宝の持ち腐れ感半端ない

第15話 服入手

　まずはお金が必要になる。出来るだけ目立たないように、魔石を売る予定だったが、この際だからいろいろと確認しておこう。

「とりあえずお金を作らないといけないので、確認してほしいものがいくつかあるのですが？」

　そう言って、僕は金貨、リンゴ、パンをテーブルに出した。

　ギルドマスターとイリスさんが息をのむ気配がした。

「フォーリナ金貨は資料としての価値があります。ラステル大金貨10枚ほどでしょうか。サムエリンゴとサムエパンは文献で読んだことがあります。目にするのは初めてです。値段はつけられません。」

　ラステル王国の貨幣は、鉄貨が十円、銅貨が百円、大銅貨が千円、銀貨が１万円、金貨が10万円、大金貨が百万円、くらいの価値である。

　つまり、フォーリナ金貨１枚で大金貨10枚という事は一千万円？

　あれ？　２，３百枚あったはず。という事は、二、三十億？　嘘でしょ。

「ラステル金貨は死蔵した方がよさそうですね。資料として必要ですか？」

「いえ、必要ないでしょう。お金が必要なときは２、３枚であれば冒険者ギルドか商業ギルドでフォーリナの金貨や大金貨と交換していただけばよいと思います。」

　うん、使わずにとっておこう。僕が日本に戻ればラステル金貨も神殿に戻るはずだ。

「リンゴとパンはどうでしょう。」

「そちらも伝説の食べ物です。売るのはやめておいた方がいいでしょう。」

　なんとなく、そんな気はしていたのだ。聞いておいてよかった。人目に付かないところで食べよう。

「たくさんありますから食べますか？　とても美味しかったですよ？」

「いいのか？」

　見たことがないなら案外食べるのを嫌がるかと思ったが、ものすごく食べたそうである。一人一つ食べられるようにあと２つずつテーブルにのせた。

「文献によると、サムエリンゴは丸かじりすると最も高いステータスの数値がさらに上がるそうですよ。」

　一番高いステータス？

　運だったかな？

　あれ？

　リンゴのおかげでMAXになったのかな？

　それともリンゴを食べた意味が無かったのかな？

　微妙だ。

　３人がリンゴを丸かじりしている。ちょっとシュールな光景だ。

「そうなるとやっぱり魔石が無難でしょうか？」

　せっかくなので、レッドオーク、ブラックオーク、オークキングの魔石を１つずつテーブルに置く。

　リンゴを食べ終わったイリスさんが魔石を鑑定してくれた。魔石鑑定盤という魔道具があるそうだ。

「レッドオークの魔石が金貨６枚、ブラックオークの魔石が大金貨６枚、オークキングの魔石が大金貨60枚です。」

　単純に価値が10倍になってゆくらしい。ミノタウロスやビッグベアーなども値段は同じだった。

　ブラック種やキング種は森の奥深くにしかいないらしいので、わざわざ狩る冒険者はほとんどいないそうだ。

　レッドオーク、レッドミノタウロスなどレッド種の魔石をすべて換金することにした。魔石は全部で23個あった。金貨138枚、1380万円である。大金だ。

　街の中をシリルさんと歩いている。

「まずどこへ行く？」

　シリルさんが質問する。

「僕の着る物を買いたいです。その後に、アーニャ、獣人の女の子の服を一揃い。同じ場所で買えますか？」

「いや、女性の服は別の店だな。」

　ほどなくして、男性用の洋品店へ到着する。無難そうなものを何着か購入した。

　案外品質は良い。というよりも、日本の製品と遜色がない。もっとゴワゴワした服ばかりだと思っていたのだが、よい方に予想を裏切られた。

　次は、アーニャの服である。僕より少し小さく中肉中背と伝えたのだが、問題は下着だった。

「ブラのサイズどうする？」

　これは困った。全く分からない。

「ブラは諦めます。とりあえずはシャツとマントで我慢してもらって、アーニャが来てから買うことにします。」

「それがいい。」

　アーニャの服は一組だけにした。街まで来てもらい、後は本人に選んでもらうことにする。

「シリルさんありがとうございました。何かお礼がしたいのですが？」

　僕がそう言うと、シリルさんはひらひらと手を振って、笑いながら言った。

「気にするな。ウンディーネ様の加護持ちを助けるなんて光栄なことなんだよ。きっとこれからいいことがあるってもんさ。」

「そうはいっても・・・」

「なら、あの串焼きおごってくれ。うまいんだあれ。」

「わかりました。」

　一緒に串焼きを食べた。結構おいしい。いや、かなりおいしい。

　スピカとアーニャへのお土産に20本も買ってしまった。

　まあ、スピカがぺろりと食べるだろう。

　シリルさんと冒険者ギルドへ戻り、ギルドマスターとイリスさんに会って、明日街に来ると伝えてから町の外へ。

　人の目が無い所でテントのそばに転移した。

　素っ裸のアーニャがテントの外に出ていてひと騒動あったが無事に帰還して、僕とアーニャの服も手に入った。

　串焼きはアーニャが５本、スピカが14本、僕が1本食べた。足りない分はリンゴとパンだ。肉は焼かなかった。

　食後、アーニャに村へ行く予定であることを伝える。

　冒険者ギルドのギルドマスターからのアドバイスで、僕の奴隷として契約してから村に向かう方が良いらしいと伝えた。

　アーニャは僕の奴隷となるのは当然のことと了承した。

　村へ行き家族に会った後のことは、村に着いてから考えることにした。

　夜、ベッドの上でリリエラ様からの手紙を確認する。届いていた。お礼を書いて返信した。

　冒険者カードでステータスを確認すると、少しだけ変化があった。

　「ウンディーネの溺愛」や「精霊の加護」の上に「リリエラの加護」が加わっていた。