第41話 一区切り


 村を拡張することになった。

 猫人族以外の人もこの村に定住するようだ。


 僕は家を建てるための木材の確保を手伝っている。


「アサヒ、武器が役に立ってよかったニャ。」


 カロンさんがいい笑顔で僕に笑いかけながら言った。悪気はないようである。


「できれば武器として役に立ってほしいのですが・・・」


 僕は現在、ミスリル製のバトルアックスで木を切り倒している。かなりいい武器のようで一振りでスパッと木が切り倒される。

 そう。木は切れる事が判明した。

 木だって生物だと思うのだが、植物は切れるようだ。

 確かに、植物が切り倒せなければ、薬草を採取することもできなかったはずである。

 木が切れることで、より一層宝の持ち腐れ感が高まった気がするのは気のせいだろうか?


「そういえば、マーニャちゃんは連れ去られるには歳が若すぎる気がするのですが、なぜ攫われたのですか?」


 よく考えたら、奴隷狩りは成人した獣人しか攫っていなかった。マーニャちゃんが攫われるはずはないのだ。


「ああ、それニャ。アーニャに戦闘の才能があったかららしいニャ。妹にも戦闘の能力があるかもしれないから早くから鍛えるつもりだったようだニャ。」


「なるほど。・・・やっぱりアーニャは強かったんだ。」


「気づかなかったのニャ?」


 カロンさんが不審そうに尋ねた。

 最初にスピカと一緒だったから強さの基準が全く分からなかったのだ。


「そうですね。周りがとんでもなく強い人ばかりだったので、良く分かりませんでした。」


「ニャハハハハ!」




 村で5日程過ごした。

 過ごしたと言っても、手伝いだけでなく、頻繁に転移であちこちへ行った。

 リエラの街、エルフの村、ウンディーネの住み家、神殿など。ビッグカウキングの親子を探してミルクを貰ったりもした。

 たいていは僕一人で、時々スピカも一緒に転移した。アーニャは残ってもらった。

 僕と一緒に旅をすれば、しばらく離れ離れになるかもしれない。

 もちろん転移で顔を出すつもりだが、何が起こるか分からないから、案外顔を見せる余裕がないかもしれない。

 家族と一緒に過ごす時間は取れるときに取っておくべきだと思う。


 リエラの街へ寄ったときにイリスさんにお願いして、一度村まで来てもらいカロンさん、サリーニャさん、マーニャちゃんを僕たちの冒険者パーティーに加えてもらった。

 これはリエラへの転移のためだ。イリスさんに頼むこともできるが、今はまだかなり忙しいようだ。時間が取れるときに来てもらった。

 これで、いつでもリエラに転移できるようになった。


 村に第2陣が到着した。

 今回は50名程の集団で、猫人族とその他の獣人が半々だった。

 アーニャの家に居候状態の虎人族の家族はいなかったが、同郷の虎人族の夫婦が言伝ことづてを持ってきた。

 どうやら、リエラの街で冒険者をして、少しお金を稼いでから戻るらしい。

 故郷の村で待っていてくれとのことだった。

 アーニャ一家が村を去る予定なので、虎人族の老人と子供たちはそのままアーニャの家に住むことになった。

 虎人族の村に戻ってきたら、言伝を持ってきてくれた夫婦に、この村にいることを伝えてもらう事になった。


 働き手も増えたので、村の拡張も順調に進みそうである。

 僕たちもそろそろリエラの街へ戻ることになりそうだ。

 その後、次はどうしようかと考える。

 一度リリアーナ王国へ行こうかと考えていたら、リリエラ様からとんでもない手紙が届いた。


 牧さんの行方が分からないらしい。彼女は勇者召喚されたときに保健室で寝ていたため教室にいなかったそうだ。

 そのせいで、クラスメイト達は彼女は転移してこなかったと思ったのだ。

 しばらくの間ダンジョンに潜っていたクラスメイト達が、僕の事をリリエラ様から聞いたことで彼女の事が発覚したのだ。


 急いでリリアーナ王国へ行くことになった。




____________________

少し予定していた内容を変更したために、リリエラ様との手紙のやり取りに矛盾が生じてしまいました。

クラスメイトが日本に帰り始めているという記述を削除しました。(第37話)

そして、閑話5「ダンジョン」を2章の終わりから3章の終わりへ移動して内容も変更しました。


申し訳ございません。


余り大した事件も起こらず退屈な話なのに読んでいただきありがとうございます。

ようやく牧さんの名前が登場したので動きが出ればよいのですが・・・


明日、明後日は短い閑話が続きます。

もしかしたらその後少し間が空くかもしれません。

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