第3話 レルトside
俺には同い年の婚約者がいた。
名はマルリ=ローレス
どうやら聖女の娘らしい。だが、正直に私にとって聖女の娘だとかそういうのはどうでも良かった。
実際、私は聖女様の事を覚えていないし聖女様が何をしたのかも知らないのだ。
それに、知りたいとも思わない。
マルリと私が婚約したのは10歳の時だ。
婚約のために会って思ったことは、[つまらない]ただそれだけだった。
10歳にして大人をも超える魔力を持ち、あまり開かない口を開けば10歳とは思えない大人びた事を言ってばかり。
私の前で笑うことも泣くこともなくまるで人形のようだった。
そして、既に人生を諦めているようだった。
大きくなってもマルリは変わらなかった。
魔法学院のテストで全教科満点をとっても決して喜ばず真顔で私に伝えにきた。
社交会では、笑顔で接して入るものの心から笑ってはいなかった。
まだ3歳だった頃の無邪気で、夢や希望で溢れた素敵な笑顔を見ることはできなかった。
そこで私は、マルリに婚約破棄を突きつけてみることにした。
しかも、女を横に座らせながら。とはいえ、私にはマルリ以外に女などいない。
だから顔立ちが女のような男を呼び、演技してもらった。
きっとマルリにとってはショックだろう。
きっと抵抗してくれるだろう。
そう思い、俺はマルリに婚約破棄を突きつけてみた。
だが、マルリの返事はあっさりしていた。
「そうですか、承知しました。では、お幸せに」
決して顔を変えることなく淡々と。
ショックだった。だが、どうしてかはすぐに理解できた。
会うたびに悪口を言い、事あるごとに彼女を否定していたのだ。そんなの嫌われるのは当然だった。
私は、自分のやった事の重大さに気づいた。
私は、彼女に非がある訳でもないのに一方的に婚約破棄を突きつけた。しかも、理由はどういう反応をするかという興味だけだ。
これから一国の王となるものとしてとんでもない事をやってしまった。
私は、すぐさま父である陛下に自分がやってしまった事を伝えた。
陛下は呆れ、ただ黙るだけだった。
私は貴族としての力を剥奪された。
そして、獣化の呪いをかけられた。
顔は化け物のようになっていた。
それでも、私の罪は許されるものではない。
後日、マルリが貴族の力を剥奪され公爵家から追放された事を知った。
私は彼女の人生をめちゃくちゃにしたのだ。
もう、私は何をしたって彼女に償う事は出来ない。
せめてこれ以上彼女の人生のめちゃくちゃにしないように私は裏で支えなければ
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