第28話 セリカたちを救出


 出発したのが夜だったが、明るくなる前に奴隷狩り達のキャンプ地に着いた。

 地図でセリカさんとヌガさんの位置を確認する。


 テントに2人一緒にいるようだ。テントの外に見張りが2人。

 事前に聞いた通りまだ奴隷にされていないようだ。見張り付きで拘束されている。

 連れて帰って、雇い主の奴隷にするのだ。

 そもそも、戦闘の足手まといになる奴隷商が付いてきていないのだ。

 

 今は、魔法やスキルを封じる魔道具の首輪を着けられているはずである。


 僕がその魔道具をつけられたら大変なことになると思たのだが、ユニークスキルには効かないらしい。また、レベルの高い魔法を防げるような質の高い物はほとんど出回っていないそうだ。

 つまり、僕とスピカには意味が無い。せいぜい僕が生活魔法を使えなくなる程度である。




「スピカ、頼む。」


「もう眠っています。」


 スピカの範囲魔法である。さすが神獣様である。スピカは魔法に関しては万能である。


「これで、ダメージを与えなければ皆、2,3日は眠ったままなんだね?」


「そうです。」


 そう、敵味方関係なく一網打尽で全員眠らせたのだ。

 後は僕がゆっくりと奴隷狩り達を拘束してゆく。

 アブソリュート・ゼロのおかげで僕は敵にダメージを与えないので、安心して奴隷狩り達を拘束できるというものだ。

 拘束用に縄を持ってきたが、奴隷狩り達が拘束用の魔道具を持っていたのでそれで拘束した。

 拘束することが攻撃とみなされて、僕には人を拘束できない可能性もあったので、出発前に確認済みである。


 まず、奴隷狩り達12人を拘束した。

 次に、緑の点で表示されていた人達。この人たちは奴隷狩り達が使っていた奴隷だった。獣人が3人、エルフが3人。戦闘奴隷として使っていたらしい。

 奴隷狩り達の所持品にあったので、念のため魔法とスキルを封じる首輪をしておく。


 まずは、なむったままのセリカさんを抱き上げて転移する。


 長の家の前では護衛長のテレスさんが待っていた。


「おお! セリカ。無事か?」


 最後は僕への質問のようだ。


「スピカの魔法で眠っているだけです。」


 一緒に家に入りベッドに寝かせた。


「ヌガさんも無事です。連れてきますね。」


 そう言って、スピカの元へ転移して戻った。

 そしてヌガさんを転移で長の家に連れてくる。

 今度は直接家の中に転移した。


「後は、奴隷狩りが12人と奴隷狩り達の奴隷にされているエルフが3人、獣人が3人です。」


「奴隷がいるのですね。それなら、ケイシャの商会に移した方が良いですね。」


 長のネアさんのアドバイスに従い、リエラの冒険者ギルドマスターに連絡を取った。まずは一度屋敷へ転移するように言われた。


「行ってきます。」


 屋敷に転移すると、いきなりウルスラさんが抱きついてきた。


「ありがとう。本当にありがとう。」


 ツキカリさんと話せたようだ。


「ウルスラさん苦しいです。あと、あたってます・・・」


 あんまりぎゅっと抱きしめるものだから胸がつぶれるくらいにあたっていた。


「あら、ごめんなさい。」


 ウルスラさんが慌てて離れた。少し赤くなっているが、いたずらっぽい笑みを浮かべている。元気になって何よりだ。


「さあ、急ぐぞ。ついてきてくれ。ケイシャの所へ行く。」


 ギルドマスターが声を掛けてきた。急いでいるのに少し待ってくれていたようだ。


 ケイシャさんの商会へ着くと、奥に案内された。


「ここに、奴隷たちを連れて転移してください。」


 ベッドが6つ用意されていた。


 さらに移動して、牢獄の前。


「ここに奴隷狩りを連れて転移してください。」


「分かりました。」




 奴隷6人、奴隷狩り12人すべてを転移させてからスピカの待つ奴隷狩り達がキャンプしていた場所へ戻った。

 すでに夜が明け明るくなっていた。


「スピカ、朝ごはんここで食べる?」


「いえ、戻ってから食べましょう。」


「分かった。じゃあ急いでここをかたずけよう。」


 奴隷狩り達の持ち物が僕の所有物になっていた。犯罪者を捕らえると犯罪者の所有物は捕らえたものの物になるらしい。

 あまり有用なものは無かったがすべて収納しておく。所持金なども奪わなかったので拘束用の魔道具くらいである。使い道は無さそうだ。



 キャンプの痕跡が消えていることを確認して転移で戻った。

 長のネアさんに会ってから、ツキカリさんの所にいるアーニャのもとへ。


「おかえりなさいニャ。大丈夫でしたニャ?」


「問題ないよ。留守番ありがとうアーニャ。」


 ツキカリさんは目を覚ましていた。顔色はよい。体調は良さそうである。


「体調どうですか?ツキカリさん。」


「とてもいい。回復薬ありがとう。」


「あれはリエラの冒険者ギルドマスターからです。お礼は後でギルドマスターにお願いします。」


「エドガーさんが? わかった。あと、ウルスラやクシャルとスシャリのこともだ。本当にありがとう。」


「いえ。気にしないでください。僕も屋敷で働いてもらえて助かっていますから。落ち着いたらウルスラさんの所へ転移しましょう。」


「ああ、お願いするよ。俺も何か力になれればいいのだが・・・」


「まずは元気になってください。後の事はギルドマスターと相談してください。」


「分かった。」


 エルフの女性とツキカリさんの看病を変わってもらいネアさんの家へ移動した。


 セリカさんとヌガさんは目を覚ましていた。特に体調にも問題はないようだ。

 ツキカリさん同様、感謝されて一通り同じようなやり取りをしてからようやく朝食にありついた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る