第2話 俄には信じがたい
状況!
どういう状況!
なにコレ!
どうしよう!
厄いヤツなの!?
etc……
あっ、済みません、絶賛取り乱し中の桜 吹雪です。
何をそんなに?と思われる方にお伺いしても宜しいでしょうか?
僕は、どうしたらいいのでしょうかねぇ?
知りませんよねぇ、そうですよねぇ、まぁそうでしょうねぇ!
突然独り騙りしますが、僕はしがないサラリーマンです。
徒歩出勤で始発の電車に揺られること凡そ一時間半。会社に着き、途中で寄ったコンビニで購入したサンドイッチとカフェラテを早々に胃に納め一息つくこと無く業務開始。
その後社内での簡単な会議を終えると現場へ出動、本格的な労働となります。
そして、陽もとっぷりと暮れる頃に現場での仕事は終わるのですが、僕の仕事はまだまだつづきます。
再び会社へと戻り、書類関係を纏めたり、日報、翌日の仕事の下準備などをして一日を終えます。
それが二十一時くらいになります。
ほぼ毎日二十一時の前後一時間くらいの誤差で仕事から上がり、また一時間半かけて帰宅している訳です。
皆さんの中にはもっと過酷な環境下で通勤、或いは通学をしている方々もいることは知っています。
会社は決してブラック企業ではないし、遣り甲斐もそれなりに感じているし同僚や上司、後輩たちのとの関係も良い方だと自負しています。
では、本当に一ミリも不満がないのか?といえばアレですけど……
帰宅後、夕飯やら入浴を済ませるとようやく一日の最後を締め括る甘美なる至福のひととき。
そうです。
待ちに待った『執筆活動の時間』!略して『筆活』!
仕事は、何事もなければ概ね週休二日で勿論その休日も『筆活』に僕の情熱を注ぎこむのです!
なのにっ!なのにですよ!
あの現象、事象、森羅万象はなんなの!?
僕の貴重な至高のひととき『筆活』を邪魔してくるとはっっっっっっっっ!
フッフッフッ
いいぜ、殺ってやるぜ! 相手が何者なのかなんて関係ナッシング!
僕の行く手を阻み立ちはだかろうというなら上等よ。
僕をあまり甘く見るなYO!
○○○
「もしもし、めい?吹雪だけど」
「おう、どうした?何ヵ月ぶりだ?」
「僕のPCが何者かに乗っ取られてるかも……ちょっと見てもらっても、その~、いいかな?」
はいザコ~、翌日、友人の日暮 鳴に電話をかけてました。昨晩粋ってみたもののやはり怖いものは怖いわけでして、即ヘルプですよ。
日暮 鳴は高校時代からの無二の親友で、僕に小説の投稿サイトを教えてくれた人物で本人も『筆活』をしています。
『めい』なんて可愛らしい名前ですが、歴とした男友達で『筆活』では切磋琢磨している良き親友と書いてライバルなのです。
彼はただPCをなんとなく使える僕なんかと違って、システムエンジニアリング?ですか?を生業としている猛者で、こんな問題は彼の、いや先生の手に掛かれば指先ひとつでダウンな訳ですよ。
「さあ、やっちゃって下さい、先生!」
「…………」
「先生?」
「いや~、吹雪さ~、さっぱり内容がわからんのだが。話し端折りすぎ!」
ですよね~、済みません、何の説明もしていませんでした。
「…………という訳なんだよ~」
それから僕はこれまでの経緯を彼に伝えて対策本部を設置したのです。
まあ、僕の家の僕の部屋なんですけど。
「じゃあ、なんだ、つまりこの最後に口汚く罵っているセリフ部分は吹雪が書いたんじゃないと。う~ん、べつにお前を否定したいとか疑うつもりとか、実はヤベェやつなんじゃ?とかとは決して思っていないのだが、俄には信じがたいな」
いやいやいやいや、鳴よ。全然いろいろ思ってるし、「俄には信じがたいな」と言いたいだけだろ、それ!
「まあ確かに俄には信じがたいよなぁ~」
僕も言ってみたかった。
だって、そんなに難しい言葉ではないですけど口語でなかなか言わないセリフですよね?
まあせいぜいの反応は「信じられっかよ」とか「マジかよ」とか「うわぁ…………」とかが良いところでしょう。
最後のセリフは自分の脳内で考えてたとはいえ、ドン引きされてて泣きそうです。
そして週末、鳴に家へきてもらってPCに纏わるetc.を見てもらった結果、なんの問題もなかったのです。
鳴曰く「ハッキングとかサイバー攻撃なんかの類いは、まったくないな。だいだいお前を対象にするなんていう愚かな真似を奴等がするはずもねぇし。リアルにあるとしたら、アカウントの乗っ取りだが、そっちもなさそうなんだよ。因みにPCの故障でもない。あとは、お前の頭の故……イダ!」
殴ってやりましたよ。 フッフッフッ
なんやかんやと有りつつ、このあと二人で考えられることを提案しあい、鳴は帰っていきました。
実際あの不可思議から一週間くらいPCを立ち上げていません。
それと余談なのですが、僕はあの問題の作品の他にも平行して二作品執筆しています。
少数ながらも、楽しみに続きを待って下さっている方たちに早く続きをお届けしたい気持ちは勿論あるのですが、どうしてもビビりの壁を乗り越える勇気が出せないのです。
しかし、PCは立ち上げました。鳴が!
済みません、笑わんといて下さい。
いや、笑って下さい。どんだけビビりなのかと!チキン野郎なのかと!
でも、でもですよ。
皆さんだって、寝た子も気絶する丑三つ時に自分が執筆しているキャラに勝手に話しかけられたら、怖くないですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます