第14話 雪原にて (かつての投稿時テーマ 白色)

(そろそろ、おふざけ怪談を入れたくなりまして。白色がテーマだった時には、三作ともおふざけ怪談だったのですよね。この話にはお下劣があります)


 その朝は、とても良く晴れていた。

 前夜、しんしんと降り積もった雪が野原を真っ白に変えていた。

一片の窪みすらない雪原に、五組の足跡が伸びて行く。

 足跡の作り主は少年たち。年の頃は十歳くらいだろうか。声高に語りあっている所を見ると、クラスメートか幼馴染み言ったところだろう。

 原っぱのほぼ真ん中まで歩みを進めた所で、彼らは横一列になって立ち止まった。

 列の左端に立った少年が、他の四人を見やり、口を開いた。

「じゃあ、俺から」

 彼はおもむろにズボンのファスナーを下ろすと、可愛らしい一物を引っ張り出した。

「いくぞぉぅ」

 先から勢い良く小便が飛び出した。

 少年は両手で股間のシンボルをコントロールし「あ」「い」「う」という字を、続き文字の形で書いてく。「う」が終わった辺りで、小便は急速に勢いがなくなり、「え」は半分くらいまでしか書けなかった。

 それを見た右隣の少年が、哀れむように様に言った。

「何だ、その程度か。

 じゃあ、次、俺な。見てろよ」

 彼は、ズボンとパンツを膝の辺りまで下ろすと、背中を大きく反らした。手に持った一物の先端を真上に向けた。

 口を真一文字に結んだ彼は、勢い良く小便を宙に放った。

 発せられた液体は、高々と舞い上がり、描かれた弧の天辺は少年の背をゆうに超えていた。彼は、それを保ちながら、「あ」から「お」までを見事に描き切った。最後まで、小便が描く弧の高さは変わらなかった。

 事が終わると、彼は自慢気に周りを見渡した。左隣の少年が悔しそうにほぞを噛んでいた。

「次は僕だね」

 真ん中の子が、放出の体勢に入っていた。

 構えは至って普通だった。

 ただ、右手でシンボルの先を摘み、顔を真っ赤にして耐えている。

 やがて彼は、えいっとばかりに、手を離した。

 彼の小便は、そのまま七メートルほど先の雪面に達して、うがった。そこから、徐々に流れの勢いをゆっくりと弱めながら、足元へと線を引く。そして、最後に腰をくいっとひねり線を曲げた。出来上がったのは、長身の「し」だった。

 最後の曲がりが上手く行ったことに、少年は嬉しそうだ。

「すっげえぇぇ、よくあそこまで飛ぶなあ。僕には出来ないや。僕は、足元に書くよ」

 四番目の子は、そう言うと、ズボンからちょこんと頭だけを出した物の先に、手を添えると、ちょろちょろちょろと細い流れを放った。時折、意図的に止められもした。出来上がったのは「薔薇」。

「少し歪んだけれど、上手く書けた。よし」

 満足そうな笑顔だった。

 四人の行為を見ていた最後の少年が、ぼそりと言った。

「じゃあ、われは皆のすべてを変えてやろう」

 言うが早いか、童は小便を放つ。

 その流れの高さはゆうに十メートルを超えていた。届いた先までには三十メート以上の距離がある。

 そして書き始めた文字は「寿限無寿限無

五劫の擦り切れ……」

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