第4話 冲方丁が示した「ラノベ」と「ゲーム」という両輪

 これも2000年代前半ですが、僕はぼんやりとしか把握していないのですが、冲方丁さんが「カオス・レギオン」という作品を世に出した時に、何かが始まったのはおそらく間違いないと思います。

 この作品は富士見ファンタジア文庫から小説が出る一方で、同時にゲームが開発されて販売された。つまりほとんど最初期のメディアミックスとなります。

 ほぼ同時期に「.hack」が極端なメディアミックスを試みて、ゲーム、テレビアニメ、小説、ラジオ番組と展開されました。一方ではラジオで、ライトノベルのボイスドラマ化がこれらとほぼ同時期にされていました。角川スニーカー文庫からはFMの全国ネットで、富士見ファンタジア文庫からはAMでの番組がありました。

 このメディアミックスが試みられたことが、10年代におけるマルチメディア展開の最初の動き、助走で、これは小説というよりアニメに関しての評価ですが、10年代ではテレビアニメの題材が枯渇して、アニメ作品のリメイクや、すでに完結して何年も経っている作品のアニメ化が起こりましたが、テレビアニメは明らかに勢いがつきすぎている、と言えます。作れば作るだけ売れるから、とにかく素材を集めなくちゃいけない、という具合です。

 ライトノベルは、こうして小説とアニメの両輪がほとんど当たり前になってきました。漫画も当たり前です。それでも僕の中では、アニメが前提のライトノベルはほとんどなくなっている印象で、あるのはまずライトノベルが売れ、それがアニメ化されると一層、爆発的にヒットする動きがある、そういう相乗効果、ではないからと感じます。メディアミックスは、ライトノベルなどの加速のために使う手段になっているのかな、と一部で僕は考えています。最初からのマルチメディア展開ができる材料が減ったのだろうか、とも思いますが、そこは商売をしている人の目一つなので、僕には不明です。

 だいぶ過去を振り返りますが、ライトノベルで「撲殺天使ドクロちゃん」という作品が面白くて、しかし僕は文庫を買わず、友達が話しているのを聞いていました。それがやがてアニメ化されて、テーマソングが話題になったりしましたが、それで爆発した、ということがなかった気がする。おそらくゼロ年代半ばから後半の出来事で、この時にはまだ、ラノベとアニメの組み合わせが完璧に調和する、というのが絶対じゃないという事実がありそうです。その後に「這いよれニャル子さん」が似た雰囲気で、こちらは一部で熱狂的に歓迎されていた、ということもありました。

 どこからこの組み合わせ、ラノベとアニメ、ラノベとゲーム、あるいは複数のメディアとの連携、がはっきり成立し始めたのかは、すぐにはわかりませんが、「灼眼のシャナ」が強いかもしれません。



(続く)

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