第6話 パンツ一丁から逃れたのに
さて、次は何をしよう?
とりあえず、落ち着ける部屋へ行きたいな。
椅子やベッドのある部屋はあるだろうか?
「スピカ、椅子やテーブル、ベッドがある部屋はある?」
「あります。移動しますか?」
「お願い。」
スピカに先導してもらい移動する。
「ふう。ここには食べ物や飲み物は無いの?」
「神殿の裏手にリンゴの木とパンの木があります。井戸もありますよ。」
「助かった。その木はこの神殿に来る途中にもあったよ。五日ほどかかる場所だから何もなかったらどうしようかと思ったよ。」
少し落ち着いたら取りに行こう。
「武器や防具などをアイテムボックスに収納してはどうですか? 特に魔道具は収納すると鑑定で使い道が分かりますよね。」
「そうか。…おっ、離れていても所有物だと収納できるみたいだ。アイテムボックス。収納。」
アイテムボックスを起動して収納スキルでアイテムボックスに収納する。
おおおっ!
武器、防具、魔道具、魔導書、薬品、道具類、…お金まで収納された。
「たぶん声に出さなくても、頭の中で言葉にするだけでスキルは使えると思いますよ。」
「そうなの?」
次に試してみよう。
アイテムボックスに収納されたものをチェックする。
まずは魔道具からだ。なんたって、武器と防具は装備できないからね。
武器と防具はあとで暇なときにチェックしよう。
ざっと、魔道具をチェックする。
なんだか生活に役立ちそうなものが多い。
そして、何故か3つずつ同じものがある。
一つしかないものも結構あるが、ほとんどの魔道具は3つあるのだ。
マントがある! 取り出してみる。これは、1つしかない。
着た時の温度調節ができたり、色が変えられたりするので衣類ではなく魔道具に分類されるようだ。
きっと魔道具庫に保管されていたのだろう。
防御力はないが、破れにくく、破れても自己再生するようだ。
防水機能も付いているようだ。
素晴らしい。
もしかしたら1つしかないものは材料の関係かもしれない。
マントの性能がこれほど良いのだから。
「魔道具の中にマントがあったよ。」
「それは良かったですね。着てみてください。」
早速着てみた。
パンツの上にマント。変質者のようではあるがパンツ一丁よりはましである。
「聞いたことのある変態のようです。ああ、変態はマントの下が裸でした。」
「ぐふっ。」
こちらの世界にも同じことをする変態がいるようだ。
気を取り直して、さらに魔道具をチェック。
「魔道具は結構役に立ちそうなものが多いな。」
「そうですか。この神殿はその魔道具を作った魔道具師のために建てられたそうですよ。マリス王が王になる前の時代の方だそうです。」
「魔道具師のために神殿を立てるって変じゃない?」
「当時の神様と二人で住んでいたそうです。私も詳しいことは知りません。」
「思ったより昔の人なんだね。ずいぶん昔から便利なものがあったんだね。」
「彼女のおかげでフォーリナの国が栄えたそうです。」
なぜか、スピカが誇らしげである。
まるで自分が作ったみたいである。
「女性なんだね。」
「そう聞いています。名前は知りませんが。」
少し残念そうだ。まあ、マリス王の前の時代という事はかなり昔の事なのだろうから仕方がない。
「神様って神界みたいなところに住んでいるわけではないの? さっき、この神殿に住んでいたと言っていたけど。」
「神様も人と一緒に暮らしていますよ。今はリリアーナ王国にいます。その国で、転移者を召喚したので。」
「スピカは一緒に行かなくてよかったの? 僕にとっては、ここにいてくれて助かったけど。」
「この神殿の事もありますし、神は神、神獣は神獣です。いつも一緒にいなければならないわけではありません。それに、いつかまた会えます。」
「なるほど。」
時間がある時にこの大陸の歴史についても聞いておいた方が良いだろう。
まずは今のこの大陸の事を教えてもらおう。
ただ、疲れたので明日からだ。
まずは、リンゴとパンを確保しよう。
戻ったら、魔導書のチェックでもしよう。
「かなり前の事だから、魔道具師の名前までは伝聞されなかったんだね。一息ついたし、リンゴとパンを取って来るよ。」
「では、私も行きましょう。精霊に話を聞きます。」
「ああ、忘れていた。お願いします。」
お願いしますと言って気が付いた。
いつの間にか、気やすい口調になっている。
いいのだろうか? 神獣に対して。
「さあ行きましょう。」
スピカはそう言うと部屋にあったもう一つの扉から出て行った。
神殿の裏手は扉を出てすぐらしい。
空いた扉からリンゴとパンの木が見えた。
後で取ればよいから、これから食べる分だけにした。
すぐ近くなので、明日の朝の分は起きてからにしよう。
スピカは少し離れた場所にある井戸の辺りにいた。
精霊と話しているようだ。
水が欲しいので、ゆっくりと近づく。
「(人間?) の訳が分かりました。」
僕に気が付いたスピカが話しかけてきた。
「やっぱりウンディーネが関係していたんだね。」
さて、僕はどうなってしまったのだろう?
「そうです。湖に沈んできたあなたを助けたそうです。そして、他の精霊たちにも手伝ってもらって、元気になるまで世話をしたそうです。」
「なるほど。」
「ただ、助けた直後、ベッドに寝かせたけれど、あなたはかなり衰弱していたそうです。それで、ウンディーネがあなたの中に入って治したそうです。」
「えっ? 中に入る? どういうこと?」
「よくわかりません。ただ、転移直後で世界になじんでいなかったから、ウンディーネの回復魔法が効かなかったそうです。同化して直したとしか…。」
「なるほど。」
「それで、あなたの血管や内臓の細胞には、水の精霊が混じっているそうです。」
「・・・それで、僕はどういう状況なの?」
「人と精霊が混じっているそうです。ハーフみたいな感じでしょうか?」
「うーん・・・。何か人間と比べて違うところはあるのかな? 困ることとか、気を付けることは無い?」
「ほとんど人間と変わらないそうです。」
「そう。よかった。」
「ただ、寿命が長くなっているそうです。」
「えっ、どれくらいかわかる?」
「五百年くらいだそうです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます