壱級集例

初任務の日から三日が経った。


行方不明者には怪我もなく無事に保護された。


あたしは総司さんの経営している病院に三日間だけ入院する事になった。


楓や隼人、大介は一日だけだったので退院後はお見

舞いに来てくれた。


もはや病室が溜まり場かしていたけど…。


それはそれで楽しかった。


あたしの場合は義足の損傷と赤札を使った事による

疲労。


蓮の方は疲労はあるものの軽い擦り傷程度だったので入院はしなかった。


総司さんにまた新しい義足を作って貰った。


入院最終日、月に一回の検診を受けている。


診察室にはあたしと総司さんの二人きり。


蓮は部屋の外で待っている。


あたしは上着を脱ぎ総司さんに背を向けた。


中にはキャミソールワンピを着ているので少しずらせは背中の月下美人が見える。


「失礼しますね。」


総司さんはそう言って優しくずらした。


「進行はしてませんね…。ありがとうございました。」


「ありがとうございます。」


あたしは総司さんにお礼を言って上着を羽織った。


「義足はめちゃって良いですかね?ちょっとだけグレードアップさせときました。」


「グレードアップ?」


高級そうな箱の中に新しい義足が入っていた。


見た目では何処が新しくなったのか分からない…。


総司さんはあたしを見て微笑んだ。


「これはですね…。前のは補強するだけだったんですが…ここのスイッチを押すと…。」


総司さんはそう言って右の太ももにある小さなスイッチを押した。


すると脹脛(ふくらはぎ)の裏から刃物が現れた。


「回し蹴り用に作ったんですよ!!」


総司さんは興奮気味に話した。


「ロボットみたいですね…。」


「はい!それじゃあ付けますね…。」


総司さんがあたしの前でしゃがみ義足を装着してくれた。


「立ってみてもらって宜しいですか?」


「あ、はい。」


椅子から立ち上がって歩いてみた。


前までの義足よりもしっくりくる!!


太ももとの馴染みもとても良い。


「どうですか?馴染みました?」


「前よりも良いです!凄い!」


「それは良かった。後コレを…。」


総司さんはポケットから一枚の紙切れを渡して来た。


紙切れを受け取りよく見てみると電話番号が書かれていた。


「コレは?」


「俺の番号です。用が無くても連絡して下さい。もっと聖様と仲良くなりたいので。」


そう言ってあたしの手を握った。


ドキッ


蓮と顔が似ているせいでドキドキする…。


「わ、分かりました…。」


コンコン


扉をノックして蓮が中に入って来た。


「中に入って良い?」


「蓮か、もういいぞ。」


「お嬢すいません、中に入って来ちゃって…。至急コレをお渡ししないといけなかったので…。」


蓮は一枚の赤い手紙を渡して来た。


手紙を開いて見るとそこに書かれていたのは…。


「"壱級集例"?」


「あー。例のアレか。」


総司さんは手紙を覗き込んで来た。


「アレとは?」


「壱級のメンバーが集まって近況報告をする会議の事ですね。」


「その会議にあたしが呼ばれたの?」


「はい、お嬢も壱級ですから。僕も呼ばれているので一緒に行きましょう。」


蓮はそう言って手を差し伸べた。


あたしはその手を握り立ち上がった。


「俺も手紙来てるんですよ。」


総司さんは机の引き出しを開け手紙を出した。


「だから、俺も同行するよ蓮。」


立ち上がってあたしの肩に手を置いた。


蓮の眉毛がまたしてもピクピクッと動いた。


総司さんも付いて来るって事?


「あ、あの…。総司さん病院とか大丈夫なんですか…?」


「はい。ここの奴等は優秀ですので。蓮も良いよな?」


「良いけど…。お嬢の肩から手を離して。」


パシッ


蓮は総司さんの手を軽く払い除けあたしの肩を抱き

寄せた。


「れ、蓮?」


「お嬢はボクの近くに居て下さい。」


キュュンッ!!


総司さんに触られた時のトキメキと蓮に触れられた時のトキメキは全然違う。


蓮の物になったみたいで嬉しい。


ヤキモチを妬いてくれたのかな…。


だったら凄く嬉しい。


蓮に肩を抱かれ止めてあった車に乗り込んだ。


後ろの席に蓮とあたしと総司さんの順に座った。

間に挟まれてる…。


「聖様は三年生や他の壱級に会うのは初めてですか?」


不意に総司さんに話し掛けられた。


「そうですね…。楓達以外に会ってないな。」


「今日は手紙を貰った壱級が集まりますから殆どお嬢は初めてですね。」


総司さんと話していると蓮が間に入って来た。


「と言うかあたし私服ダル着なんだけど…。大丈夫?」


ふと、自分の格好を見た。


「大丈夫ですよお嬢、可愛いですよ。」


「そうですよ。聖様は何着ても可愛いくなるので大丈夫ですよ。」


顔が赤くなるのが分かる。


「ふ、二人して褒め過ぎ…。」


「蓮様、着きました。」


扉を運転手さんが開けてくれてあたし達は車を降りた。


目の前に現れたのは高級な中華料理屋だ。


「さ、行きましょうかお嬢。」


「このお店で?」


「はい。貸し切りにしてあるそうです。」


「ほ。」


蓮の後に付いて行った。


蓮と定員さんが何か話している…。


そして話が終わり定員さんが奥の部屋に案内してくれた。


「此方に皆様がお待ちで御座います。」


キィィィ。


扉の奥には円卓の席に楓と隼人、智也さんが座っていた。


「あれ!?智也さん達だけ…?」


「いや、まだ来てないんですよ。」


「さ、座りましょうかお嬢。」


蓮が椅子を引いてくれた。


あたしは椅子に腰を下ろすと蓮と総司さんが隣に座った。


「聖、具合大丈夫か?」


隼人が心配してあたしに声を掛けて来た。


「大丈夫。隼人達は?怪我は?」


「俺等は擦り傷だから平気。」


隼人が答える前に楓が答えた。


「お前、聖が俺に話し掛け来たの何でお前が答えんだ。」


「あ?俺が答えても良いだろ。」


「ちょ、ちょっと二人共!」


キィィィ。


再び扉が開かれた。

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