第43話 リリアーナ王国へ到着


 少し早めに起きたが、全員起きていた。

 しばらく会えないかもしれないから、一緒に朝食を食べるのだそうだ。朝食は昨日のうちに作って備え付けの魔道具のアイテムボックスへ入れておいたそうである。

 食事を取り、挨拶をして、昨日の場所へ転移した。


 すぐに、スピカに乗せてもらい走り出す。

 ツキカリさんとヌガさんを助けに行った時ほどではないが、普段乗せてもらっているときの倍くらいの速さで走っているのでしっかり捕まっていなければ振り落とされそうだ。こんな時なのに、ぎゅっと押し付けられたアーニャの胸が気になってしまう。さすがに、ちょっと怖いのかかなりの力で僕にしがみついている。

 正直、少し痛いくらいだ。

 ただ、その甲斐あって明日には森を抜けそうだ。

 森を抜けたらリリアーナ王国である。森が国境になっているのだ。地球の国境ほど厳密ではないので境目はどこだか分からない。


 索敵で調べると、さすが王都だけあって、王都へ向かう街道は結構人の往来があった。街道に出るのは避けて川沿いなどの走りやすそうなルートを選んで王都まで急いだ。




 テントで3泊、4日目で、王都に到着した。

 王都へ入ったら神殿へ行くことになっていた。

 スピカが一緒なのですぐにリリエラ様の所へ通された。


「初めまして。アサヒ・アカイです。」


 手紙のやり取りはしていたが、直接会うのは初めてなのでそう挨拶した。


「やっと会えましたね。アサヒさん。リリエラです。スピカもご苦労様でした。」


「いえ。ご無沙汰していました、リリエラ様。」


 気が付けばアーニャが平伏していた。

 どうやら、リリエラ様を崇めているようである。


「アーニャさん。顔を上げて下さい。大袈裟ですよ。」


「無理ですニャ。ご勘弁くださいですニャ。恐れ多すぎるのですニャ。」


「アーニャさん、この国の人々にそこまでする人などいないのですよ。もとはあなたと同じただの人だったのですから。さあ、顔を上げて。」


「でも、でもですニャ・・・」


「ほら、アーニャ、顔を上げて。」


「そうですよ。話が先に進みませんよ。」


 僕とスピカもアーニャが顔を上げるように促した。

 スピカは安定して身も蓋も無いことを言う。

 アーニャに対してというのは珍しいが。


「分かりましたですニャ。」


 やっとアーニャが顔を上げて立ち上がった。

 僕の後ろに隠れるようにして、僕の手をぎゅっと握っている。痛い。


「では、皆さんがいる王宮へ行きましょう。」


 リリエラ様はそう言うと、歩き始めた。

 神殿は、王城の隣にあった。王宮は広いし、神殿も王宮ほどではないがそれなりに広いので結構歩きそうである。


「王宮! 無理、無理ですニャ。」


 アーニャがパニックである。手を握っている状態から、腕に縋り付いている状態に移行した。


「アーニャ、大丈夫だから。僕が一緒だよ?」


 なんとか落ち着かせようと試みた。

 アーニャは僕の腕に縋り付いたまま、僕を見上げてウルウルした目で僕を見つめた。


「ううぅ、分かりましたニャ。」




 王宮に着き、案内された部屋は宿泊用の部屋だった。

 どうやらクラスの皆はダンジョンなどに出かけているそうだ。

 誰一人王宮にいないのは、牧さんの事で全員が何かしらしているからだそうだ。

 僕たちはしばらく待つことになった。

 ただ、僕とアーニャにはそれぞれ1人用の部屋が用意されていたが、アーニャが全力で拒んだため2人用の部屋を用意してもらう事になった。

 今から、クラスの皆の反応が怖い。


「アーニャ、しばらくこの王城に住むことになると思うけど大丈夫? 無理なようならリエラの屋敷で待っていてもいいんだよ?」


「大丈夫ですニャ。すぐに慣れるのですニャ。離れるのは嫌ですニャ。」


 まあ、予想通りの答えではある。アーニャのストレスにならなければいいのだけど。

 クラスの皆と仲良くなれれば何とかなるだろうか。女子もいることだし、仲良くなった女子と同室になれると良いのだが。


 そういえばスピカはずっと僕たちに付いてきている。リリエラ様に会いに行かなくていいのだろうか?


「スピカ、リリエラ様に会いに行かなくていいの? 久しぶりに会ったのでしょ?」


「問題ありません。このくらい近いと念話で話すことができます。準備ができたら私に、リリエラ様から念話が来るはずです。」


「なるほど。」


 話はできるようだ。対面して会わなくていいのか気になったが、会いたくなったらちゃんと言うだろうから気にしない事にした。

 これから毎日のように会うのだろうし。


 ウルスラさんに無事に到着したことを知らせ、後はワールドマップで王都の辺りをチェックしたりして時間をつぶしていると、スピカからそろそろお呼びがかかると言われた。

 リリエラ様から念話が来たようである。

 ほどなくして、僕らを呼びにメイドさんが来た。

 後をついて行くと、どうやら食堂らしい気場所へ案内された。

 食堂には豪華な料理とクラスメイト達が待っていた。



____________________

月曜日まで休もうと思います。

展開を変えてしまったので2,3話先からどうするか困っています。

しばらく先にどうなるかは決まっているので、どうやってそこにたどり着くか少し考えます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る