第77話 初の呼び水NM戦




 次は街の北区にある、神殿と職安と魔法屋に行くらしい。大通りはどこまでも混雑していて、俺の心はどこまでも複雑だ。その主な要因は、NPC達の冷たい対応に起因していて。

 さすがに魅力値が1ケタは不味かったかなと、マイナス要素の装備品を交換してみたのだが。あんまり効果は無かった様子で、地味に心にダメージを喰らってしまった。

 何しろ、比較する相手がすぐ側にいるとねぇ?


「いや、言うほど俺も魅力値は高くないってば……ってか人間族ベースだと、そんな低くなりようも無いんじゃね?

 ちなみにさっきの神殿で、俺は幸運の御守り貰ったけど……?」

「……こっちは清めの塩一つまみだった……」

「しょ、職安じゃ何貰った? 俺は交換チケット2枚だけど……」

「職カード貰った……『窓際族』って、これ本当に職業なの?」

「…………スマン」


 ちなみに魔法屋では、炎の水晶の欠片を1個だけ貰えた。むこうは何か魔法カードみたいの貰っていたけど、もう比較するのも嫌になるから敢えて聞かない。

 などと冷たいあしらいにも負けず、北区の主要建物廻りはこれにて終了。大通りの北のどん詰まりには、一際立派な領主の館が控えていたけど。

 そちらは部外者は入れない仕様らしく、当分はイベントにも絡まないそうなので今はスルー。続いて向かったのは、東区にある合成ギルド通りだった。

 これには、落ちていた俺のテンションも上昇を見せ。


 ギルドの数が多過ぎるので、全部はとても覗いて回れないのもあって。通りの案内板の横に、スタンプ机が置かれていて勝手に押して行く感じらしい。

 これにも行列が出来ていたけど、所詮はクエ依頼書を取り出して押すだけの簡単作業。案内板のギルドの並びを眺めているだけで、あっという間に自分の番に。

 少々物足りないな、もう少し眺めて見たかった気が。


 まぁ、後で時間が出来たら寄ってみればいいか。ちなみにここでは、景品の類いは貰えず終い。ただし合成ギルドの工房は、どこも活気に満ちていて凄かった。

 二の字にすぐにでも入れるのかと問うてみたら、ちょっと不思議な顔をされてしまった。この限定サーバは時間縛りがきつくて、合成を手掛ける冒険者が極端に少ないそうだ。

 勿体ない事である、あんなに楽しそうなのに。


「まぁ取り立てて、不利になるって事も無い気はするんだけどね。合成ギルドの入会は、確か街の貢献ポイントだかを貯めないとじゃ無かったっけ?

 何に入るつもりだい、ってか俺もどっか入ろうかなぁ?」


 取り敢えず木工は確定だけど、他にも数点面白そうなギルドがあったりして。今はチェックのみだな、そして東区で廻る場所は後は東門付近だけらしい。

 そこには広場が存在していて、門の右手に障壁に食い込むように奇妙な塔がにょっきりと生えていた。城壁の2倍は高さがあるので、近付かなくても目立っている。

 アレがPKの温床おんしょうと悪名高き、通称“赤の塔”らしい。


 この広場も人が多いと思ったら、屋台やらお店の類いが固まってある様子。二の字の説明によると、競売所なるモノが街の主要3か所に存在していて。

 冒険者ギルドの前と南の門前、それからここ東門前にもあるらしい。冒険者ギルド前は相当に人出が多いけど、ここ東門前も合成ギルドが近いので常時人でごった返している様子。

 なるほど、しかし競売とはどんなシステム?


「んっと、このゲームだと冒険者ランクによって出品出来る数が決まって来るな。ランクが高くなれば、一度にたくさん出品可能って感じ?

 出品アイテムの値段は基本、自分で決めれるんだけどさ。係員にお任せしても、悪いようには設定しないぜ。残念なのは、この限定サーバは貧乏冒険者ばっかりって事かな。

 始まってまだ半月だし、高価アイテム出品しても誰も買えない事態が起きてるっぽい」

「それは悲劇だな……ちなみに、あの塔には俺も入れるのかな?」

「アレも確か、貢献ポイントか何か貯める必要があるって話だったっけ? 基本的に、街の主要施設はそんな感じだよ。冒険ギルドに所属してすぐ使えるようになるのは、冒険者ギルドの建物とこの競売システム、それから無料宿と街の出入り無料化だった筈。

 冒険者カード貰えるから、大抵はそれを提示する感じだな!」


 なるほど、便利だなぁ……街の出入りはともかく、宿まで無料にして貰えるなんて! ところが二の字の話だと、所詮冒険者ランク1で借りられる宿など、倉庫と一緒だそうで。

 何と2畳しかスペースが無くて、家具も置けず窓は顔すら出せない小ささなのだそう。本当に物置に使うしかない感じ、だから大抵の冒険者は頑張ってランクを上げるそうなのだが。

 この限定サーバの混み具合で、色々と不都合が出まくっているのだとか。


 そんな宿泊施設、どうやら南西地区一帯がそうらしい。ちなみに反対の南東区域は、琴音がうるさく警鐘を鳴らしていた、裏町なる無法地帯だとの事。

 そんな2つの地区を突っ切るように、この街唯一の川が流れていて。だから南の地区は北地区とはちょっと雰囲気が違って来る。

 人通りも多くないのは、ひょっとして裏通りが近いせいかも。


 二の字もその点は同じらしく、裏町はPKがうろついて危険だと口にしている。連中はどうやら、少数のグループに目を付けて、それ以上の人数で襲うパターンが常套手段らしく。

 なるべくなら、3~4人で固まって行動が望ましいとのアドバイスを受けた。野外活動をするなら特にそう、1週間の出禁はなるべくなら避けたいところ。

 それ以上に、裏の連中に目を付けられたくは無いと。


 そうだなと同意しつつ、俺の心の中は真逆の事を考えていた。この街にどれほどの数のPKがいるか知らないが、琴音を泣かせた奴は絶対にあぶり出してやる。

 パッと見た限り、裏通りもそんなに寂れて薄暗い印象でも無い感じだ。危険と言うのがどの程度かは知らないが、うろつき回るのに支障は無いと思いたい。

 こっちも、片っ端からと言う訳にも行かないしな。


 昨日の京悟達とのラインのやり取りでも、散々揉めたのは確かである。特に美樹也が煩かった、仇を取るつもりなら向こうもこの街まで駆け付けるとか。

 どんだけ時間と労力を使う気だと、こっちは宥めるのに忙しかったけど。ソロで立ち向かうのも、確かに無謀な考えではあるってのも確かみたい。

 それも追々考えて行かなくちゃ、こちらの戦力にも限りがあるんだし。


 無料宿については、ログアウトには便利だとの追加説明を二の字から受けた。何しろ荷物の整理や安全確保、各種ステータスの回復もバッチリな自分だけの空間である。

 貢献ポイントを稼げば、自宅に宅配物も届くようになるとの事で。遠く離れた友達とも、物資の融通が出来るようになるらしい。

 安宿に泊まって、荷物が盗まれる心配をしなくても済むそう。


「……逆に言えば、安宿だと盗まれる心配があるって事?」

「専用の無料宿でも、冒険者カード無くしたらやばいよ? 早い所、鍵付きの荷物ボックス買うのをお勧めするかな。ベテラン冒険者は大抵それを持ってるし、特に争いの多いこの限定サーバじゃね。

 高級宿屋に泊るなら、そんな心配は必要ないけどさ」


 ちなみに高級宿は、庭で野菜などの栽培も出来るしステup効果の食事は付くし、さらには部屋設置の家具のボーナス効果まで付く至れり尽くせり施設らしい。

 このゲーム、自分の部屋に家具を設置するメリットと言うのが存在するようで。例えばベッドでスタミナ回復力upとか、照明器具で暗視効果upとか色々。

 地味にアバター強化可能なので、ベテラン冒険者は重宝しているとの事だ。


 もっとも、そういった家具はこっちの世界でも揃えると大金が吹っ飛んで行くので。この限定サーバでは、取り組む者も少ないだろうとの二の字の推察。

 確かにそうだろう、ってか俺も2畳の空間を家具で埋めようとは思わないな。せめて6畳くらいにならないと、飾り付ける気力も湧かない気がする。

 まぁ、誰か頻繁に遊びに来るなら別だけど。


 そんな宿屋の通りは、中央広場から南に下った場所一帯だとの説明を受け。確かに少し坂になっていて、右も左も宿泊施設っぽい建物が並んでいる。

 左は裏町の筈だけど、ここにも宿を取る冒険者がいるのかな? PKの存在は散々聞かされたけど、俺は未だに出遭った事が無いし分からない。

 とにかくそんな宿案内の掲示板が、南門前の広場にあって。


 続いて案内されたその広場は、確かにさっきの東門前より人の往来は少ない感じ。そしてここでもスタンプ設置の机が置いてあって、冒険者たちが列を作っていた。

 クエ依頼書を数えてみたら、どうやらここが最後らしい。


「あれっ、街廻りもここで終わりなのか、二の字? そういやもうすぐ1時間経っちゃうもんな……後行ってないのは、西の門だけかな?」

「西の門前も行ってみるか、八の字? あそこは荷馬車の往来とか激しくて、冒険者が利用する施設はほとんど無いけど。

 青の塔はあの辺に建ってるって話だけど、俺は良く知らないな」

「そっか、そんじゃあいいや」


 そんな訳で、1時間余りでチュートリアルは終了したっぽい。スタンプの押されたクエ依頼書を抱えて、俺達は中央広場の臨時受け付け窓口へ。

 二の字の話だと、明日以降はもっと混むだろうとの事で。今日手続き出来て良かったなと、何とも朗らかな態度は好感が持てる気が。

 オマケにこの男、知り合った記念に呼び水を奢ってくれるそうな。


 何とも太っ腹な話である、友達になった記念との事だけど。ちなみに二の字とのフレンド登録も、ギルド証発行手続きの合間に済ませてしまっている。

 俺の名前の入った冒険ギルド証は、何とか無事に発行して貰えたので悪しからず。これで晴れてギルド公認冒険者だ、ランクは1の駆け出しだけど。

 まずは人混みから離れて、街を出る準備をしようとの提案を受け。


 具体的には、薬品や装備品を揃えての戦闘準備らしい。二の字は流石にベテランで、そういう細かい所に気が回るみたいで頼もしい。

 とは言えその程度なら、ここ10日間のログイン経験で俺も自然に身についている。初の体験だったのは、奢ってもらった呼び水の操作方法だったり。

 それと初めて大門から、フィールドに出た時の解放感。


「おおっ、何か冒険が始まった気がする……! 街の中も中世の雰囲気あったけど、外の風景も凄いな。モンスターもちらほら見えてるし、ファンタジーだなぁ……」

「凄いだろ、確かに冒険が始まった感は半端じゃないよな! 俺も始めたばかりの頃は、毎日フィールドに出るの楽しくて仕方なかったなぁ……いや、街中の作業すら楽しくてさ!

 あの頃の新鮮さが、何だか蘇った気がするな……おっと、呼び水の使い方教えとかなきゃ。こうやって、ほら……丸い器の中の水に浮かんでる棒の先が向こう指してるだろ?

 そっちに向かえばいい、距離は地面と水面の角度で推測するんだ」


 なるほど、丸くて透明なガラス玉の中に浮かんでいる棒の先が指す方向に進む感じらしい。南門から出た俺たちは、その指針を頼りにフィールドを暫し彷徨う。

 目の前は平野が広がっていて、丘を3つか4つ超えた先には広大な森が広がっていた。周囲に冒険者の数はチラホラ窺えるが、大抵は4人以上でPTを組んでいるみたい。

 意外と少なく感じるな、街中はあんなに混み合ってたのに。


 二の字によると、どうもPKを怖れて安全マージンを多めに取りたがる冒険者が多いそうな。その為にPTを4人以上でとか、占有エリアの青の塔でレベル上げとか。

 PT組むのも臨時はしんどいのに、躊躇ちゅうちょする者が多数を占めていて。挙句フィールドは、冒険者の数に反比例して閑散としてしまっているとの推測。

 脅え過ぎでしょ、1週間のロスが痛いのは分かるけどさ。


 その点では、初心者の俺をわざわざ案内までしてくれる二の字は本当に有り難いし頼りになる。恐らくPKに出遭っても、返り討ちにする程度の技量は持っているのだろう。

 そして俺に対しても、その位は可能だと信頼してくれている筈だ。でないと、危ない2人での野外行動を誘っては来ないだろうし。

 そう考えたら、ちょっとワクワクして来たな。


 初のフィールド探索にもときめきながら、少しだけお試し戦闘もこなしてみたり。この辺の雑魚は、元サーバよりも補正を受けてかなり強くなっているらしい。

 具体的には、初級Lv1~に適正なレベルになっているっぽい。初心者Lv26の俺でも、危なげなく狩れたので問題は無いと思うけど。

 そんなお試し戦闘を挟みつつ、フィールドを進む事20分程度。




 二の字の持っていたトリガーの名前は、“森の賢者の呼び水”と言うらしい。つまりは、名前から推測するに森の中のNMモンスターは確定かな。敵の種類は二つ名から想像して、オランウータンみたいな猿型かな?

 二の字の話だと、スタートの街の近くで湧かすからそんなに強くは無い筈との事。もっと先の街で湧かせば、敵も自ずと強くなって行くシステムみたいで。

 だからと言って、ドロップにそんなに違いは無いとの話。


 それならさっさと使って、成長の足しにした方が有利ではある。俺の鞄の中にも、確か何個か入ってた筈……琴音が戻って来た時用に、幾つかキープするとして。

 残りは使ってしまっても良いのかも、そう考えて俺もお返しに呼び水奢るよと返したら。二の字はニカッと笑って、それなら明日の楽しみに取っておこうと提案して来た。

 それから明日のイン時間合わせとか、お互いの戦闘の立ち位置報告とか。


 二の字は魔法剣士だが、戦闘中にほとんど魔法は使わないとの事。軽快に立ち回って、敵の死角から太刀を急所に当てる軽戦士の戦い方を信条としているらしい。

 対する俺は、何と言って良いモノか……ファーとネムに手伝って貰いながら、3種の武器を使い分け。更には8種の魔法を使いまくる、世にも珍しい優柔不断な魔法剣士?

 ……いやいや、万能を目指してると言った方が聞こえは良いな!


 口にしたのは、短槍と手甲で前衛をやりつつ、魔法もちょこっと使えますよ的な日和ひよった応えだった。両手棍と弓矢のスキルは伏せておこう、魔法もたしなみ程度って事に。

 呆れられるのは目に見えているし、馬鹿だと思われたら悲しくなっちゃう。どうせ炎とか氷系の魔法は、普段から使ってないもんね。

 ……うん、何で取っちゃったんだろうかねぇ?


 とにかく15分程度で辿り着いた、森の中のトリガー投入ポイント。途端に張り切りだす二の字と、街の移動に飽き飽きしていたっぽい相棒ズ。

 その仔ドラゴンは戦力になるのかとの質問に、ブレスも吐くんだぞと俺の返答。ただし武器を振るうのに邪魔な時は、声を掛けてと幾つかのサインを伝授する俺。

 向こうは感心した様子で、了解と返して来た。


 初見の相手の合図に、ネムが上手く反応してくれるかは全くの不明だけど。ファーもいるし、恐らくは大丈夫な筈。俺もフォローするし、戦闘時間もそれほど長くは掛からないだろう。

 そんな安直な思考から始まった、初のトリガーNM戦。目論見が外れたのは、割と初っ端からだった。敵の姿はお猿さんとは全く違っていて、何と巨大なフクロウだったのだ。

 しかもお供の前衛付き、本体はどうやら後衛仕様らしい。


 複数なのも誤算だが、実は前衛2匹の黒フクロウの方が小柄で攻撃が当て難い。小柄と言ってもネムより大きなバランスボールサイズ、後衛の白フクロウはその倍はある。

 二の字は果敢に本命に突っ込もうとして、黒梟にブロックを喰らっていた。俺は大人しく、ネムと一緒に左の奴に殴り掛かる。後衛放置は、ちょっと怖いけどね。

 ってか、言ってた先から白梟の《ダークロウ》と言う魔法が。


 むおっ、これは範囲攻撃なのかな……ダメージと視界塞ぎ、こちらの動きも少し緩慢になっている気がする。そして殴られる衝撃が、だいたい前方からやって来ていて。

 敵の方向は分かったし、ネムが相変わらず左手にいるのも声で確認出来た。二の字の発する怒号も、やはり右手から聞こえて来る。それに応えるように、こちらも一言。

 なるほど、パーティ戦って色々と気を使うなぁ。


 《フラッシュ》は効かないかなと思ったけど、途端に目の前の敵の攻撃が止む気配。しかも周囲の暗闇も晴れてくれた、よくやったとの二の字の掛け声と反撃開始の合図。

 せっかちなネムと二の字は、既に黒梟とタイマンを始めていた。こちらは加勢すべきか、それともフリーの白フクロウを何とか牽制すべきか。

 とか思ってたら、ファーが水晶玉の投下で範囲の攻撃参加。


 うっひょうとか、二の字から聞こえて来たけど敵も思い切り怯んでいる様子。その隙に俺は華麗にステップイン、本丸の白梟に張り付く事に成功。

 途端に飛んで来たのは、闇魔法の《バグB》だった。俺も持っている魔法だが、飛んで来た魔球の数が全然違う! 5個って、俺の倍以上じゃんかっ!

 威力も当然、俺の呪文の倍以上の大ダメージ。


 その位じゃ、もはや怯まないけどね。何しろ潜って来た場数が違う。ってか、HPの総量が馬鹿みたいに増えた副作用とでも言おうか。

 少々のダメージじゃ、最早怯まなくなっている俺である。


 お返しに短槍で突き掛かり、羽を広げて距離を置こうとする敵を牽制するように廻り込んで。苦手属性はやはり光かな、それなら突きと一緒に《ライトアロー》を広げた羽にぶち込んで。

 これで逃げられないだろう、おっと敵のHPはもう半減か。


 悪足掻きの《フェザーシュート》と言う特殊技にも、怯んで隙を見せる程のお人好しでは無い。戦闘のコツが段々と分かって来た、要するに自己主張を通した方の勝ちなのだ。

 白梟の残ったHPを、貯まったSPでの《四段突き》で綺麗に食い尽くし。相手は後衛仕様だったお陰か、体力は余り高くなかった様子。

 それと同時に、二の字も護衛を真っ二つにしてフィニッシュ。


 ……では無く、ネムの相手の黒梟がまだ元気だった模様。体力は半分も残っておらず、ネムの方はまだ元気だったけど。手助けしなくても倒せそうだったけど、ここはまぁ時間節約だ。

 荒ぶるネムは、戦闘の終わりに敵を倒してやったぜの翼拡げの舞いを始めた。ファーはそんな仔竜を、ひとしきり誉めてあげている様子でこちらも心が和む。

 ドロップも良好、奢って貰ったにしては過分な報酬な気が。


 トリガーNMで、スキル3Pも貰えるのは嬉しすぎる報酬だ。他にも風の術書1枚に風の水晶玉が4個、魔石(小)と『夜の呼び笛』と言う初見の召喚用アイテム。

 これは恐らく、霧の呼び笛と似たような効能なのだろう。それから賢者の羽毛が5個、賢者の杖と言う名前の杖装備がドロップした。

 割と性能良いな、MP上昇が付いてるし。


 ――賢者の杖 耐久8、攻+10、知力+3、MP+20



「お疲れさん、凄かったなアンタ! 危機回避能力も凄いけど、従者の仔ドラゴンも普通に強いじゃん!

 いやぁ、この時期でそこまで戦闘能力ある冒険者はなかなかいないぞ?」

「そうなんだ、他の冒険者の戦闘シーンとか見た事ないからなぁ……さっきのは同時戦闘だったから、そっちの戦法見れなかったし。

 明日時間あったら、ちょっと見せてくんない?」

「いいぜ、明日フィールドの案内しながら、こっちの戦い方をお披露目してやるよ! その代わり、そっちも奥の手とかあったら見せてくれよ!?」


 別に減るモノじゃなし、その位なら良いか。オッケーの返事と共に、俺達は一旦街に戻り始める。ちなみにドロップの分配は、考えなくて良いそうでビックリ。

 二の字にも大体同じ感じで、ドロップ分配が入手できていたそう。太っ腹なシステムだな、ただしレアドロップでは当たり外れが存在するそうな。

 ちなみに今回の大当たりは、俺の引いた杖だったみたい。





 ――奢って貰ったと言うのに、当たりまで引いて申し訳ない限り。





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