第37話 待望って程でも無いけど、5つ目の果実ゲット
クラフトには『時の狭間の香木』を使用したので、その時間はまるっとお得だけど。鞄の整理ごときに使うのは勿体無い、しかし安全地帯に寄っただけでこの大量入荷はナニ?
その大半は、手合せの報酬とレベルアップで手に入れたジョブカード群。ジョブチェンジの構想や仕組みなど、俺の知識の中には全く入っていない。
そんな訳で、琴音に速攻メールで相談する。
ちなみに、安全地帯の隅っこに置いてたゴミ寸前のアイテム群……ほぼ半分が消失していた。まぁ捨てても無くしても困らない品ばかりだったから、別に良いんだけど。
その中から辛うじて売れるかなって品を掻き集めて、後はそのまま放置しておく事に。鞄の容量が大きくなったからと言っても、所詮は有限なのである。
そしてある目論見を、その放置アイテムに仕掛けておいて、と。
さて、後は取り損なっていた休憩を取りつつ、琴音の返信を待とうか。ファーにはさっき戦闘で手伝ってくれたご褒美に、今日のログボのマカロンをプレゼント。
こちらは焼いたお肉を食しながら、鞄の整理などしつつ。しかしジョブってたくさんあるな、貰えたカードを読んで行くと『初級魔法剣士』『初級短槍使い』『初級棍棒使い』『妖精使い』『精霊下請け人』『洞窟探検家』『混沌風使い』『蝶舞軽戦士』『猪突戦士』『初級オールマイティ蛮人』『初級魔法使い』と11種類。
最初から持ってた『初級海賊』を合わせると12種だな、この中から転職しろと?
しかし見事に興奮しない職ばかりだな、後衛職は置いとくとして前衛職もイマイチな並び。変なのも混じってるな、『妖精使い』とか『精霊下請け人』って何だ?
これはファーとかラマウカーンとの出逢いが関係してるっぽい、その位しか分からないな。さらに『蝶舞軽戦士』や『猪突戦士』は、称号が関わってるんじゃないだろうか。
後は良く分からない、伸ばしたスキルが職に繋がるっぽいけど。
だいたい『初級オールマイティ蛮族』ってなんだよ、確かに棍棒使ってるけど蛮族認定は酷いぞ! 言いたい事は色々あるけど、夢中でマカロンを頬張ってるファーを見てたら段々とどうでも良くなって来た。
こちらも食事を済ませて、スタミナ補給は完了。途方に暮れつつ、今後の方針をどうするか迷っていたら。ようやく琴音の返信が、ふむふむそう言う事か。
どうやら職替えは、街の職安で無いと出来ないらしい。
そこはファンタジーっぽくないな、神様に導かれてとかじゃ駄目なのか? 途端に生臭くなるけど、冒険者が寄り付かなくなる可能性もあるかもね。
そんな事を考えつつ、さっき俺が考えていた予想は当たりっぽい。つまりは自分が伸ばしたスキルとか、普段の行動が職選択の指針になってるみたいで。
しかも街に行けば、普通に職カードが売ってるそうな。
これで晴れて、最初の『初心冒険者』の職からチェンジ出来る訳だ。このゲーム、職による補正は割と大きいのだけど、それで別に行動が縛られる感じでも無く。
例えば後衛職に就いたとしても、両手武器で前に出る事は全然可能みたい。ただし、武器を振るうのに補正が付かないだけ……職って精々、その程度なのだそう。
凄いのは、職の掛け持ちとかも可能っぽい。
同時に『冒険スキル』もレベル15で解禁みたいだ。これは俺が持ってる『地図形成』や『野生』を修得して、普段の冒険者としての活躍に役立てる段階に達したそうで。
武器スキルや魔法スキル、補正スキルに加えてアバターの性格に個性が出て来る感じになるっぽい。ふむふむ、みんな違ってみんな良い的なアレか、確かに個性は大事だよね。
つまり俺も、好みのスキルを選んで覚えろと。
ただし冒険スキルって、カードに加えて教えてくれる人が必要だと聞いた覚えが。……この安全地帯に教えてくれそうな人は皆無、着ぐるみNPCに教えを乞うのも業腹だ。
……ところが事態は思わぬ方向へ、何とさっき戦ったネコの着ぐるみが、妙な看板を取り出して自身が座る真横に突き刺したのだ。
そこには、こんな風に殴り書きされていて。
『冒険スキル:野生の修得はコチラへ! 初回無料、安心確実』
『ジョブカード:販売&買い取り始めました! 限定品&希少品有り〼!』
むおっ、とうとうこの安全地帯でも販売が始まった!? ってか、喰い付くのはそこでは無いような……取り扱いはジョブカードのみ、そして野生の冒険スキルの修得が可能!?
むーん、自分のステをチェックしてみて、冒険スキルの欄を確認してみると。このアバターだと、最初は3つほど覚えられるのかぁ。
どうしよう、キャ……アバターの強化的には魅力だけど。
『野生』の効果は、ざっくり言えば野外での行動補正、ジャンプ力up、それから筋力と敏捷力のステが上がり易くなるらしい。ついでに生肉が食べられるように、まぁそれは良いとして。
前衛的には魅力は多々ある感じはする、しかも初回無料ですよ奥さん! 奥さんって誰だと突っ込むのはもうしない、安心確実に限っては意味不明だし。
そうそう、レベル上がってスキルPも増えたんだっけ。
……そして悲しいお知らせが、またもやスキル1Pしか入りませんでした! まぁスキルPは余ってるし、それほど悲劇と思わない様にすればいいのか?
スキルも2つ位取得しようか、候補は盾か棍棒、魔法では水か風かなぁ?
名前:ヤスケ 初心者Lv15 種族:ミックスB
筋力 29(+6) 体力 34 HP 140(+14)
器用 32(+2) 敏捷 30(+4) MP 116
知力 24 精神 23(-4) SP 102
幸運 18(+10)魅力 8(+1) スタミナ**
職業(1):『新米冒険者』Lv15
武器(4):《ブン回し》《落とし突き》《撃ち上げ花火》《二段突き》
補正(4):《投擲威力20%up》《防御力10%up》《》《》
冒険(3):『野生』『』『』
武器:弓矢2P
:短剣1P
:短槍12P《落とし突き》《捻り突き》《二段突き》
:片手棍1P
:両手棍8P《ブン回し》《撃ち上げ花火》
:盾4P《防御力10%up》
:投擲4P《投擲威力20%up》
魔法:『闇』8P《Dタッチ》《バグB》
:『風』12P《風の茨》《風属性付与》《風疾り》
:『光』4P《フラッシュ》
:『水』5P《清き水》
:『炎』4P《キャノンB》
種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)
称号:『蝶舞』『猪突』
モネー:98、400
スキルP:13
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :海賊の短槍(6) 攻+10
武器2:丈夫な木の棍棒(6) 攻+6(両手時+8)
予備 :研ぎ直した粗末な石斧 耐久3、攻+4(投擲可)
盾 :甲殻の手甲(4) 防+4
頭 :質素な帽子(5) 防+4
上着 :丈夫なベスト(8) 防+7
鎧 :護衛の胸当て(6) 防+6、器用+2
下着 :クールな下着(5) 防+1、耐寒+20%up
アクセ:幸運の御守り(2) 防+1、幸運+2
指輪1:耐魔の指輪(2) 耐魔20%
指輪2:契約の指輪(-) 従者+3
腕 :野生の腕輪(4) 防+3、筋力+6、敏捷+2
ベルト:革の幅広ベルト(7) 防+5、ポーチ×4
下肢 :疾風のズボン(8) 防+7、敏捷+2
靴 :旅人の靴(12) 防+5、スタミナ減‐20%up
背中 :海賊のマント(8) 防+7、敵対+2、魅力-2
従者:妖精Lv1 幸運+6、魅力+4、精神-4
鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄
アイテム:ポーション(大)×2、ポーション(中)×9、ポーション(小)×22
:マナポ(中)×2、マナポ×12、毒消し×6、マナP×8、Sポ×7
:ポーションP×5、万能薬×2、炎の神酒×3、蜂蜜ジュース×3
:雷、土の術書、潤いの蜂蜜×7、闇の秘酒×3、聖水×6、薬品箱
:虹色の果実×4、魔石(小)×8、魔石(中)×2、経験の飴玉×2、
:料理キット、冒険者セット《水中呼吸》蟷螂の大鎌、護衛の腕輪
:緋色の頭巾、闇の眼帯、護りの腕輪、海賊の大斧、調味料
:魔除けの香炉、金のメダル×6、松脂1瓶、野生の手斧
:巨大な大腿骨、幽霊の呼び水、大猪の牙の短槍、海賊のサーベル
:闇の契約書、探索のコンパス、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜
:旅人のマント、護衛の刀、庭師のエプロン《四段突き》《秋波斬り》
:護衛の弓、護衛の盾『隠密』『交友』『地図形成』野生のサーベル
:初心冒険者の服・帽子・杖セット、魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木
:壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、大猪の毛皮、枝切り鋏
:森狼の毛皮、風の牙、時の狭間の香木×5、骨工ギルドの推薦状
:奇妙な頭蓋骨、野蛮な大腿骨、三色珊瑚、白い甲羅、豹柄のマスク
:『妖精使い』『精霊下請け人』『蝶舞軽戦士』『猪突戦士』
はい、結局『野生』の冒険スキルは取っちゃいました。だってタダだし、今後の成長やアイテムでスロットもどんどん増えるそうだし?
習得第一号スキルですね、ぱちぱち。
ジョブカードに関しては、必要無い物はすべて売る事に。だって持ってても鞄を圧迫するだけだし、就ける職はせいぜいが1つか2つらしいので。
ほぼ全部、換金してスッキリさせました……売値はだいたい、5千~2万モネーだったかな? 『初級オールマイティ蛮人』とか『混沌風使い』あたりが、まぁまぁ高くて1万超えだった筈。
そして2万以上の4枚は、一応キープしておく事に。
念の為と言うか、売って後で後悔するのが嫌だからね。それでもお金は、ほぼ10万に届く勢い。今の所使い道も無いし、売っているジョブも大したモノは無かったのが本音。
そして当然ながら、他のアイテムの売買は拒否される始末。
まぁ良いケド、別に……せめて食べ物系とか、消費アイテムは売ってくれてもいいのにね。それはともかく、レベル15に上がって補正スロットが見事+1された模様!
これは素直に嬉しいよね、全然埋まってないけど。しかし今回取ったスキルで、ようやく余ってたスロットの2つ目が埋まると言う快挙が!
盾スキルの《防御力10%up》は、その名の通り防御系の補正スキル。
どんな装備を着けていても、常に防御力+10%upは嬉しいかな。そしてもう1個のスキルは、悩んだ末に風魔法を選んだんだけど。
結果は便利系の《
それを思えば、結構良い引きだったかなと思う次第。
新スキル系の紹介は、まぁだいたいこんなモノかな? どうやらこのゲーム、レベル15が1つの節目らしいんだけど。転職とやらも出来ないし、森の中でぼっちのままと言うね。
ステータス的には、段々と前衛系のと後衛系のステの差が拡がって来た気もするけど。戦う上では特に不便も無く、特にHP150超えは心強い事この上なし。
今後もこの調子で、戦力向上を図って行きたいと思う。
とは言え、ほぼ経験値稼ぎ的な算段しか無いんだけどね。この後も湖の果実取りを終えたら、ゴブリン狩りでもしながら南のマップを埋めたいかなと思っている。
何しろ今日新しく受けたクエだけど、ゴブリンの落とすレア武器とレア装備の回収って妙なモノだったり。他にも上質な皮を持って来てと言う、どこで入手出来るのか不明なクエが。
段々と内容が難しくなって来てるなぁ、後で師匠に相談しようか。
それはともかく、短槍スキルに次いで風魔法が10超えの快挙を成し遂げた模様。そう言えば風魔法は、もう1つ《ウインドアロー》と選択可能だったんだけど。
MPコストが21と、割と重たい魔法だった事が判明して。悩んだ挙句に諦めた訳だ、何しろ同列に炎魔法の《キャノンB》の前例があるもので。
その点《風疾り》はMP消費8である、効果は5分でお得♪
良い腕輪をゲット出来て、装備もなかなかに良くなって来たし。特に筋力と敏捷の補正が嬉しい、その代わり防御力と耐久値は落ちたけど。
強い武器(片手斧&片手剣)も手に入ったけど、またまた使ってる系統じゃ無いと言う例のパターン。そこで今回、少し頭を捻ってある仕掛けを施してみた。
これはまた『手合せ』系のクエ依頼が、ひょっとしてあった時用の為である。
まるで無駄かも知れないし、そこら辺は念の為と言うかダメで元々的な感じだ。期待はしてないし、その仕掛けが嵌まってもその次のハードルもある訳だし。
だからこの件は忘れても大丈夫、安全地帯参りは忘れちゃ駄目だけど。
さて、後は湖で用事を済ますだけだな。余った時間は、それなりに有効利用をするつもりだけど。そんな感じで再び安全地帯から飛び出したのは、インして約2時間後。
とにかく新しいクエ依頼も貰えたし、クリア出来た依頼もスッキリと報告出来たし。
修繕とポーション類の補充も出来たし良かった。難を言えば、師匠の隠れ家との物理的距離かな。歩いて20分以上掛かってしまう、しかも間にゴブリンの集落と騎士団のキャンプが存在していると言う。とにかく邪魔で仕方ないこの2大勢力、お陰で大回りを強いられる破目に。
そう思うと、新所有の《風疾り》は思ったより役立つかも。
それでもやっぱり、中央に陣取る騎士団のキャンプと、広い範囲を徘徊しているゴブリンの群れは邪魔以外の何物でも無い。
どっちかいなくなって欲しいけど、それを言えば大元の野党の砦も同じ事。未だこのエリアでは見た事無いけど、闘うとしてどの位の強さなんだろう?
師匠はちょくちょく、砦に侵入して盗みを働いているそうだけど。
それを考えると、セキュリティ的にも強さ的にも大した事は無さそうに思えてしまう。とか考えている内に、目的の湖に到着。ここまで何と戦闘ゼロ、アクティブ敵に出遭わず終い。
湖は相変わらず広かった、そして敵の分布もさっきと変わらず。
さて、師匠のクエもこなさないといけないけど、まだ確認出来ていない大ワニとかヒドラの存在が不気味だな。割と広い湖とは言え、対岸が見えない程じゃないし。
どこかに隠れているんだろうか、そう思ってたらファーがココ変と濁った水面を指差していた。確かに他の場所と較べて、そこだけ妙に濁っている。
おやっ、ひょっとしてそこに何か隠れてらっしゃる?
警戒しながら近くに落ちていた木切れを拾って、その場所に投げ込んでやると。物凄い勢いで、水中から巨大な尖った口が飛び出して来た。
これが噂の大ワニかぁ、確かに大きいけど精々が2メートル程度かな? 奇襲に失敗したと見るや、ソイツはこちらを視認してのそのそと襲い掛かって来る。
最初の奇襲に比べると、その動きは可哀想なくらいに遅い。
それでもタフだったし、攻撃力も高かったけどね。奇襲で向こうの得意な水中に引きずり込まれてたら、確かにヤバかっただろう。個としての戦闘力は、この森でトップクラスかも。
それを踏まえてよく観察したら、湖のほとりに濁った箇所が幾つか存在しているみたい。初見だと不味かったけど、ネタがバレたらさすがに警戒してしまう。
いやでも、ゴブリン程度なら引っ掛かりそうだよね?
後はヒドラだけど、残念ながら発見する前に例の離れ小島の渡り口に到着してしまった。浮石が7つほど等間隔に並べられていて、小島に渡れるようになっている。
そしてこちら側は割と水深が浅いみたい、小魚が泳いでるのも確認出来ちゃったり。反対側は深い場所もあったんだけどね、少なくとも人の背よりは深い場所も幾つか。
後は濁ってたり水草に隠れてたり、ポイントによって様々。
とにかく渡ってしまって、まずは師匠のお遣いクエをこなす事に。水の
こちらも自前のお酒を披露して、お供え物に華を添える感じに。ラマウカーンの時の様に、何か反応があるのかなとも思ったけど。
特に何の音沙汰も無いみたい、ファーも騒ぎ立てたりしてないし。
精霊の事は良く分からないし、ましてやゲームの設定上の事なので推測も無意味かもだけど。別種族の存在にコンタクトを取れる程の力って、なかなか
存在は何となく感じられるのだろう、相棒は自分の鞄から木の実を取り出してお供え物に加えているし。最後に手を合わせて、これで師匠のクエ依頼は終了。
さて、次はメインの果実取りだ。
これでクエ依頼の5個に達するのだけど、特に満足感とか達成感は湧かない。師匠の家の裏庭で、弓矢の練習している方が、余程充実していると言うね。
果実の樹の下まで歩いて行くと、水ヒルと言う名前のモンスターが突然落ちて来た。おっと、また例のパターンか……警戒してたけど、まぁ今では雑魚だな。
貼り付かれる前に、4匹全てを殲滅してやる。
そう言えば、クエ依頼でコイツの討伐か何かがあった様な気が。まぁ後で確認しよう、師匠からもクエ依頼を受けれる現状、色々とごちゃまぜで覚え切れないし。
おっと、地面にはスライムも湧いてらっしゃる。小さな窪地から湧き出た感じ、上ばかり気にしてたら足元を掬われるパターンかな。
そうなる前に、コイツ等も短槍で突いて成仏させちゃる!
3匹目の核に狙いを定めていた時、それは突如降って来た。一応は水ヒルの残りも警戒はしてたけど、それよりももっとサイズが大きくて強面の敵だ。
サル型だけど、横幅は人よりごつくて広い。前傾と言うか長い手を地面に付いているが、真っ直ぐ立てば俺より長身かも。そして目立つのは、黒いヘッドホンを装着している所。
うん、北の樹海に仲間がいたな、コイツは“聞かザル”って名前だけど。
視ザルは割と小柄だったけど、コイツは武闘派らしい。特殊能力もあるよね、それを込みで警戒しつつ短槍で突っ込んで行くと。
やっぱり来ました、特殊技の《高周波啼き》と言う迷惑な大声が。耳キーン状態、ファーなんか地面に墜落しちゃってます。踏むと危ないから、咄嗟に場所を変える事に。
それが更なる伏兵の真下と言う、嫌な待ち伏せサイクル。
樹の枝で身を潜めていたのは、お仲間の“言わザル”だったと言うオチでした。これで3匹揃って、特にめでたい訳でも無いんだけどね。スッキリはした気が、ってか今は喋れないけど。
コイツの特殊能力は、案の定の《無言の圧力》と言う弱体系の魔法だった。推測通りの詠唱禁止技だ、つまりは当分の間は魔法が使えないらしい。
後衛だと悲しいけど、俺は殴りメインだから関係ないかな。
と言う訳で、さっきから地上のゴツいのと接近戦を展開してます。樹の上の小柄なサルは、飽くまでサポートに徹する様子。飛礫を投げて来たり、魔法を飛ばしてみたり。
構っていられない俺は、目の前の聞かザルに全力で対峙する。連続スキル技を浴びせて、大声でのダメージの非礼を詫びさせる勢いである。
おっと、ようやく相棒が復活して地面から飛び上がってくれたな。
彼女にタゲが向かないとは言え、やっぱり同じ戦場にいるので、ファーに不利な場所に居座られると肝が冷える。これでこちらも本気モード、大きく空いた口を《落とし突き》で強引に塞いでやって。
初見の技は怖かったけど、体力や攻撃力では大ワニの方が遥か上だったかな。動きもそんなに早くないし、それは樹の上の言わザルも同じ事。
ただし、こちらの射程外に居座られると攻撃手段が無いんだけど。
魔法はまだ使えないし、弓矢は当たるかどうか覚束無い。未だに動き回る相手には、命中率は半分程度なのだ。練習と思って試す……そうだ、投げナイフがあった!
手甲の裏に取り付けた骨のナイフを華麗に抜き取り、投擲補正込みでスローイング。その威力よりも、攻撃それ自体に驚いたサルは何故か樹から落下の憂き目に。
猿も木から落ちる、そしてそのままご臨終の流れに。
その頃には完全復活していたファーが、用心しながら枝の密集地帯を飛び上がって行って。見事に虹色の果実を採って来てくれた、俺も投げたナイフを回収して。
これで完璧に、ここでのお仕事は終了みたい。2人で喜びながら、次はどうしようかと計画の練り直し。やっぱり南の地図埋めに、歩き回るのがいいのかな?
師匠の言ってた、ゴブリンの集落の場所も確認しておきたいし。
新魔法の《風疾り》も試しておきたいしね、どの程度の移動力の上昇なのか。相棒がついて来れない程、早く走れるようになるとは思わないけど。
それだと逆に、使い辛くなってしまうかな。ファーの移動速度とスタミナの限界は、俺には良く分からないけど。いざとなったら、懐に突っ込んで移動すればいいか。
単純な解決法だ、悩むまでも無かった気が。
とか思っていると、その本人が挙動不審な飛行を見せ始めた。安全地帯で食事休憩を既にとってたので、ここでの休憩は不要かなとか思ってたんだけど。
流石のファーも、水の中には飛び込む素振りは見せない。ってか、水の中に何か見付けた様子……それで騒いでたのね、良かった水浴びしたいとかじゃ無くて。
モンスターの徘徊するこんな場所で、それは余りに危険過ぎる遊び。
ファーが見付けたのは、結果的には大物だった。大ワニよりもっと凄い、てっきり役立つ素材か何かだと思ってたのに。それは新しいステージ、ってか隠し洞窟のパターンかな?
今までにない仕掛けなのは間違い無し、何しろ入り口が水中にあるんだから。もし冒険者が見付けても、そこに辿り着くのは容易では無い筈、きっと多分。
しかし見事な建物だね、確かにあれは柱だ……しかも何本もあるみたい。
――水中神殿は、ひっそりとそこで俺達を待ち構えていた。
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