第五話 頂上決戦
ユアメリス大陸の南東。ランドルたちの居城から遥か遠く、リバーテイルの尾ひれに位置する王都では、盛大な御前試合が開かれていた。
大陸中の名家を統べる国王。
ライアン・レオンハートが見守る中、有名な二人の兄弟が
国王から見て
「アレが、イーサンか?」
「さようでございます。陛下」
「ふむ、かなり見違える成長を遂げたな」
七年前の面影は一切ない。貴族と言われても疑われるほど、
「久しぶりだな……。リガロ……」
「貴様は救いようのない
イーサンの相手は、リガロ・フェニックス。
彼の象徴たる、赤髪のオールバックと完成された肉体は対峙する者たちを圧倒させてきた。
今回の試合に勝利すれば、王の御前で十連勝という偉業を成し遂げる。長兄に恥じぬ、実力を兼ね備えた人物だ。
「俺様の寛大な慈悲を
その巨体から練り上げられたマナは、まるで火山から噴き出した溶岩の如く、凄まじい質量を帯びている。
それは観客席に控える。マナの流れを知覚できない者ですら、威圧的なプレッシャーとして
「あの時のことを
「現に貴様は生きて、ここにいる。それは俺様が殺さずに、見逃してやったからだろう」
二年前。
リガロは
その中でも特例で狙われなかったイーサンは、他の兄弟が殺されていくのを見過ごせず、両者の仲に入って話し合いの解決に臨んだ。
しかし、リガロはこれを
なんとイーサンの護衛たちを惨殺するばかりか、見せしめにイーサンへ危害を加えた。
そして、リガロはイーサンを完膚なきまで叩きのめした後、彼の両眼を奪い取ってから声帯も破壊し、辛うじて命だけを残して立ち去って行ったのだ。
「お前は兄弟どころか、もはや人じゃない」
イーサンは長い髪を一本に束ねて、その
「ほざけ!」
リガロのエゴは、絶対的な『
自らの身体に流れるマナを闘気に変化させ、それを物質エネルギーとして、相手の身体に送り出して破壊する。単純明快な奥義である。
「絶対的な戦力差を思い知るがいい!」
「もう十分に、思い知ったさ……」
イーサンは心の中で『
彼の身体からマナと思わしき粒子が流れ出て、速やかに周辺一帯へ分布されていく。すると、地面に敷かれたコンクリートの土台を割いて、その隙間から草花が生い茂り始める。
「私はお前を討つ為に……。この二年間……人里離れた場所で修行した……」
リガロの猛攻をのらりくらりと、巧みに
「なんだ、この気色の悪い感覚は……!」
リガロは初めての感覚に戸惑いを隠せない。
そもそも相手を点ではなく、面で捉えられるような広範囲の攻撃も交えている。にも関わらず、イーサンに擦り傷一つ与えられない事実。
この草花たちは何かの役割を果たしている。だがその先に続く、何かの要領をいつまで経っても得られず、仕舞いには
「えぇい、まどろっこしい!」
リガロは球体のエネルギーを持ち上げ、思い切って地面に振り下ろした。何十メートルも上空まで
「そうか、そういうことなのか!」
「たとえ気付いたところで……もう遅い……」
イーサンはリガロの背後を取って、その腰に携えていた鋭利な刃物。東洋の刀と呼ばれる一振りで、リガロの首を勢い良く斬りつけた。
「無駄なこと!」
しかし、惜しくも会心の一撃に至らず、リガロの丸太のような首は、軽傷で済んでいる。
全身に纏わり付く闘気を用いて、首一点のみに防御を堅めることで防ぎ切ったのだ。
「やはり、長引くか……」
イーサンは付着した血液を振り落とし、煌びやかな刀を手際良く鞘に収める。
「ふふふ、ははははは! 貴様の能力を見破ったぞ、イーサン!」
リガロの叫びは、果たして真実であるのか。
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