青ちゅんのリアル

スノーだるま

青ちゅんのリアル


 今日は学校の卒業式。

 

 校門の両脇に植えられた桜の木の下では、卒業証書を手にした学生たちが、涙ながらに青春の地に別れを告げて、また新たな世界へと旅立っていく。

 

 一方その頃、桜の木の上では、沢山のスズメのカップルたちが並んで枝に留まって、愛だの恋だのピーチクパーチクちゅんちゅんちゅちゅちゅんと騒いでいた。


 そんな中、オススズメのリッキーは、彼女もできずに一羽枝に留まって、はらりと落ちる桜の花びらのように過ぎ去ってしまった青春を前に頭を抱えていた。


(お、終わっちまった……俺の青春が……誰だよ、普通に生きてれば彼女の一羽はできるとか言ったやつ。現に俺の隣には、彼女がいないじゃないか!)


 すると、一羽のスズメがやってきて、リッキーの隣に留まった。


「あらあら、一羽で過ごしてる惨めなスズメがいると思ったら、リッキー、あなたじゃない」


「お前は……!」


「どうやら、恋人もできずに随分と寂しい青春を送っているようねえ」


「そ、そういうお前はどうなんだよ」


「私? そりゃあもう、誰かさんと違って、たくさん告白されたわよ」


(そうだった……こいつは何故か異性からモテるんだった……)


 悔しそうにリッキーはそっぽを向いた。


「なら、当然彼女も出来たんだろ? こんなところで油売ってないで、そいつのところに行ってやればいいじゃないか」


「そのことなんだけど……」と、相手のスズメはモジモジしながら言った。「誰も相手がいないっていうなら、私がアンタの彼女になってあげても……い、いいわよ!」


「は?」


 と、リッキーはきょとんとした。


「いやでもアンディ、お前オスじゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青ちゅんのリアル スノーだるま @oliver0324

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ