リアル寄りの「異世界生活」を楽しめる

 この作品を読んで、主人公の能力や性格、世界観、セトとの関係性、ストーリーが個人的によいと思った。
 特に「主人公が強すぎない」というのはかなり大事なポイントで、やっぱり読者というのはかっこいい主人公を好むものであるけれど、強くなっていく過程に対して感情移入しやすくなるものだし、「主人公一人いれば他のキャラいらない」みたいなことがあると、長く作品を愛せないと思う。だから圧倒的な強さを持ちながらある程度の制限を持ち、他のキャラの魅力を引き出しつつ、自身も無限の可能性を秘めている主人公に仕上げているのは、作者の優れたバランス感覚であると思う。
 ただ「ストーリーの進みが遅い」というのは、わりとこの作品を読んだ皆が感じる感覚ではないだろうか。私自身読んでみて「このくだりいる?」と感じる箇所が多々見受けられたが、それが現実世界であればむしろ当然だし、あえて省略せずにキャラクターたちと同じ時間経過を感じながら「実際に自分が物語の中で生活しているような」気分になれるところでもある。また作品自体が長期連載であるために、あえて同じことをくどく説明している部分もあると思うが。
 個人的にはこれからを期待している作品ではあるのだが、アニメ化に関してはかなりじっくり検討しつつ慎重に一考する必要があると思う。