第27話 エルフの村で


 この場所には昨日付いたばかりのはずなのに、村長の家は簡素ながらもちゃんとした家が建っていた。家と言ってもログハウスのような建物だったが。


「村長のネアです。」


 エルフの村長は女性だった。見た目では年が分からない。若い女性にしか見えない。年を聞くのはやめておこう。


 こちらも挨拶をしてから手紙を渡す。手紙を読んだ村長さんが何があったのか説明をしてくれた。


 エルフの村からそう離れていない場所でエルフを含む冒険者6名が、南部の奴隷狩りに襲われたそうせある。

 冒険者たちが結構強かったので、互角に戦っていた。そこにエルフの村から偵察に出ていたケイシャの妹のセリカが加勢したのだ。

 その場をしのぎエルフの村へ帰還したかと思ったところに、奴隷狩りが襲ってきた。

 奴隷狩りの方にも余剰戦力があり、村へ逃げ込んだ冒険者たちをつけてきたのだ。

 冒険者のリーダーの豚人族のヌガとセリカが責任を感じて、村から逃げるときの殿しんがりを務めた。

 どうやらそのせいだ、2人は奴隷狩りに掴まってしまったそうだ。

 さらにその時に2人を助けに戻ってしまった冒険者が一人大怪我をしたらしい。


 村では、今、2人を救出に向かうか向かわないかで揉めていたらしい。


「とりあえず、これを。」


 僕はギルドマスターからもらった回復薬を村長に渡した。


「おお、ありがとう。早速1本をツキカリさんに使ってくれ。」


 ネアさんはそばに控えていたテレスさんに回復薬を渡した。


「あのう、今、ツキカリさんと言いましたか?」


「はい。人間の冒険者です。これで助かります。よかった。」


「あのう。その人たぶん僕たちが探していた人です。」


 ツキカリさんの所へ行くことになった。

 攫われたのが1人はケイシャさんの妹で、もう1人はツキカリさんの仲間だったとは。豚人族と聞いた時からもしかしたらと思っていたが・・・


 ツキカリさんはベッドで眠っていた。結構深い傷を負ったらしい。

 テレスさんがツキカリさんを起こして回復薬を飲ませた。

 回復薬は結構劇的に効いた。

 かなり重症に見えたツキカリさんは僕らと話せるくらいに回復した。ただ、起き上がることはまだ無理なようだった。


「ツキカリさん。ウルスラさんを知っていますか?」


 なんだか変な聞き方になってしまった。


「ああ、俺の相方だ。子供も2人いるんだ。」


「クシャルとスシャリですね?」


「そうだ。知っているのか。」


「はい。いま、リエラにいます。後でウルスラさんにあなたが無事だと伝えておきます。少し休んだらあなたも話せると思います。今は休んでください。」


「わかった。」


 ツキカリさんは目を閉じた。すぐに寝息が聞こえてきた。


 再び村長さんの家に戻った。


 村長さんと話始める前に地図を確認してみた。

 森の南部の奴隷狩りだと思われた集団の表示が変わっていた。

 多くが赤い点に、青い点が2つ、緑の点が6つである。

 おそらく赤い点が奴隷狩り達、青い点がセリカさんとヌガさん、緑の点がそのほかの攫われた人達と言ったところだろうか?

 僕が実際に目で確認しなくても敵と認識したら表示が変わる?


 あと、2、3日で森を出てしまいそうである。今からエルフ達が追っても追いつかないだろう。


 地図を見て迷っていると、スピカから念話がきた。


『私とアサヒで追いましょう。急げば朝までに追いつけますよ。』


『あまりスピカが介入したらダメなんじゃないの?』


 前に聞いたことを思い出したので聞いてみた。今回は僕とアーニャだけではない。他にもたくさんの人と係わってしまっている。


『あなたと行動を共にするなら好きに行動していいそうです。神託が下りました。神様は今のこの国の状況をよしとしていないのでしょう。私達に行動を求めておられます。』


 どうやら、リリエラ様の上司?にあたる神様からの神託らしい。


 村長さん達と話し合った。地図で僕たちが追わないと間に合わないことが分かったので、案外簡単に僕たちだけで追いかけることを了解してくれた。

 それから助けた人をここに連れてくることもだ。緑色で表示されているのがどんな人なのか少し心配ではあるが。


 その後の話し合いで、念話によるスピカからの追加情報と、エルフの村長さんからの情報で案外簡単に救出できることが分かった。


 詳しいことを話すのは後にして、僕が転移者で特殊なスキルを持っていることだけを伝えた。

 今は、時間が惜しい。奴隷狩り達に森を向けられると厄介である。


 そして今回は、アーニャは留守番である。


「アーニャは留守番頼むね。通信の魔道具を置いていくからツキカリさんの事を頼むよ。」


「分かりましたニャ。」


 アーニャも一緒に行くわけにはいかない理由が分かっているからついて来るとは言わなかった。


「気を付けてくださいニャ。」


「よろしくお願いします。」


「行ってきます。」


 スピカはすでに巨大化している。僕はスピカの背中に紐で括りつけられている。

 こんな姿では挨拶がいまいち様にならない。

 スピカが猛スピードで走るので振り落とされないためである。


『行きます。』


 スピカが念話で僕に出発を告げて走り出した。

 今までの3倍のスピードである。

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