第2話:私たちの出会い
彼らが初めて出会ったのは中学校入学の時で、最初はクラスも違っていたためお互いに顔を合わせることも会話をすることも全くと言っていいほどなかった。そして、2人が中学2年生になって初めて同じクラスになり、少しだが彼との距離が近づいたように感じた。そして、彼と急接近をしたのは情報の授業でグループワークをしたときだった。そこで一緒に書いて、デザインを描いたのが“最先端のコミュニティビレッジ”というさまざまな人たちが住んでいる小さな集落のようなものだ。
2人はこのグループワークをきっかけにして距離が少しずつ縮まっていった。そして、3ヶ月間同じグループで活動していて,いろいろなものを考えてデザインしていた。
この頃から2人の間に創作意欲が強くなっていて、授業以外にも2人でこっそりと会っていろいろな構想やアイディアを出し合った。ただ、2人ともまだ中学2年生ということもあり、久瑠実と直樹は構想を書くことは出来ても未成年だったため、その先に進むことは容易ではなかった。特に融資を受ける場合には保護者の名義で融資を受けないといけないし、実際に作るとなると会社を創設するか、個人事業主として届け出を出す必要があったのだ。
しかし、両親はこの構想に関しては反対だった。そこで、この構想を両親にも認めてもらうために仲間を集めようとしていた。しかし、当時は彼女の周りに集まっていたのは自分で何かをしようと思って行動するような子たちではなく、どちらかというとやりたいことは周囲に任せておけば良いという考えの人だった。
そうなると、彼女はどんどん周囲から孤立していくことになりかねない。そんなときに幼馴染みから紹介されたのが、同じグループで活動して、たまに会っていた直樹だった。当時、彼は大手企業の社長さんと交流があり、パイプのある父親を持つ中小企業の御曹司で、中学生とは思えないほど顔が整っていて、周囲から注目を集めるような子だった。そんな彼と一緒にこの構想を進めてみたいと思ったが、この構想が簡単にはいかなかった。
それは、用地を購入するための資金を集めるためにクラウドファンディングや企業などに直接プレゼンテーションをしないといけないということだった。なぜなら、直樹の父親も簡単に首を縦に振ってくれるほど甘くはないし、仮にその構想に賛同したとしても成功一択しかないため、失敗すると直樹の父親の顔に泥を塗ることになってしまう。
当時は子供が考えているほど簡単な事はない。という考えを持った企業が多く、仮にプレゼンテーションなどで説明したとしても“子供に社会のことが分かるわけがない”と言われて、多くの企業にそっぽを向かれてきた。そのため、彼女たちが考えている事を毎回否定される度に心が折れかけていたのは事実だろう。手応えがあった企業からもまさかの“融資見送り”になるなど想定外の事態に陥ること、企業から嫌がらせを受けることも多々あった。
その結果、彼女の構想はどこからも受け入れてもらえず、彼女は構想を一旦取り下げて良い高校を目指して勉強したほうがいいのではないか?と思うようになったのだ。これは直樹も同じ考えだったが、どうしても彼らの中には勉強よりも構想を成功させたいという気持ちが先行していたのだ。
そのため、彼女たちが考えたことがうまくいかないと言うことが前提でもこの構想を進めたいという気持ちが強く表れていたことは自分たちの中では十分理解しているつもりだったが、現実はそう甘くはなかった。なぜなら、特に久瑠実の両親は大手企業の役員もやっていたため、父親が新しく1つの物を作ることはどれだけ難しいのか、どれだけ信用できる人脈を作らないといけないのかを身をもって体験していた。その話を聞いても久瑠実としてはどうしても叶えたかったのだ。
その理由として彼女が小学生の時に不登校になった仲の良い女の子がいた事がきっかけだった。その子は優実ちゃんというかなりおとなしく、周囲からも好かれるような子だった。しかし、彼女は学年があがる毎に学校に登校する日数が減り、4年生になると学校に来るのは保健室か登校別室というクラスには入れない子たちが個別の仕切りの付いた机が置いてある部屋でそれぞれのクラスでやっている映像を見ながら授業を受けられる。彼女はそのことが心配で仕方なく、その子を見ていて彼女は何とかしてこの構想を実行に移したいと思っていたのだった。実は彼女が小学校に入学した当初からいじめを受けていて、彼女の他にもいじめられている子たちは多かったが、大半は彼女に向けられて、周囲からかなりバッシングを受けることや嫌がらせを受けて泣き出すなど彼女の心に大きなダメージを受けるような事が立て続けに起きていた。そして、ついに学校に来なくなるということが多くなったのだ。優実は両親が離婚し、お母さんと5人の兄弟・姉妹と一緒に住んでいたが、お母さんは姉と兄に対しては愛情を注いでいたが、末っ子だった彼女のことを好んでいなかったため、彼女の居場所がどこにもなく、このまま行くと本当に家庭崩壊寸前の状態になってしまうのではないかという状態だった。そして、5年生になると彼女は完全に登校分室に所属することになり、クラスには来なくなったのだ。
この時に彼女の同級生は“彼女を潰せた”と確信したのだ。そして、彼女を潰したことでその派閥に対して攻撃がしやすいと思ったのだろう。
しかし、彼女はそんな簡単に折れるような子ではなかった。なぜなら、彼女にとって自分でやり遂げたい目標が出来たことで学校に人間関係を求めることは以前に比べると減っていったからだ。そして、社会に目を向けた事で同じ目標に向かって頑張ると決めた仲間や仲間たちを支えてくれるスポンサー企業が少しずつ増えていったのだ。その中に直樹の父親が代表取締役社長を務めている企業もある。
彼女はこの時素敵な出会いと素敵な人脈を持っている人と繋がれた事でかなり嬉しいチャレンジになったことは言うまでもない。
彼女は14歳で初めて“誰かから求められる事の大切さ”を知ったのだ。もちろん、彼女はこれまでもいろいろな作品や活動で表彰されるなどして実績は十分にあるのだが、そのことで周囲から妬みややっかみを受けてきた過去がある。
そのやっかみや妬みをバネに彼女はどのようなことを言われても彼女はそれらを受け止めて、徹底的に分析し、その言葉を言われた意味を考え、その言葉を超えるように頑張ってきた。その結果、彼女は今まで言われてきたことを反面教師にして、いろいろな事を知るきっかけになったのだ。
そして、彼女は中学生になり、小学生の時に知ったことを発展させていろいろな事を実行しようと思っていたときに同級生に仲の良かった子を奪われた悔しさが彼女をここまで奮い立たせた。
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