第3話 越えたかった壁

 久瑠実はもう1つ夢があった。それは、自分で起業して自分の描いている理想の形を実現させるためにその起業したときにその事業を支えて、一緒に成長するために働いてもらえる人を育てたいという夢だった。


 この夢を描いたのは彼女が周囲から必要とされているという実感を得ることが出来なかったことで“自分は誰から必要とされるのだろう?”という疑念を持っていた。


 理由として、彼女が何かをしようとすると毎回制止され、制止した人から“久瑠実みたいな人に誰が付いていきたいと思う?”と言われてショックだったのだ。


 彼女は小学生の時から上に立つような子供ではなかった。しかし、彼女はいろいろな不満が募っていて、誰もやらないなら自分がやるという考えだったのだ。


 そんな彼女はいつもみんなに見せている顔とは違う顔がこの時に開花するとは誰も思っていなかった。


 彼女がみんなに見せていない顔とは“こども社長”という知り合いの会社でアイディアなどを子供目線で提案するという子会社の社長に就任していたのだ。そして、久瑠実以外にも5人の子供たちが社員として勤務していたのだ。


 出勤日は夏休みなどの長期休暇や下校後の空き時間など柔軟な勤務時間になっており、この6人の社員が大人の気がつかない部分をカバーし、大人の人たちに対して指摘できる関係性を築いていたのだ。


 その結果、彼女が指摘した点を変えたところその商品の売り上げが伸びて、会社の業績が上がっていったのだ。


 しかし、彼女は一時会社に行けない日々が続いたことがあった。それは、以前に製品開発部長さんに彼女が提案したアイディアを全否定されて、彼女がどういうアイディアを出しても突き返されたのだ。もちろん、彼女にとっては他の子たちと話し合って、いろいろな実験などをして導き出した結果なのだが、どうしても部長さんたちには響かなかった。


 その結果、彼女の中で限界を迎えてしまったことで少し休んだ方が良いと判断したのだ。しかし、彼女の真面目な性格が彼女の心労に拍車をかけてしまったのだ。


彼女は“出勤している他の子たちに迷惑をかけてしまう”と心の中で申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


 しかし、彼女が周囲から認められたとは思っておらず、“私が休んでも問題はない“という気持ちも彼女の中で渦巻いていた。


 そして、彼女が体調を崩して3ヶ月後に彼女の事を全否定していた部長が東京から大阪へ異動になり、新しい部長さんが来た。新しい部長さんは前の部長さんとは異なり、まず意見を吸い上げて、検討して、改善するべき点や変更した方が良い点などをきちんと指摘してくれてと彼女に取っては新たな気付きを得られる最高の上司だった。


 そして、彼女は新しい商品の子供向けプロモーションを任され、他の子たちと一緒に話し合っていたのだ。


 そして、彼女たちが出した最終的な提案書に大人の社員たちは驚いた。なぜなら、大人なら敬遠してしまいがちな“子供向け商品を同時開発”という手段を提案してきたのだ。


 この提案を見た瞬間、商品開発課の基山課長は「久瑠実さん、これはちょっと予算外なので、関係各課の社員を集めて検討しても良いですか?」という答えが返ってきた。その理由として“子供向けのプロモーションのスタイルの変化”・“プロモーションするターゲットの年齢層の拡充”などこれまで行ってきたマーケティングとプロモーション活動とは全く違う方向性を打ち出してきたこともあり、社員の人たちにとっては未知の世界であり、新しい挑戦になる事は間違いない。


 社員の多くは彼女がなぜこのプロモーションを社員の人に向けて提案をしたのかという理由を知りたかった。そこで、社員の1人が聞くと“以前に私の友人からある提案があった”と話した。


 その友人というのは彼女が子供企業の社長に就任した時に祝福してくれた幼稚園の時からの幼馴染みだった。その子も違う企業の子供社員として週に1度程度出勤していて、会社内での子供のマーケティングなどを担当していた。その友人が言ってくれたのは“久瑠実ちゃんの会社の商品は悪いわけではないのだけど、視点が子供たちの視点ではなく、大人から見た子供の視点になっているから初めて商品を手に取る子だと商品のイメージを掴みにくくて興味を持ってもらいにくいのではないか?”という事だった。


 確かに、現在のプロモーションはリピーター(何度も買ってくれる人)向けになっている場合が多く、新規のお客さんにとっては理解しにくい部分があるというのが現場から聞こえてきており、以前から改善する必要があるのではないかと声が上がっていたのだが、現場で何とか対処して欲しいという“丸投げ”状態だったのだ。


 そこで、彼女はこれらの課題を次の新作から改善し、子供の視点から提案することで何か得られるのではないかと思った。


 しかし、結果はあまり好転せず、売上なども維持状態だった。そのうえ、これらの結果に基づいた分析からも何か得られるものは無かった。この事が現場から報告されたときは社員と子供たちは頭を抱えてしまった。


 今から超えられるような対策を打たないといけないのだが、現状を考えるといろいろな

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夢への挑戦~2人の絆は永遠に~ NOTTI @masa_notti

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