第3話
「はぁ~~」
一つの部屋に明日里の深い、それは深いため息がこぼれた。
「明日ちゃん、どうしたの?」
ソファーに寝そべっていた明日里は書斎に座っていた夏奈の質問に答える。
二人がいるのはさきほど用意された部屋である。
「いやまずは魔法の技能についてなのよね…。
私は近接物理攻撃と生産職についての魔法技能が高くて…」
「私は中遠距離タイプの攻撃やサポートそして戦略や製図系の技能が高くて生産職以外の魔法技能が高いんだけど、それはこの世界でもチート級なんだっけ?」
夏奈の言葉に明日里は頷く。
「そう、あと私達の知識、元の世界の知識とここの魔法が合わさったら色々とやばいことになる」
「ここの文明は元の世界に比べたら文明レベルは月とスッポン状態だからね。ちょっとずつ文明を進めていかないとこの世界のパワーバランスが崩れかねないからね」
それに明日里は同意しながらため息をついた。
「まあでも、一部分に関しては一気に文明を進めた方がいいと思う」
「政治機関についてだよね?それなら案だけなら考えたよ。それと、王国で制定されている主な法律にある修正が必要な箇所をリストアップしておいたよ」
夏奈の言葉に寝そべっていた明日里はガバッと体を起こし、
「もうできたの!?」
と驚いた。その顔に夏奈は得意顔で言った。
「一時間あればそれくらい簡単だよ。案のほうはただの模倣だし法律だってたった百項くらい今のスペックだったら普通にできるよ」
その言葉に明日里は納得した。夏奈は全教科学年トップの成績をであり、その知識は豊富である。そこで明日里は夏奈の表情が険しいことに気付いた。
「どうしたのナツ?」
その質問に夏奈が答える。
「簡単に言うと法律のほうには殆ど改善点はなかったの。でもこの国は完全に腐敗しかかってる。その意味分かる?」
「……殆どの貴族が腐ってるのか」
「そう、まずはそれを一掃する必要があるんだよ」
それを聞いた明日里は渋い顔をした。
「でもその一掃で、重鎮がほとんど消えるのが不味いのよね」
「大体芋づる式でどんどん判明してくるからね少しずつ狩ってく?」
夏奈の考えに明日里は首を振った。
「一見効果的に見えるけど時間を掛けるとそれだけ相手に準備する時間を与えてしまうから得策ではないと思う」
「それじゃあどうすればいいと思う?」
その時、唐突にドアがノックされた。
『アスリ様、ナツナ様、宰相様がお越しです』
声の主は彼女たちの傍付きメイドだった。
「通してください」
明日里が答えると宰相が入ってきた。
「この部屋にご不満な点はありませんでしたか?」
「全然ないですよ宰相さん!」
宰相の質問に夏奈は笑顔で答え、書類を渡す。
「これはこの国の政治機関の新しい構造構想です。こっちはこの国の法律の改正案です」
「おお、こんな短時間でここまでやってしまうとは流石は転移者様だ」
夏奈の手際よさに宰相は感心していた。
「ちょうどいいところに来ましたね宰相様」
「ジェルマンで構いません」
そこに夏奈が口をはさんだ。
「じゃあ、ジェルさんって呼んでもいい?」
「こらナツ!勝手なことしないの!」
「いいですよそれくらい、それより何か聞きたいことがあるのですか?」
ジェルマンは優しい人らしい。明日里は夏奈の言葉に脱力しながら気を取り直して聞いた。
「じゃあジェルさん、私達のことはどれくらいの人が知ってる?」
「あの場にいたものとここにいる二人のメイドのみです」
明日里の問いに間髪入れずジェルマンは答える。
「それでは私達二人と二人のメイドはこれからしばらくの間冒険者として王国中を回ります」
「はい、……え?」
流れで頷いてしまったジェルマンだったが、今の言葉に彼はびっくりしていた。
「それは本気ですか!?」
「本気だよ。今なら行動の自由はいくらでも効くだろうし、誰にも目をつけられてない。そして、新しい人材の発掘もできるからね」
「この国のことも知っておきたいし、なによりアスちゃんは冒険者をやってみたいと思ってるからね!」
唐突の夏奈の暴露により、明日里はとても慌てた。
「ナツ!余計なことを付け加えないの!」
「でも事実だよね?」
「うぅ……」
しまいには顔を真っ赤にして唸ってしまった。
しかし、ジェルマンは彼女達の案には反対の様だ。
「ですが、とても危険ですしまだこれから考えていただきたいことが山ほどあります!」
それでも二人は譲らない。
「危険があることは百も承知だよ。そのためのメイドさん二人と一緒がいいんだもん」
「ジェルさんが用意してくれた二人のメイドさんは絶対的な信頼を置けるでしょ?その理由としてはそのメイドさん忠誠心の高さもあるけどの戦闘能力が高いから…でしょ?」
二人に図星を当てられてしまったジェルマンはこめかみをもみほぐし、溜息を吐いた後、
「はぁ~、分かりました。王様にはこちらから話を通しておきます。メイド二人には長期休暇ということにしておきます」
「ありがとう、ジェルさん。服装や装備のほうは普通の初心者冒険者って感じのにしておいてお金のほうもあまり多くしないでほしいな」
「分かりました。明日の日が明ける前までにはにはもう出発するようお願します」
「メイドさんのほうも急な話だけどこれからよろしくね!」
「わかりました。これからよろしくお願いします」
こうして二人の異世界人と二人のメイドが冒険の旅に出るのだった。
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