紫ワンピースの女

執筆日:2018/04/08

お題:『強固』『紫』『川』


---・---・---


とあるところに、川の氾濫が起きやすい街がありました。

川の氾濫が起こりやすいため、その街は天気予報の的中率は自然と高くなり、今では的中率は100%に近いと言います。

ある日、その街で川の氾濫を防ぐため、強固な堤防を作ることになりました。街の人々は次の大雨までには完成させよう、と言ってすぐに工事に取りかかりました。

しかし、物事は簡単には進みません。その街の天気予報は、1週間以内に大雨が訪れると告げました。例年よりも早い時期でした。

ほぼ100%の確率で当たる天気予報です。大雨が1週間以内に訪れるのは確実です。どう考えても、堤防の完成には間に合いません。

するとそこに、紫色のワンピースを着た女の人が現れました。

「私ならば、大雨が来る前に堤防を完成させられます」

見慣れない若い女性でしたが、藁にでもすがりたい気持ちだった街の人たちは、その女性に助けを求めました。

「どうか、助けてはくれないか」

「お任せください」


女性は、誰も雇うことをしませんでした。

女性はただ1人で堤防作りを進めようとしているのかと、街の人全員が思いました。

しかし、2日経っても、3日経っても、女性は何もしようとはしません。

街の人は怒り、彼女を街から追い出してしまいました。そして、工事を再開したのです。


女性が「手伝わせて欲しい」と言ってから4日が経った日のことでした。

天気予報士は目を丸くしていました。

「なんという事だ!大雨の兆候が消えたぞ!」

突然、近日中の予報雨予報から晴れ予報に変わったことに驚いたのだ。しかも、兆候は簡単に消えそうにもないものだったのに……!


『間に合わないのなら、天気を変えてしまえばいいだけのことよ』


あの紫のワンピースを着た女性の声が、聞こえた気がしたのは、気のせいでしょうか。


あるところに、いつも紫色のワンピースを着ている女性がいました。

その人は実は、魔法使いだという噂があったりなかったり……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る