第15話・シュガラフ帝国皇帝の求婚
「頭をお上げ下さい。陛下」
「許してくれるか? アリーダ王女」
「許すも許さないもないです。もう私達の婚約は解消されてなかったことになりましたから」
「では改めて申し込みたい。あなたを我が妻、いや皇妃として迎え入れたい。駄目だろうか?」
「……!」
その言葉に皆が息を飲む。両親やキランは目を見張りオリティエだけが抗議の声を上げようとした。
「アダルさま。何を言われますの? あなたさまには──」
「オリティエ。黙れ。余はアリーダ王女に聞いているのだ」
シュガラフ帝国皇帝アダルハートには後宮があり、沢山の側妃達がいると聞いていた。でも皇帝アダルハートはその女達には関心がなく、一人の公妾に夢中になっている事はゲルト国にも伝わるぐらい他の国でも有名な話だ。
アダルハートはその公妾を寵愛しているので、そのうちその公妾を正式な妻=皇妃として迎え、後宮は解散されるだろうと目されていたのだ。
その本人が何の冗談か私を皇妃にと言い出した。公妾の妹であるオリティエは姉の行く末が気になったのだろう。慌てていた。
「ではシュガラフ帝国皇帝陛下。私の発言の自由をお許し頂けますか? もしも私の言葉で不愉快に思われましたら罰は私だけにお願い致します。この場にいる者達には咎が及ばないようにお願い致します」
「アリー。駄目だ」
キランが止めようとするが、私はそれに放っておいて欲しいと首を横に振った。
「約束しよう。アリーダ王女の発言で余が機嫌を損なうことはない。それによってこの国や、王女を罰する事はしないと神に誓おう」
「では申し上げます。私をこのような状況に追い込んだシュガラフ皇帝を信じる事が出来ないので、あなた様の妻にという話はお断りさせて頂きます」
「なぜ断る? そなたにとっても悪い話ではないと思うが? そなたは見目の良さにしか関心がなく、盛りのついた猫のように欲情を隠しもしない下世話な女とは違ってしっかりした女に思えたが?」
「買いかぶりすぎですわ。私は狭量にも個人的にあなた様をお恨み申し上げております。あなた様の横槍によって未来の王妃の座を失ったばかりか行かず後家となりました」
「おやおや。あなたは随分と自己評価が低いと見える。ゲルト国の女勇者と呼ばれている女性に余が興味を抱いたとは思わないのかな?」
アダルハートは平然としていた。そしておもむろに立ち上がると私のすぐ側に来た。
「あなたのような武芸に秀でた女性を余は求めていた。余の周囲には男に媚びることでしか身を立てることを知らない女が多すぎて、あなたのような女性が現れることを心待ちにしていた」
跪いてこちらを乞うように見つめられた。
「どうか余の皇妃になってはくれまいか?」
見つめ合っていると、皆が気を利かせて退出して行く。アダルハートと私は二人きりでその場に残された。私は皆の気配が感じられないのを確認してから聞いた。
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