第16話 買い物と奴隷契約


 翌日、朝食を取りライカールへ。

 門で順番待ちの間、スピカが珍しいらしく周りの人から少し注目される。

 朝のうちに打合せたので、スピカは念話で話す。

 アーニャは奴隷の首輪をしているがこちらは問題ないようだった。

 この辺りにも、戦闘奴隷や借金奴隷がいるので借金奴隷だと思われたのだろう。


 無事に門を通過して冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者ギルドでは受付の女性に案内され個室へ。

 ギルドマスターと受付のイリスさんが待っていた。


 昨夜、スピカ、アーニャに了解を得た方針を伝える。

 勧められた通りアーニャを奴隷にすること。

 レベルを上げながらアーニャの村へ行くこと。


「アーニャの武器と防具をそろえたいので、どこで買うのが良いか教えてください。あと、おすすめの宿を教えてほしいです。あ、旅で注意することも教えていただけるとありがたいです。」


 店と宿の名前と場所を教えてもらい、旅のアドバイスを受けた。

 どうやら、獣人を差別する地域に入ると治安が悪くなるらしい。


 特に、最近は治安が悪化しているらしく、さらに、その地域を収めている貴族たちの動きもきな臭いらしい。王宮でも警戒しているとのことだ。

 おかしなことに巻き込まれなければいいのだが、嫌な予感がする。

 異世界に転移するとこういう事には巻き込まれるものだ。


「この街に一週間くらい滞在して、この国について調べたり、冒険者の基礎を学んだらどうだ? 急ぐわけでもなかろう?」


「そうですね。早い方がいい気はしますが、急いでいるわけではないですね。」


「私もその方がいいと思いますよ。」


 スピカもそう言ったので、ギルドマスターのアドバイス通りにすることにした。

 ギルドマスターもイリスさんもスピカのことを知っているので、スピカは普通にしゃべっている。


「この後、シリルが来るから買い物に付き合ってもらえばいい。武器や防具につてアドバイスしてくれるだろう。冒険者の基礎も彼女に教えてもらってくれ。」


「いいのですか?」


 僕が尋ねると、ギルドマスターはギルドからの依頼という形でシリルさんを僕たちのために雇っていると言った。ちゃんと報酬が出るらしい。

 しばらくは僕たちの教師役を務めてくれることになっているそうだ。ありがたい。


「僕たちが報酬を支払わなくていいのですか?」


「問題ない。君と神獣様に協力することで我々が得られるメリットは非常に大きなものなのだよ。リリエラ様に協力するという事は、神様の役に立てるという喜びだけでなく、利益が得られるのだ。下世話な話ではあるが。」


「いえ、そちらにも利益があるのであればこちらも安心です。一方的に助けられるだけの関係はちょっと・・・」


 ドアをノックする音がして、シリルさんが入ってきた。

 さっそく買い物へ行くことになった。


 まずはアーニャの服からだ。


 アーニャは遠慮したが、説得して何着か服を買う。下着類が中心である。冒険者は普段着る服も防具になるそうだ。普通の服に見えても何らかの効果が付与されているらしい。ちょっと高そうだ。


 次に防具屋へ向かった。結局、普段着も防具になるので、先に着る物を購入するという意味でも防具が先だ。


 ここで、問題が一つ。予備も購入したいのだが、


「僕のアイテムボックスに防具を収納すると、スキルのせいで僕しか装備できなくなるんだ。」


「女物でもか?」


 シリルさんが訝しげな表情で僕に聞く。


「女物でもです。」


 僕が答える。なんだか女装癖があるみたいじゃないか。シリルさん眉間にしわが寄っている。女装癖ではない。収集癖だ。


 結局少し値が張るけどアイテムボックスのような機能が付いた腕輪を購入した。

 アイテムを30個収納できるなかなかの高級品だ。

 アーニャが目をまわしていたけど必要なものだ。拒否権は無いのだ。


 防具3着と上から羽織るマントを購入。

 武器屋では剣と槍、あと短剣を2本づつ購入した。


 金貨100枚で何とか収まった。まだ40枚ほど残っている。

 腕輪が一番高くて金貨50枚、武器や防具はいいものを買ったが、シリルさんに勧められた通りに、アーニャのレベルに合ったものを買ったので、一つ辺り金貨5枚ほどだった。


「次は奴隷商人のところだな。」


「そうですね。」


 昼過ぎになっていたので、奴隷商会までの道すがら買い食いをする。

 お世話になっているので、シリルさんの分も出させてもらった。


 紹介された奴隷商会へ到着。立派な建物だ。3階建て。この街の建物は高くて3階まで、たいていは2階建てか3階建てである。

 奴隷を購入するわけではないので、応接室へ通され、アーニャが僕の奴隷となる手続きをする。


 戦闘奴隷として登録する。


「アーニャ、いいんだね?」


 最終確認をする。


「はいですニャ。お役に立ちますニャ。」


 やる気満々である。まあ、助けられたお礼がしたいのだろう。


 シリルさんが一緒だからか、青い髪の毛を隠していないからなのか、奴隷商会の会長チボー氏は妙に愛想がいい。


「奴隷の購入の御用がありましたら是非当商会へお越しください。」


「はぁ。」


 奴隷を買うつもりなどないので、適当な返事になってしまう。チボー氏は気を悪くした様子もなくにこやかだ。


 無事、登録が終わった。登録だけなので銀貨1枚。1万円というところだ。

 奴隷を見ていくか聞かれたが、断って紹介をあとにした。


 今日の予定はこれで終わりだ。

 シリルさんが宿屋まで案内してくれた。


「では明日、冒険者ギルドでな。」


「ありがとうございました。」


 去ってゆくシリルさんにお礼をいう。


「さて、部屋はどうしよう? やっぱり2部屋とったほうがいいかな?」


「一部屋でいいですニャ。もったいないですニャ。あと、一人は嫌ですニャ。」


 アーニャが断固反対したので2人部屋をとる。1泊1人大銅貨5枚、だいたい5千円と言ったところか。結構いい宿で朝夕の食事つき。結構安いのかな?


 部屋でくつろぐ。まだ、夕食には早い。

 スピカをブラッシングしながら明日の確認をする。


「明日は冒険者ギルドでパーティーを組んで何か依頼をこなそうか?」


「いいのではないですか? レベルも1か2くらい上げられるのでは? 10まで上げればスキルか称号が手に入るかもしれません。場合によっては何か役立つスキルが手に入るかもしれませんよ? 今のところ全くの役立たずですからね。」


 スピカが酷いことを言う。


「ご主人様のレベルを上げますニャ。頑張りますニャ。」


「ありがとう。アーニャ。でも、無理はしないでね。安全第一で行こう。」


「分かりましたニャ。」


「あと、転移について調べておきたいんだ。スキルの事はギルドマスター達に言ってないけど、相談した方がいいかな?」


「そうですね。何か失敗するよりは彼らに相談した方がいいと思いますが。私はこの国の常識を知りませんし。アーニャも詳しくはないでしょう。」


「はいですニャ。」



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