。……あ、違和感なくなった」

「ふむ。当然だろうの」


 何が当然なんだろうと思いつつ、銀竜の横に座る。

 石がひんやりする。現実味少ないけど、話題少ないし、とりあえずいろいろと現状確認でもしとくか。まだ夢のようだし、乗り気でいてもいいだろう。


「えと、何個か質問してもいいかな?」


 構わんぞ。私のことは母親のように思え、と言う少女。母親?


>称号「銀竜の息子」を入手した。

 

 息子認定されちゃったよ。まあいいか。


「俺ってさ、ホムンクルスなんだよね? あの錬金術とかで生み出される」

「そうだ」

「生まれたての癖にとか言ってたけど、分かるの? ホムンクルスだって」

「ああ、分かるぞ。ホムンクルスには多かれ少なかれ鱗や血や爪などの竜の素材が使われるからな。お主には私のものが素材として使われておる。私が感知できるのは当然だが、お主の下した彼奴等も分かるぞ」


 ほほう。竜の素材が使われるのか。


 俺たちがクライシスで必死に集めていた超級ホムンクルスの素材は、デミアバンという人型の魔人や、実装されたばかりのボスモンスター水霊樹フリューケレナの素材が使われていたけれども。いや、確かホムンクルスの上級が竜モンスターの素材が使われていたかな?

 感知は要するに体内GPSみたいなものだよな。


「……ただ今はホムンクルスの生成は減ったと聞く。ここ50年のことはあまり詳しくは知らんのだが、変わっていなければ、造られるとしても飛竜ワイバーンの奴らや幼竜のもので代用するのがほとんどだ。私も私の体を使って造ったホムンクルスにはかれこれ二百年は会っておらん。……だがお主には私の一部が使われている。珍しいことにな」

「……なるほどね」


 私の一部が使われているとか、なかなか規模のでかい話だ。いっそ、冗談めかして「助けたなんて思わないでよね!」とかツンデレ節でいられた方がまだ信じられそうなのだが、この少女にはツンデレ要素はさほどないらしい。まあ普通だったらこうだろう。あ、人化した竜に対して普通も何もないか。めんどくさいな?


 しかし二百年ねー……。この分だと、銀竜は一体何年生きてるんだろうな。


 幼竜という名前の竜はとくに出現していなかったが、幼いドラゴンはMOBとしてちらほらいたし、飛竜もクライシスにもいた。外見は違っていたが、初期も初期の魔物で、今となっては初心者でも狩れるLV50、いってLV70程度の弱小の魔物だ。

 特別経験値が美味いわけでもなく、ドロップが良いわけでもなく。また、どこの湧き場でも湧き数が少ないため、ギルメンに代わりに狩ってもらいレベルを上げてもらうにしても効率が悪く。LV150くらいまでは、レベルを上げるための野良パーティ狩場というものが確立していて他の狩場に行く必要もないため、飛竜は名前こそ有名だけど知らない人は知らない可哀想な魔物の一匹でもある。

 もちろん、上位種は存在していて、ボス級クラスになってHPがやたら多くなっているので、各レベル帯の狩場でそれなりに脅威となっていたりするのだが。


「まあ血はともかく、爪は百年、鱗は二百年は劣化せぬから、最近提供していないことなど関係ないのだが」


 それは確かに関係ない。提供ねぇ。……ん? てか。


「俺、竜になれたりする?」

「……そんな例は聞いたことはないな」


 もしやと思ったが。

 別に変身にこだわりを持ってる系男子でもないが、それはそれでちょっと寂しいかもしれない。


 銀竜の鱗や爪をホムンクルスの材料に加えたらどうなるのか訊ねたら、主にホムンクルスの生命力と魔力の源になり、ホムンクルスの強さを大幅に底上げしてくれるらしい。

 銀竜の素材は飛竜や幼竜や他の竜のものに比べて純度が高く、ホムンクルスの魂と肉体とのスムーズな結合にも最適な素材なのだとか。


 この辺りからの回答で、俺は夢なりに、彼女を単なるコスプレ天使的な少女ではなく、銀竜が人化した者として信じ始めていたように思う。

 魂とか肉体とかの単語を使う女の子なんてそうそういないからね。歳を取った女性だって口にしない。本好きとかスピリチュアル系の人とか、哲学思想や民俗学方面の学者肌の人とか。ともかく、レアもレアな逸材だ。


 続けて話を聞けば、素材や錬金術の練度によれば失敗もそれなりにあるらしいのだが、多くのホムンクルスは生まれた頃は基本的に感情が欠落していると聞いてぞっとした。そういう意味では俺は非常に珍しいようなのだが……。


 逆になぜか銀竜はドヤ顔で、すぐに落胆させる結果になったのだが、強力な兵器としてもかつては使われていたという部分には俺はあまり驚かなかった。

 ホムンクルスに限らず、大量に造られる生命ないしロボットのような疑似生命が兵器利用されるのはSFでもよくあるしね。なかなか鬱展開も多いのだが、俺は好きな題材の一つだ。八百万な日本と結構相性の良い物語性だとも思う。


「ホムンクルスのお主には、刻印があるはずだ。ちょっとよいかの。……この辺りだが。ないな。無刻印ノンシリアルか」


 そう言って、銀竜が俺のシャツを少し引っ張り、鎖骨と右胸の真ん中、右脇の横辺りを指さした。確かにそこには刻印と呼べるような代物は何もない。

 シリアルというくらいだから番号かとも思ったが、貴族家の紋章や国の紋章など、あるいは家名などが刻印されるらしい。タグのようなものだと思うと、なくてちょっと安堵する。家畜扱いは会社だけにしてほしい。いや、会社も大概やめてほしいが。


>称号「無刻印のホムンクルス」を獲得しました。


「まあ珍しくもないかの。ふむ……そうなるとお主は一介の術者、それも個人的な理由により造られたと考えるのが無難なところであろうな。個人で造るホムンクルスは家政婦役にすぎないこともあるしだいたい質も悪いものだが、術者に恵まれたのか、たまたま素材が入手できたか。……いずれにせよ私を軽々とあしらうお主だから、その辺に転がっている理由ではないのだとは思うがの」


 吹っ飛ばされたけどね。


 そうなると懸念が少し出てくる。ティアン・メグリンドという人物を知っているか訊ねてみた。これから会う人がマッドな方や危険思想の持ち主だったら、会うのはちょっと控えようと思ったからだ。

 というか、単に家政婦目的で造ったというのなら、のんびりできそうだし、家事をちょっとは手伝ってもいいかもしれないんだけどさ。


「すまぬが知らん。さっきも言ったが、50年ほど眠っておったのでな。残念ながらここ50年の人や世情はあまりよく知らんのだ。勇者や魔人らに起こされなかった辺り平和な治世だったとは思いたいのだがな」


 ううむ。50年眠るとはなかなか想像のできない話だ。


 それにしても勇者に魔人もいるのか……。

 クライシスの世界には魔人はたんまりいたが、勇者と呼ばれる人物はいなかった。偉大な武勲や功績を讃えられた英雄や賢者はいくらかいたから、それと似たような存在だろう。


「して、お主。気になったんだが、防御系魔法や防御系スキルの類は持っておらんのか? 手を抜いて使っていなかったのだとしたら戦いの最中に癇癪を起こしていたかもしれぬが、どうもそうには思えなくてな」


 防御系魔法とか防御系スキルとか、そういう言葉を真面目に吐く銀竜に違和感を感じたが……


「いや、マジで持ってないんです……」


 真面目に堅苦しい言葉は使うなと言う銀竜に「言葉の綾というか、ノリというか」と、俺は苦笑する。

 銀竜が俺の回答に首を傾げる。言動から察するに銀竜は普通に百年以上生きてそうだが、外見上は見た目の小学校高学年から中学生くらいな年齢のままにあどけない、可愛らしい少女の顔だった。俺が父親で、もし銀竜の言動が年齢相応だったら簡単に親バカになりそうだ。


 それはともかく俺だってゲーマーの端くれなので、防御系魔法ないしスキルの重大さは知っている。あったら使ってたよ。


「ううむ……。となるとまだ受け取ってないのか、術者がマヌケなのか。……お主のために一応伝えておくが、本来ホムンクルスは最低限防御系魔法やスキルを所持しておるものだ。なぜか分かるか? 生まれたばかりのホムンクルスはとりわけ耐性面が脆くてな。まあ、幼虫や赤子が脆弱なのと同じようなものなんだが、とくに精神操作されることに滅法弱い。 知識と魂が完全に定着し、自我がある程度はっきりするまでは――だいたい一月から二月だな――魔法とスキルで最低限の防御をしておかねばならん」


 夢にしては設定細かいな。追いつくかな、理解。


 あー、精神耐性かぁ……。

 クライシスの職の一つであるアークシャーマンにそういうスキルもあった。光と闇の属性攻撃の抵抗数値を上げて、狂戦士とかステータス反転とかを防ぐ呪詛抵抗数値を上げるスキルだった。

 でも単なるゲーム内設定だしな。話の感じからすると、違うのだろう。赤ん坊は赤ん坊だから精神耐性低いっていう、そういう尺度の話なのだから。


「先の大戦ではな、屈強な兵士にもなれ、熟練の魔導士にもなれたホムンクルスは強力な兵器の一つではあったんだが、精神操作で操られ、自軍で裏切りが発生することも多々あってな。軍で兵器にするホムンクルスの育成はどこの国でも国家機密の一つであったよ」


 精神操作なんて間違ってもされたくないな……。


「裏切りは勘弁してほしいな……。大切な仲間ができて知らずに裏切るなんてことは絶対にしたくない」

「ふむ。確かにの」


 まだ竜しか見ていないが、これから出会う人で懇意になる人たちはいるだろうし。ここまで親身になってくれている銀竜のことだってまぁ裏切りたくはない。

 掌打を当てただけで瀕死になってたくらいだしな……。操られた末、誤って殺してしまうことも十分あり得る。そんな悲しすぎる場面には出くわしたくない。


 ん? これから出会う仲間とかつい順応してた。まぁ……いっか。


 スキルの一覧画面を出す。


 緊急回避、攻撃予測、掌打、足払い、氷結耐性。爆発耐性が増えてるな。各種属性耐性はつかないんだろうか。装備につける属性OPオプションの厳選地獄エンチャントはもう懲り懲りだが……。


 ドラゴン、というか飛竜との連戦で結構増えたが、ぱっと見は完全に武闘家のスキルだ。クライシスではアーチャーとウィザードがメインだったのにな。

 魔法に関してはあとで聞いてみよう。長い話になるだろうし。


 銀竜がスキル画面を眺めていた俺のことをじっと見ている。見えてるのかな?


「これ見える?」

「何がだ?」

「……見えてないならいいんだ」


 反応的にウインドウは見えてないっぽい。傍から見たら、難しいことを考えてる顔つきにでも見えていたのかもしれない。変に思われるので話題を投げる。


「防御系の魔法やスキルって、銀竜を覆ってたガラス板みたいなやつのこと?」

「ガラス板ぁ?? う、うむ。本来だったらひとまず物理攻撃、魔法攻撃、精神耐性の3種類の防御魔法を貼っておくんだが、お主のときは物理防御魔法を三重にしておった。魔法や搦め手を使う様子はなかったしの。とはいえな……1発で割られた時は正直びびったぞ? 上級の物理防御魔法だったのだが」

「いやぁ……」


 うん。パキパキと小気味よく割れてました。


「そういやスキルを“まだ受け取ってない”って言ってたけど、どういうこと?」

「ああ。ホムンクルスは生まれたあと、魔法やスキルを手順に従って貰い受けるようでな。お主の場合は個人が造ったようだから、その基本的な形式を汲んでないかもしれんがな」


 もらったのは《言語翻訳 LV5》だけだ。魔法陣が残ったままだったけど、あれか? 気になるな。魔法使えるかもしれないし。


「その受け取るスキルに関してちょっと気になることというか、心当たりがあるんだけどさ。俺の生まれた家に行こうと思うんだけど銀竜もちょっと来てもらっていいかな? ズボン、ああ、ワンピースもあると思うし」

「それは構わんが。……なんだ、やはり女子の裸体は刺激が強かったのか。愛い奴よの」


 銀竜がしたり顔になる。なんだよ、そういう性格かよ。

 少女相手とはいえ精神は老成しているので、はいそうです、とはちょっと素直に言えないまま、銀竜の手を引いて強引に家へ向かう。銀竜がからかうように見てきていたが、尾を引きそうだったのであまり取り合わないようにした。


 そういえば銀竜は裸足だ。靴あったかな。




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