第26話 エルフの村へ(2)


 リエラで買った食材で朝食を作った。

 オーク肉のベーコンとニワトリの卵を焼いてパンに挟んだ。

 見たことがないが、ニワトリは日本の鶏と見た目は同じだが、結構飛ぶらしい。

 僕が起きたことに気が付いたアーニャが、僕が料理するところをじっと観察していた。料理を覚えるつもりのようだが、今朝は焼くだけである。


 今のところあまり暇な時間が無いし、やることが多いから難しいが、時間を見つけて料理をストックしておきたいところだ。

 リエラの街でもっと出来上がった料理を買えばよかった。

 屋台で買っただけである。


 朝食後、地図を確認したがエルフと思われる集団は移動していない。もう一方は街へ戻っているようだ。こちらは奴隷狩りだろうか?


 今日は昼過ぎにエルフの村にたどり着けるだろう。魔物とどのくらい出会うかによって多少はずれるだろうが、地図を見た限り昼過ぎには着くだろう。

 昼食は村に着いてから食べることにして出発した。


 この森では、というよりも一般的に森の中では、ミノタウロス、オーク、ビッグベア、ビッグディアが多いようだ。あとはレッド種、ブラック種、キング種の違いだ。

 この森は主にレッド種が生息している。奥地にはブラック種もいるのだろう。


 昨日と同様、僕も戦闘に加わりながら魔物を倒してゆく。

 新たにレッドオークと戦闘した。レアドロップは杖だった。ちなみに、戦ったレッドオークは杖を持っていなかったし、魔法も使わなかった。

 そういえばオークキングが杖を持っていたと思い出した。

 魔法を使いそうな魔物が出たらアーニャが魔法の攻撃をされないように気を付けなければ。


 予定通りエルフの村に着いたが、地図で見て索敵した通り誰もいなかった。

 勝手に家に上がり込むわけにもいかないのでテントを張った。

 僕のイメージ通り、大きな樹を利用してツリーハウスになっている。

 中に入れないのが残念だ。

 地表に建てられた家もいくつかある。

 魔道具で結界が張られていたらしいが、今はその魔道具が持ち去られているようだ。エルフたちが持ち去ったのだろう。

 このまま放っておくと魔物に村が荒らされてしまうかもしれない。

 アイテムボックスに結界を張る魔道具があったので使ってみることにする。

 鑑定によると魔物だけを防ぐらしい。奴隷狩りも防げればよかったのだけど、それは無理なようだ。

 一つで村は覆えるようだが強い魔物も大丈夫なのだろうか?


「スピカ、村に結界を張ったのだけどこれで魔物防げるかな? 強い魔物が侵入できると困るのだけど?」


「大丈夫だと思いますよ。ブラック種だと破れるかもしれませんが、この辺りにはいませんし。」


 結界を確かめ、スピカが言った。


「ちょっとリエラとライカールとへ行ってここの事を報告したりしておこうと思うのだけど?」


「ウルスラさんに連絡を取ればどうですか? わざわざ行かなくても良くないですか?」


 確かに、まだリエラを出て3日目か、会いに行くほどではないのかな?




「あ、ウルスラさん。出るの早いですね。」


 電話みたいな使い方なのでしばらく待つと思ったのだが、1コールでウルスラさんが出た。


「はい、できるだけそばに置いてます。」


 どうやら今のところ屋敷の掃除と電話番が仕事になっているらしい。もっと頻繁に電話した方がいいかな?


 とりあえず、僕たちの現状を伝えた。明日からは夜に連絡を入れることにして話を終えた。


 よく考えたら直接冒険者ギルドと連絡が取れた方が便利な気がするが、どうしてウルスラさんを経由するのだろう?

 今度ギルドマスターに会ったときに聞いてみよう。



 村の中を見て回ることにした。索敵で人や魔物がいないことは分かっているが、念のためだ。何か痕跡のようなものがあるかもしれないし。


 人がいないことを除けば特に変わったところは無いと思い始めた頃、僕らが入ってきた村の門とは反対側の門で争った形跡があった。門が少し壊れている。


「スピカ、エルフの人たちのところに急いだほうがいいかな? 集団で逃げているし、移動していないから大丈夫だと思うのだけど?」


「そうですね、普通に移動しても明日の夕方には着くと思うので急ぐことはないと思いますよ。」


 スピカは僕の地図でエルフの位置を確かめると、そう言った。


「エルフは魔法が得意ですニャ。回復魔法も使えるからきっと大丈夫ですニャ。」


 スピカもアーニャも僕と同じ意見だから今日はここで一泊しよう。もう、テントも張ったことだし。


 翌朝早めに出発した。魔物を何体か倒し、僕のレベルが1上がった。レベル7である。アーニャの村に着くころにはレベル10になっていそうだ。

 早めに出たので夕方前、15時頃にエルフたちの居る場所に着いた。


 当然ながら、見張りがいた。索敵で見張りがいる樹は把握していたので、目では確認できないが見張りに向かって両手を上げて手を振る。手にはギルドマスターとケイシャさんの手紙を持って。


「リエラから来ました。ケイシャさんの手紙もあります!」


 僕が叫ぶと、樹の上にいた2人のうち1人が誰かを呼びに行ったようだ。

 しばらく待っていると、3人のエルフがやってきた。1人は見張りをしていたエルフ、1人は護衛だろうか、杖を持っている。最後の1人がしゃべりだした。


「警備の長をしているテレスだ。」


 美しい容貌で髪も長いので見た目では分かりずらかったが男の人だった。


「僕は冒険者のアサヒです。こちらは仲間のアーニャとスピカです。商業ギルドと連絡が途絶えたので様子を見に来ました。これ、ケイシャさんと冒険者ギルドマスターからの手紙です。」


 見張りをしていたエルフが僕から手紙を受け取りテレスさんに渡した。すらっとしたパンツの上から短いスカートを履いているので女の人だろう。


 テレスさんは封筒を受け取り、外側だけ確認して中の手紙は読まなかった。


「よくここが分かったな?」


「索敵で魔物や人の位置が分かります。」


「なるほど、ついてきてくれ、おさのところへ案内する。」




 


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