第12話・王城からの知らせ


「アリーダ。今までどこに言っていた?」

「……散歩だけど。早いのね? キラン」


 ルーグと小屋で一晩を明かし、離宮に朝帰りすると思いがけない人が玄関先で待っていた。


「昨晩、あれからきみの様子が気になって部屋に行ったんだ。そしたら留守だった」

「もしかして夜這いする気だったとか?」


 茶化していったのにキランは図星だったようで黙った。


「悪いけど私はあなたに興味はないわよ。それにあなたなら他に探せばいくらでもお相手は見つかると思うけど?」


 私の場合は相手となりそうな男性は既婚者になっているので無理だけど、キランの場合は王城周辺で悪評が広がっているので、その噂が広まってなさそうな地域のご令嬢を妻に迎えるか、他国から王女をもらい受ければ問題ないはずだ。

 変わり者の王女の夫になりたがる他国の王族はいないとしても、キランほどの見目があればその容姿に惹かれて、彼の妻にならなってもいいと思う王女、もしくは高位貴族令嬢はいるかも知れない。

 その望みは捨てなくても良いのではないかと言えば彼は渋った。


「きみはそれでいいの? このまま嫁ぐことも出来ずに行かず後家と指さされて生きて行くつもり?」

「ええ。一生、この小離宮で暮らしていても何の支障もないわ。結婚は望めないかも知れないけどここでの暮らしは快適だもの」

「男でもいるのか?」


 キランは怖いほど鋭い眼差しを向けてくる。なぜ私に係わりあおうとするのだろう。もう婚約解消したのだから二人の仲は、ただの従姉弟同士でしかないのに。


「何それ。私とあなたはもう許婚でもなんでもないでしょう? そういう言い方は止めてくれる? 不愉快だわ」

「ごめん。僕には偉そうにきみに言える立場でないのは分かっている。ただ……、王女として変な噂が立つような事は避けた方が良いかとは思う」

「あなたがそれを言うの?」


 キランは気まずそうに目を反らす。言えば言うほど自分の立場が悪くなることは自覚しているようだ。だったら言わなきゃいいのに。


「あのね、キラン。言わせてもらうけど……」

「殿下。殿下──っ」


 深いため息を漏らしたとき、キランの侍従の一人が慌ててこちらに掛けて来た。


「どこにいらしたのですか? お捜ししました」

「何事だ?」

「たった今、王城より知らせが入り──」

「オリティエからなら無視していい。あれは我が儘すぎる」


 侍従の声を遮るようにキランが手を横に振れば、侍従は違いますと声を上げる。キランはオリティエとあまり上手くいってないみたいね。彼女の名を持ち出しながら不快そうに眉根を寄せていた。


「いえ。オリティエ様からではありません。陛下より至急戻るようにと知らせが入りました」

「どうした?」

「シュガラフ帝国からの使者がみえたそうです」

「なに?」


 その知らせに思わずキランと顔を見合わせちゃった。別に意気投合した訳じゃないのに。そしてその知らせにより私はキランとの帰城を嫌々果たすことになった。

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