初任務 弐
本城蓮 二十四歳
「はい、ありがとうございます。では配備の方宜し
くお願いします。」
ピッ。
僕は刑事さんとの通話を切った。
「さて…と。後はここに札を貼れば…。」
この敷地内の角となる大きな木に結界札を貼った。
これで完了だな。
確認の為に自分の式神の梟(フクロウ)を空に放った。
時刻は午後18時を過ぎていた。
日が暮れ始めていた。
ブー、ブー。
スマホにメッセージが届いた。
メッセージを開くとお嬢からで、今から作戦を開始
すると書いてあった。
沼御前から甘い匂いがした。
弐級妖怪と呼ばれているがあれは壱級妖怪の匂いを放っていた。
お嬢と坊ちゃんに隼人がいるから大丈夫だと思うが…。
「心配なのはマーキングされた前田だな。」
確か前田は弐級だったよな…。
「ッ!!」
僕は腰に下げてある妖刀を抜いた。
周りを見ると、沼御前の配下の妖怪達が現れてその中には…。
「おいおい?!人間がいるぞー?」
大蛇(だいじゃ)が湖から現れた。
「やっぱりな。コッチに大蛇がいたか。」
「ん?貴様、陰陽師か。」
「お嬢と合流するの遅くなりそうだな。フウ!!」
僕は空に向かって梟のフウを呼んだ。
フウは風邪と共に現れ大蛇の目を突いた。
「ギャァァァァォァォ!!」
大蛇の右目から血が流れ落ちていた。
「だ、大蛇様!!!?」
「き、貴様!!よくも!!」
水の妖怪である河童が僕に飛び付いて来た。
僕は素早く避け河童の頭を斬り落とした。
ビシャ!!!
河童の切れた首からは緑色の血が溢れ出た。
だいたい配下の妖怪の人数は…20体か。
まぁ余裕だな。
ここで先に払っとくか。
「僕こんな見た目でも強いよ。ほら、かかって来いよ。」
僕は煽る様に妖怪達に向け手招きした。
「小僧。後悔するなよ!!」
大蛇の掛け声と共に妖怪達が僕に向かって来た。
御子柴聖 十七歳
妖怪の気配がしてきた。
やはり、あの女の人が沼御前で間違いなかったか。
楓と隼人は少し離れた所で気配を消して大介を見ていた。
あたしは木の上から大介を監視していた。
道を歩いている大介の背後に沼御前が現れた。
「やっぱり良い男。」
「ッ!!君…沼御前なんだろ?」
「…。おや…まぁまぁ。つまらん。」
そう言うと、人間の姿から本来の沼御前の姿に変わった。
上半身は裸で下半身は人魚の姿だった。
魚のような巨大な尻尾は六本生えていた。
大介はポケットからステッキを取り出した。
あのステッキはなんだろう…?
その光景を見ていると大介がステッキに付いている
ボタンを押すと青色の槍のに変わった。
大介の武器は槍なのか。
「私とやり合う気?坊や。貴方も私のコレクションになるのよ?」
そう言って、沼御前は六本の尻尾で湖を叩き付けた。
すると、湖から巨大な岩が現れた。
「?!、お、おい。マジかよ!!」
大介が岩を見て大声を出した。
どうかしたの?
あたしは岩を見つめて見た。
「!?」
「ゔー。」
「た、助けてくれ。」
よく見ると行方不明者だと思われる未成年の男性達が岩にくっついていた。
どうやら、あの鱗が体にへばり付き岩と合体させてあるみたいだ。
厄介だなあの鱗。
鱗同士が共鳴し合い粘着の強度を強くさせている。
「か、体が!?勝手に引っ張られて!?」
大介の体が岩に引き寄せられている。
それをニヤニヤしながら、沼御前は見つめ大介の体に尻尾を巻き付かせようとしていた。
あたしは妖銃を構え尻尾目掛けて銃弾を放った。
パンパンッ!!!
「ギャアアアアアア!!」
打った銃弾が二発とも尻尾に命中に尻尾が弾け飛んだ。
「聖ちゃん!!」
「な!何だコレは!!?わ、私の尻尾が!!!」
楓が素早く木の影から飛び出し、妖刀を構え次々と尻尾を切り刻んで行く。
怒った沼御前が大介に手を伸ばした。
すると、隼人が沼御前の前まで走り出し脇腹にパンチを喰らわした。
呪符の書かれた包帯に触れたせいか沼御前の脇腹にポッカリと穴が空いた。
「こ、この餓鬼共…め!!調子に乗るなぁぁぁぁ!!」
沼御前は大声を出し聞き取れない声で奇声を上げた。
「八岐大蛇様…。貴方様のお力お借りしまする。」
そう言って沼御前は紫色の液体が入った瓶を取り出した。
そして
その液体を飲み干した。
あれは…一体。
沼御前の体が回復して体全体に鱗が生え体が巨大化した。
大介の体が浮き岩に張り付いてしまった。
「大介!!」
「隼人!!」
隼人が大介を追い通うとしたが、巨大な尻尾に跳ねられ近くにあった木に飛ばされた。
「ガハッ!!」
隼人の口から血が出ていた。
ズキンッ!!
背中に鋭い痛みが走った。
「ッ!?も、もしかしてあの液体は八岐大蛇の血?近くにいるの?」
あまりの痛みで木から落ちそうになった。
沼御前な八岐大蛇の血を飲んで強くなったって事?
明らかにさっきよりオーラが違う。
あたしは式神の針鼠(ハリネズミ)を数体召喚し、沼御前に気づかれないように配置させた。
木から飛び降りあたしは楓と隼人と合流した。
「楓、ちょっとでいいから沼御前の気を逸らして欲しい。」
あたしがそう言うと、楓は沼御前の周りを見た。
「了解。任せといて。」
そう言って楓は式神の白い犬と黒い犬を召喚させた。
「行くぞ、アン、コン!!」
沼御前の巨大な尻尾を交わし、尻尾に飛び乗り妖刀を構え直し尻尾を切り刻む。
アンとコンと呼ばれた式神も、楓に降り掛かった尻尾を噛み付き楓に近付かせないようにしている。
「隼人。大丈夫?」
あたしは隼人に近寄った。
「悪い油断した。」
そう言って、口に溜まっている血を吐き出した。
「隼人には大介と行方不明者の救出をお願い。あたしと楓が沼御前を担当するから。」
「あの鱗を剥がせば良いんだな?了解。」
隼人も式神を召喚しホワイトタイガーに飛び乗り岩に向かって行った。
「この餓鬼!!チョロチョロと鬱陶しいわ!!式神の犬っころめ!!」
完全に沼御前は楓に気を取られている。
「式神術 "針山地獄"(はりやまじごく)。」
そう言って、あたしは指を鳴らした。
配置されてあった針鼠の針が大きくなり、無数の針が沼御前の体に突き刺さった。
「ギャアアアアアア!!痛い!痛い痛い痛い痛い!!」
逃げようとしても針が刺さり動けない状態になった。
楓は針が出る瞬間に避難していて針は当たっていないようだった。
「何処だ…!!さっさっと私を助けろ大蛇!!?!」
「アイツ大蛇を探してんのか?」
戻って来た楓があたしの隣に来た。
「探してたって?」
「さっきから大蛇って何度も呼んでたんだよ。」
「探し物はコレかな?」
あたしと楓、沼御前は声のした方を振り返った。
そこには何かをを持った返り血塗(まみ)れの蓮が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます