閑話5 ダンジョン


 クラス全員でダンジョンへ入ることになった。

 もちろん若本先生も。


 ダンジョンの中でパーティーメンバーの組み換えができるように、冒険者ギルドの職員が魔道具を持って帯同する。

 他にも騎士6名冒険者6名、さらに料理人など大所帯である。


 ダンジョンはいくつかあるので、私達だけの貸し切り状態である。

 食料などはダンジョンで確保しつつも、ダンジョンの外から補給するらしい。


 一気に全員のレベルを10まで上げるのだ。

 レベルが10まで上がると良い武器や防具が装備できるらしい。

 ゆっくりとレベルを上げるよりもこの方法の方が安全だと考えたのだ。

 テントは豪華だし、魔道具のおかげで風呂にも入ることができた。



 2か月以上かかったが、レベル上げはうまくいった。

 案外ダンジョンの中に居続けても平気だった。

 階層によっては平原のダンジョンがあり、太陽や月があったのだ。

 それこそ階段を降りるごとに異世界へ転移しているようだった。


「リリエラ様がお話があるそうです。」


 ダンジョンから帰り、部屋で休んでいると神殿からの使いが来た。

 もう眠りたかったが、大事な話らしい。

 私と幸宏の2人でリリエラ様のもとへ向かった。




「ごめんなさい。離れた場所に召喚された転移者がいたようです。赤井旭さんから連絡がありました。私と連絡が取れるスキルを獲得しました。」


「それで、彼のおかれている状況は?」


 幸宏が質問した。

 連絡が取れたという事は無事だという事だろう。後は、安全な状況なのかが知りたい。


「1人ではないようですし、スピカ、神獣が一緒なので大丈夫です。隣の国にいますが、安全な街に向かうようなので大丈夫でしょう。」


「1人では無いのですね?」


「そうですね。女性を1人助けたようです。2人と神獣のスピカで行動しているそうです。スピカは魔法が使えるので安全に旅ができると思いますよ。アサヒさんも強力なスキルを持っているそうです。」


「そうですか。」


 リリエラ様から手紙で連絡が取れることを聞き一安心した。

 青井くんはしっかりしているから彼らの方は心配ないだろう。


「あれ?」


 よく考えたら勝手に女性の方を牧さんだと思って聞いていたけど名前を聞いていなかった。


「あのう? 一緒にいる女性って転移者ですよね? 名前分かりますか?」


 私がそう質問したら幸宏もハッとしていた。

 やはり彼も青井君と牧さんが一緒だと思い込んでいたようだ。

 確かに、こちらに転移する前、2人が話しているところをよく見たからそう思い込んでしまったようだ。

 案外、私たちは疲れているようだ。思考力が低下している。

 それだけダンジョンで木を張っていたのだろう。


「確か、アーニャだったかしら? 猫人族の娘よ?」


「そうですか・・・」


 私がショックで言葉をなくしていると、幸宏がリリエラ様に説明してくれた。


「リリエラ様、青井旭は僕たちと同じクラスですが、転移の時に同じ場所にいなかったのです。それで、彼は転移に巻き込まれなかったのだと思っていたのですが、彼が転移してきているならもう一人転移しているはずの仲間がいるのです。」


「なんですって!」


 リリエラ様が驚いて叫んだ。


「探さなきゃ!」


 つられて私も大きな声が出ていた。牧さんが一人だけ別の場所に転移しているのなら一大事である。


「連絡が取れる国すべてに聞いてみます。ただ、転移者らしい人が見つかっていたらすでに連絡が来ていたと思うの。一応探してもらうけど。」


 今回の勇者召喚は各国に了承を得て行われたらしいので、周辺の国はすべて勇者召喚の事を知っているのだ。知らないのは戦争相手のルアン王国だけである。

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