小学⑥ に、んたいの恋バレ

 おは、こんにち、ばんは、皆さん。

 ここまでお読みくださり誠にありがとうございます。

 小1から始まったこの話も気付けばこの春から小6になります、オレ。あんなに気弱な可愛いショタっ子だったのに最近は毒づきはじめちゃって、皆さんついてこれてます、大丈夫?

 おまけにタイトルのサトちゃんも居なくなっちゃって最早オレの成長日記に成り下がってるし。

 なんか、ごめんなさいね。

 でも、もう少しお付きあいください。


◆ ◆ ◆


 さて、ここのところサトちゃんの〈味噌汁通信〉とけんちゃんやアッキーとの絡みばかりで自分の作ったものをお見せしてなかったなぁとやっと気付いたので、今日は張り切って味噌汁を作りますよ、いえーーい!


 先ずは、我が家の冷蔵庫をご紹介。

 冷蔵室は観音開きで三人家族には広めの室内。ここには余り入れないのでわりと空きがあるけど、扉には調味料がみっちり。油もポン酢もみりんも醤油の小袋も全部ここ。

 その下の列には製氷室とソフト冷凍室が半分ずつ。小分けにした肉や魚は主にここ。

 それから下は大きな冷凍室と野菜室が一室ずつ。どちらも基本パンパンに入ってる。

 実はここだけの話、この冷蔵庫と肩を並べるのがオレの目標。この前測ったら180㎝あった。ちょっと高すぎかな?

 だってね、今のオレには冷蔵室の一番上はおろか二段目の棚の奥に何が入っているのかさえも下から透明板越しでしか見えないっていうのに、お父さんは何食わぬ顔でサッと取り出してるんだよ?そんなのを見せられたら、これは絶対に!って思うじゃない。

 けんちゃんには抜かれてるからアッキーには負けられないし。正直そこに尽きるんだけどね。


 話が逸れちゃった。

 では改めて、野菜室には何が有るのかな。週半ばだから半分は消費してるはずだけど。

 ふむふむ、まあまあのみちり具合だよ。

 何が有るか知りたい?

 根菜、葉物、茸、サラダ系、薬味、緑黄色に濃淡色が満遍なく、ちまーっと使い残されてる。バランス良い献立作りの証拠かな。

 お母さん、いつもありがとう!

 因みに昨日は、大根とは違うホロホロさとふわっと広がる甘さが後を引くカブとざく切りネギの味噌汁だったんだよね、どうしようかな。

 鍋使用か即席か。

 時間をかけずに出来るのにしようかな。


 ゴソゴソゴソ。

 ふふふ、こうして野菜室を漁っているとサトちゃんと互いに言い合いながら作ってた頃を思い出す。寂しいとかじゃなくて懐かしいってやつね。一年も経てば感傷的にはならないよ。

 引っ越してからのサトちゃんの味噌汁はいつも具沢山で、チラッと見える他のお料理も我が家以上に野菜たっぷり。健康を考えた誰かが裏で糸を引いてそうな雰囲気だな、とお父さんが茶化してたっけ。


 さて、冷凍庫も見ようかな、ふむふむ。

 そうそう、聞いてよ皆さん。お母さんってばオレの包丁レベルが上がってきたらあっさりと色々な切り方しなくなったんだよ、酷くない?楽して作れるのが醍醐味なのにさ。だから最近の冷凍野菜は葉物かキノコしかないんだ。

 まぁ、仕事してるお母さんの手間をかけさせなくてもオレがやればいい話だから文句言っちゃいけないね。


 よし、決めた、今日は変化球でいく。

 ゆるゆる白ご飯、じゃなくてリゾット(仮)で証明されたあの組み合わせで。


 ①鍋に一人分少ない湯を沸かし、粒だしでプックリとしたさやえんどうとたっぷりコーンを茹でる。

 ②足りない一人分の牛乳を入れて、吹き零れないようにひと煮立ち。

 ③火を止めて味噌を解いて出来上がり。


 わは、簡単すぎ!

 サトちゃんのゴロゴロ具沢山から色味と栄養を意識した、オレ特製『ミルク味噌スープ・さやえんコーンver.』。

 味見をすれば、シャッキりコーンの甘みとさやえんどうの春めく青さがミルクのまろやかさと相まって。

 うん、悪くないだろう。


 ここまでやってきて思ったけど、こうして独り言を頭に浮かべながら作ると〈やってみたユーなチューバー〉っぽくて楽しいね。

 ぼっち作りに飽きたら、また双子の弟妹が待つけんちゃん家に行くか、こうしてモチベーション上げながらやってみようっと。


 ◆ ◆ ◆


「まあちゃん、テーブルを拭いてくれる?」

「了解」

 ご飯を作るお母さんの手伝いをしていると、妙にニコニコした顔が気になってくる。いや、ニヤニヤの方が合ってるかも。鼻がふくふくしてるし。

「何をそんなに嬉しい顔してるの?」

 オレよりちょっと上から降り注ぐ楽しそうな視線が、何故か居心地悪くて仕方が無い。

「何なの、言いたいことは言ってよ、超気になる!」

「ウフフ、まあちゃん、隠し事ない?」

 ……はい?

「この間けんちゃんのお母さんと話したの」

 それは、もしかして。

「アッキーくんのお母さんから聞いたって。どうして秘密にするのよ、酷いじゃない、しかも半年近くもだなんて。ねぇ、カノちゃんはどんな感じの子なのかな?」

 うわぁ、バレた!

「同じクラス?合気道の子?委員会が同じとか?今まで一緒になったことは?お母さんが知ってる子?元気な感じ?大人しいの?何て呼び合ってるの?やだぁ、キュンキュンする!」

 いや、お母さんが胸キュンすることじゃないし、どれだけ聞きたいのよ、全く。うんざりするような追及に、いつだったかサトちゃんと男同士の約束を交わした時を思い出す。

 ……確かに、バレるとうるさい。

「シュウジ君にもお知らせしなくちゃね、男同士で相談事も有るでしょう?ウフフ」

 嘘でしょう!

 ガチャガチャ、パタン。

「あ、噂をすればよ、おかえりシュウジ君、聞いて、まあちゃんにねぇ!」

「もう、頼むからやめてよーー!」


 この夜の食卓はお察しの通り地獄そのものだった。けど、やられっぱなしは悔しいので、暴れながらも絶対に口を割らないお母さんを押さえ付け、お父さんから二人の馴れ初めを無理矢理聞き出してイーブンにしました。

 ただでは起きないよ、オレ。

 因みにお父さんの話によると。

 バイト先が一緒でお父さんが一目惚れしたけど進展もなく時が過ぎ、会社訪問で担当だったお母さんに再会して二度惚れし、無事入社してクールにアタックし続けてやっと許可を貰って婿入りに至ったそう。

 えぇぃ、やっぱりどうでもいいよ!

 聞かなきゃ良かった、親の馴れ初めなんて恥ずかしいこと、この上ないよ!


◇ ◇ ◇


「姉ちゃんたちにバレたってよ、良くこれまで隠しきれたよな」

「血は争えないね」

「俺は隠し事はしない主義だが?」

「先にニヤニヤしたり泣き崩れて顔に出る?」

「そうそう、で、そのギャップが魅力」

「度が過ぎると笑えないと知りましょうよ」


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