世界の果てで君は何を思う?

唐揚げ太郎

1 抜刀

街が燃える。家は焼け落ち、人々は悲鳴をあげる。


この日、人類は未知の大災害にあった。


「サナ!はやく逃げよう!」


1人の少年が、少女の手を引き、走る。


「どこに?!逃げられる場所なんて、もうないよ。うぅ、パパ、ママ。。」


少女は今にも泣きそうだ。


「心配すんな!お前は俺が絶対に守る!」


次の瞬間、2人の目の前の家が崩れ落ち、2人は瓦礫の下敷きになった。


「クソ!このままじゃ、、」


「熱い!熱いよぉ!!」


(あぁ、ダメか。死ぬのか。)


カケルの意識が遠のく。薄れた意識の中、空を見上げると、そこには“何か”がいた。


(あれは、生き物?)


それが何だったのか分からぬまま、カケルの意識は途絶えた。




ジリリリリリリリリ!!!


「んっ!?」


目覚まし時計が部屋に鳴り響く。ベルを止め、辺りを見渡す。


「夢、か。」


新学期早々嫌な夢を見た。

10年前のあの大災害、思い出したくもない。瓦礫の下敷きになったあと、すぐに助けが来て一命は取り留めたが、未だに体には火傷のあとが痛々しく残っている。


「さ、支度しますか。」


服を着替え、食事を済まし、家を出る。目の前には幼なじみのサナがいた。


「おはよ、今日は寝坊しなかったのね。」


「新学期早々に寝坊してたまるかよ。」


カケルたちは今日から高3、最後の年だ。


「あっという間だったね。今年1年でお別れだなんて。」


「まぁそうだな。」


カケルが少し俯く。その一瞬をサナは見逃さなかった。


「まさか寂しいの?」


サナがにやにやしながら問いかける。


「は、はぁ!?ちげーし!」


カケルはとっさに否定する。


本当は、寂しいのだ。

カケルは昔からサナに恋心を抱いていた。その気持ちを伝えることが出来ず、今に至る。


(今年中には、絶対に伝える。振られたとしても、絶対に!)


カケルは胸の中でそう決意した。


「まぁ、ちと寂しいが、残り1年穏やかに過ごせればなって思ってるよ。」


「なにそれ(笑)」


2人は笑った。



ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!


突然の地響き。

カケルたちの目の前の地面が割れ、崩れ落ちる。

そして地中から巨大な“何か”が出現する。

一見、ただの山にも見える。否、それは山ではない。頭が8つ、胴が1つ、巨大な蛇にもにたその姿。


それは神話における伝説の生き物


【ヤマタノオロチ】


「嘘、だろ。」


カケルは目の前の光景に絶望する。

そう。あれは10年前、カケルたちを襲った大災害そのものだった。


『キュォォォォォォォォォォ……』


山にも似た巨体がゆっくりと動き出す。

このままではあの時と同じ、もしくはそれ以上の被害に見舞われてしまう。


「サナ!逃げよう!!」


カケルはサナの手を取ろうとする。しかし、サナはその手を払った。


「カケル、逃げて。」


サナがそう告げる。その雰囲気はいつもとは別人のようだ。


「何言ってるんだよ!早くしないと巻き込まれる!」


この状況で混乱してしまったのか、さの言っていることがまったく理解出来ない。


刀魂とうこん顕現!!!」


突然サナの手元が光り出す。その手には1本の大刀が握られていた。


「氷剣・カラドボルグ!」


「サ、サナ。それは一体。。」


「私がコイツを食い止める、だから逃げて!」


そう言うと、サナはヤマタノオロチの元へ飛び立つ。


「お、おい!何がどうなってるんだ!」


叫んだ時には、既にかなりの距離があった。

カケルはまだこの状況を理解出来ずにいたが、サナの言う通り、逃げることにした。

どこへ?そんなことは知らない。とにかく安全な場所へ。

カケルは走った。がむしゃらに、振り向きもせずに走った。


「ったく、何なんだよ!」


当たり前に過ごしていたが日常がほんの数分前に壊された。謎の化け物、そして化け物に立ち向かったサナ、一体サナは何者なんだ?物心ついた時から一緒にいた。不思議な所なんで微塵もなかった。なのに、俺の知らないところであいつは一体何をしてたんだ?


カケルの中でいろいろな考えが生まれた。


「いや、違う。」


難しいことは後で考えればいい。今はサナについてだ。本当に1人で大丈夫なのだろうか?

俺が言ったところで何もできやしない。


ただ、、、

昔誓った。今のような災害に合った時、あの時は何も出来なかった。今回もそうなのか?大切な人を見殺しにするのか?

否、違う。


「行かなきゃ!!」


カケルは化け物のいる方へと走り出した。





「ハァ、ハァ。」


どれくらいの時間がたっただろうか。カケルは逃げることが出来ただろうか。


カケルのことが頭をよぎる。


「にしてもコイツ!全然攻撃が通らない!!」


何度も切りつけてはいるが、全て浅く、ダメージにはなっていない。


「くっ、増援がくるまで持ちこたえる!」


サナはヤマタノオロチの正面に対峙し、剣を構える。


氷結大陸フローズン・コンチネント!」


辺り一帯をヤマタノオロチの体ごと凍結させる。


「これなら、足止めくらいは、、」


『キュォォォォォォォォォォ!!!』


ヤマタノオロチの咆哮が鳴り響く。

すると、8つの頭のうち1つが炎を吐き体の氷を溶かしていく。


「そんな、最高の硬度で放ったのに…」


立て続けに別の頭が雷を放つ。不規則かつ大量の攻撃がサナを襲う。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


その場に倒れ込む。剣で防いだため、直撃は免れたがかなりのダメージでまともに動けない。


『キシャァァァァァァ!!!』


ヤマタノオロチがサナを見つめる。

今度は8つの頭が同時にサナを狙う。


「イヤ、、だれ、か。」


全てを諦めた瞬間だった。


「待てぇぇぇぇ!!!!」


叫び声が聞こえる。カケルだ。

そしてサナの前に立つ。


「どう、して?逃げたはずじゃ?」


「決まってんだろ。」


そう、1度は守れなかったあの誓い。


「お前は俺が守る!!!」


覚悟を決めろ、今やらなきゃ死ぬ!俺にだって出来るはずだ!!

カケルの握り絞めた拳が光る。


「それは、まさか!?」


刀魂とうこん顕現!!」


頼む、俺にサナを守る力を、、、


「神剣・天羽々斬あめのはばきり!」


1本の刀がカケルの手に握られている。


「ちょっと待ってろ、1撃でケリつける。」


カケルはサナにそう告げると、ヤマタノオロチに飛びかかった。


「神剣居合……」


あの日の誓いを果たすべく今、目の前の化け物を切る!!!


「蛇切一閃!!!」


その瞬間、ヤマタノオロチは真っ二つに切られ、絶命した。


「嘘、ホントに、、、」


サナが言葉を失う。カケルは振り向いて笑顔で.....


「な!約束は果たせた...ぜ、、」


カケルがその場に倒れる。疲れて眠ってしまったようだ。


「うん、ありがとう........」


涙ながらに、サナは礼を言う。




この後、カケルは衝撃の事実を知らされることになる。

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