第24話 リエラの街(2)


 翌日、遅めの朝食を取り、少し用事を済ませてから冒険者ギルドへ。

 何故かギルドマスターのエドガーさん自らが転移用の家に案内してくれた。

 不思議に思っていると。


「南部の貴族たちの動きがきな臭いせいで皆忙しくてな。案外儂が一番暇なのだ。」


 という事だった。

 家は冒険者ギルドから近い場所にあった。結構立派な屋敷である。


「実は、ギルドマスター用の家なのだが、儂は妻に先立たれて独り身なのだ。冒険者ギルドの3階に部屋を持っているのでここは使っていなかったのだ。丁度良いから使ってくれ。」


「いいのですか?」


「ああ、使わずに眠らせておくよりずっとよかろう。」


「ありがとうございます。ウルスラさんもいいですね?」


「はい。」


 その後、ギルドマスターの案内でケイシャ商会へ食材の調達へ。

 商会へはギルドマスターと2人で行った。皆には屋敷で待っていてもらう。


 道中にあった屋台や露店を見ただけでも、ライカールの冒険者ギルドマスターの言葉通り食材が豊富なことが分かった。


 転移の魔法とアイテムボックスを利用しているらしく、ケイシャ商会では海の幸も扱っていた。出来るだけいろいろな種類の食材と調味料を購入した。

 ついでに、レシピ本があったのでそれも購入した。

 買い終わったらそのまま奥へ通された。


「会長のケイシャです。」


 ケイシャ商会の会長のケイシャさんはエルフの女性だった。髪は緑よりの青緑色で腰のあたりまで伸びている。すらっとした細身の体で、僕がイメージしていたエルフそのままである。胸は大きくない。

 どうしてもエルフだと胸が気になってしまう。気を付けねば。


「実は、ケイシャはエルフでな。南東にある森の奥にエルフの村があるのだが、そこの出身なのだ。今、その村からの連絡が途絶えている。」


 ギルドマスターが話し始めた。言いたいことは分かった。


「分かりました。その村に行けばいいのですね。様子を見てきましょう。」


「いいのですか?」


 ケイシャさんが驚いて尋ねた。ギルドマスターは僕の答えを予想していたようだ。


「問題ないです。予定していたルートからは、途中で少しそれるだけですね。スピカもいますし。何か手紙でも書いてもらえば怪しまれないですよね?」


「ああ、問題ない。森の魔物が強いし、奴隷狩りが出るからエルフの冒険者に村まで行ってもらう訳にもいかなくてな。困っておったのだ。」


「村長と妹に手紙を書きます。」


「連絡が途絶えているという事は、通信の魔道具があるのですか?」


 僕が尋ねると、ギルドマスターが難しい顔で答えた。


「そうだ。商業ギルドと定期的に連絡を取っていたのだが、ひと月ほど前から途絶えている。」


「では、急いだほうがよさそうですね。明日は難しいと思うので明後日出発します。」


「頼む。」


「では、私は明日までに手紙を書きます。どこに届ければ良いですか?」


 ケイシャさんに尋ねられ少し考える。


「明日、ここに取りに来ます。もう少し旅に必要なものを買う事になると思うので。もし、エルフの村へ届けたいものがあれば持って行きますよ。」


 ケイシャさんにそう言うと、ギルドマスターが言った。


「念のため、回復薬を持って行ってくれ。念のためだ。必要なければお前たちが使ってくれ。」


「分かりました。」


 ギルドマスターとケイシャさんはもう少し話があるそうなので、僕は先に帰ることになった。


「ギルドマスター、僕たちの事ケイシャさんに話してもらってかまいませんよ。」


「いいのか?」


「はい。協力者は多い方がいいです。僕たちは最悪逃げられますから。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。」




 屋敷へ戻る途中、屋台でアユの塩焼きのようなものが売っていたので買ってみた。アイテムボックスへ入れて名前を確認するとアユの塩焼きだった。

 リンゴやパンもそうだが日本と同じ名前のものが多い。転生者のせいだろうか、それとも言語理解のスキルのせいで聞こえ方が変わっているのだろうか?

 リリエラ様に聞けばわかるだろうか?

 明後日出発する事と、エルフの森へ寄ることを伝えておこう。ついでに言葉の事も聞いてみよう。


 屋敷に着いた。

 夕食は皆で近くの定食屋で食べた。

 皆に明後日ここを出発し、エルフの村へ向かう事を告げた。

 

 ウルスラさんにはお金を多めに預け屋敷を整えてもらう事にする。生活費もそこから出してもらう事にした。遠慮して使わなそうだったので、服や家具などきちんと買うように、また食事もきちんととるように指示した。料理道具や食器もそろえておいてもらう事にする。

 十分にお金があるし、稼ぐことができると伝えておいた。


 翌日は全員でケイシャ商会へ行った。

 僕はケイシャさんから手紙を受け取り、ウルスラさんに住んでもらう屋敷の場所を伝えたり、エルフの村付近に出る魔物について聞いたりした。

 その間に他の皆で買い物をしてもらった。

 結構たくさん買う事になったので、一部は届けてもらう事になった。


 クシャルとスシャリの事も気になって聞いてみた。

 学校は10歳から通えるそうだ。それまでは弱いモンスターを倒して少しレベル上げをしたり、手伝いをしたりするのが一般的だそうだ。

 今のところウルスラさんのそばにいればよいだろう。僕らが落ち着いたら少しレベル上げを手伝ってあげよう。僕というよりスピカに頼むことになるだろうけど。


 商会からの帰り道、アーニャやクシャル、スシャリに屋台で食べ物を買ってもらった。いろんな食べ物が売られていて楽しそうだし、特にアーニャにはいろんな人としゃべってみてほしかったからだ。

 買うものは結局、スピカが指示していたが。


 この日の夕食は、屋敷で屋台で買ったものを食べて済ませた。

 案外、煮込み料理などもあってバランスよく食べることができた。


 翌日の朝、冒険者ギルドに顔を出した後、リエラを出発した。

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