初任務 参


あたしは蓮の手元をよく見つめた。


大蛇と思わしき頭の毛を鷲掴みにしていた。


沼御前はそれを見て驚いていた。


「ま、まさかお前の持っているのは…。」


「ん?あーこれ?君の探していたモノだよ。」


そう言って、蓮は沼御前に向かって大蛇の首を投げた。


「お嬢、遅くなりました。怪我は?」


「あたしは大丈夫よ。蓮の方は大変だったみたいね。」


返り血の量を見たらこっちより蓮の方に妖怪が集まっていたのが分かる。


「お前…。どれだけの数を相手にして来たんだよ…。」


楓は蓮の姿を見て青ざめたていた。


「ざっと20体ぐらいですかね?」


「化け物並だな…。」


蓮は涼しい顔をして戦場を1人で駆け抜ける。


本城家の中でも戦闘力がかなり高い。


そんな人があたしに支えているって凄い事なんだと実感する。


蓮はジャージの上着を脱ぎ捨てた。


「はぁ、ベトベトだよ…。」


「大丈夫?」


「大丈夫ですよ。ちょっと失礼します。」


そう言って蓮は式神を召喚した。


現れたのは可愛らしい出目金で蓮の体の汚れを洗い落としていた。


「さてっと…。沼御前を滅しますか。」


蓮は妖刀を構え直した。


「かなり消耗させたから一気に行くわよ。」


「「了解。」」


楓と蓮は沼御前に走って行った。


「貴様ら…。許さんぞ!!!私の仲間達を!!!」


沼御前は湖の水を操り楓と蓮を攻撃しようとしていた。


蓮の召喚していた出目金や金魚達が水の周りに集まっていた。


「式神術 "金魚鉢"。」


蓮はニヤリと笑って呟いた。


出目金と金魚達が水を吸い上げ沼御前の体を水で覆った。


水の金魚鉢の中に沼御前が閉じ込められいた。


「ゴポポポポッ!!!」


沼御前が金魚鉢の中で苦しそうにしている。


アンに跨っていた楓は金魚鉢の上に飛び降り両手を素早く動かした。


「音爆螺旋。」


そう言うと、光の鎖が現れ沼御前の体を拘束した。


「姉ちゃん!!」


楓の呼び声を聞きあたしは札を金魚鉢の周りに浮かせた。


「急急如律令。」


そう言うと、沼御前の頭が弾け飛んだ。


金魚鉢の水が沼御前の血で溢れ返っていた。


「やったか?」


楓がそう言いながらアンと共に戻って来た。


何かが変だ。


灰になってない…。


「お嬢!!!」


「え?」


バキッ!!!


何かが壊れる音がした。


ガクッ!!


あたしは地面に尻餅を付いた。


足に力が入らない…。


恐る恐る自分の足を見ると義足が破壊されていた。


何で!?


義足が!?


「お嬢!!!足、平気ですか?」


「姉ちゃん!?」


蓮があたしに近寄り抱き寄せた。


「義足が壊された。」


「「え!?」」


楓と蓮が声を合わせた。


「恐らくだけど…。沼御前はまだ生きている。と言うか、消滅出来てない。」


「もしかして八岐大蛇の血が原因で?」


「マジかよ…。姉ちゃん足は平気なの?」


「足は大丈夫。」


「聖!!!大丈夫か!!?」


「聖ちゃん!!」


上から声がしたので上を向くと、ホワイトタイガーに跨っている隼人と大介が居た。


「聖ちゃん!?足どうしたの!?」


「大丈夫。義足が壊れただけ。」


「義足?」


そうだった…。


大介は知らないんだったな。


「事故でなくしちゃったんだよね。」


「そうだったんだ…。ごめんね?そんな話しさせちゃって…。」


「良いよ。それよりも沼御前が復活する。」


カタカタカタカタッ!


金魚鉢がカタカタと揺れ今にも沼御前が出て来ようとしている。


「隼人。行方不明者の人達は?」


「俺と大介の式神を使って刑事の方に渡して来たから問題ない。」


「ならオッケー。それなら周りに気を使わなくて良いね。」


パリーンッ!!!


金魚鉢が破壊され沼御前が復活していた。


今までの傷が再生されいた。


「まだまだこれからだ!!さぁさぁ!!今度はこちらから行くぞ!!!」


そう言って、六本の尻尾をあたし達の方に振り回して来た。


「姉ちゃん。ちょっと触るぞ。」


「えっ?わっ!!」


楓があたしの体を抱き上げ尻尾の攻撃を避けた。


「ちょっ!!楓!!あたし重いから!!」


「は?姉ちゃん軽すぎ。落としそうになるからしっかり掴まって。」


「う、うん。」


あたしは楓の首にしがみ付いた。


「それよりどうする?沼御前。」


楓の言葉を聞いて沼御前に目を向けた。


さっき流した血も操っているのか…。


どうりであたしの義足を壊せる筈だ。


「何なんだよコレ〜!」


そう言いながら、大介は槍で血液の攻撃を交わしていた。


どうしたものか…。


「我の力が必要か。」


頭の中に誰かが語りかけて来た。


この声の主は…。


「阿修羅王?」


「主人よ。我の力を使うが良いぞ。」


「良いの?」


あたしがそう言うと阿修羅王は軽く笑った。


「我の主人はお前だ。なら力を使うのも主人の自由だ。」


「そっか…。じゃあ阿修羅王。あたしに力を貸して。」


「御意。」


あたしは心の中で阿修羅王と会話をした。


「楓。」


「?、どうしたの姉ちゃん。」


「沼御前の気を皆んなで引いて欲しい。あたしに考えがある。」


そう言うと楓は一瞬考え込んだ。


「分かった。コク、姉ちゃんを守れ。」


そう言って、式神を召喚しあたしをコクに跨らせてくれた。


「合図はあたしの式神のシロとクロが沼御前の真上に現れたら離れて欲しい。」


「了解。」


楓はアンに跨り沼御前に向かって行った。


あたしは赤い札を取り出した。

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