礼志20 武帝敬后祭祀

劉裕りゅうゆうが 422 年 5 月に死亡すると、同年 9 月に徐羨之じょせんし傅亮ふりょう劉義符りゅうぎふにあて、劉裕の葬儀祭祀について上奏した。


「臣は聞いております、徳高きお方を厳粛に祀るのは、あらゆる王にとっての重大な責務であり、その功績が天人にも等しきお方を顕彰するのは、古より変わらぬ事である、と。いま、宋国は立ち上がったばかり。その儀礼式辞が魏晋当時と同じくなるものであるはずもございませんが、こうした偉大なる先人への思慕を形に示すべき、と言う部分では何ら変わりがございませぬ。


伏して思いまするに、高祖武皇帝はよくよく天地の神霊のご意志に従われ、ゆえにこそ天命を授かられ、日夜粛粛と勤務に努める姿勢をお広めになり、宮廷内には能臣能吏を配備し尽くされ、結果その明德は天はをあまねくお照らしになり、人々の気持ちを平和なものとされ、遠方のものまでもが教化の恩恵に浴しました。


さて現在、陛下は先帝の聖哲なるお心を見事に引き継がれ、引き続き天下のご政道も陛下への心服によって成り立っております。しかるに祭禮がしばらく執り行われておらぬ状態でございますれば、そろそろこの辺りでいちど、陛下のお父上への、お父上が為し遂げられた功績への思慕を天下にお示しになるべきではございませんでしょうか。


武帝陛下を天郊・地祇にそれぞれ配すること叶えば、禮にそのようなしきたりが載っておらぬとは言え、魏晋以来に執り行われていた先例もございますし、禮に違うと言ったこともございますまい。


また合わせて武敬皇后・臧愛親ぞうあいしん様についても北郊に配しておかれるべきでありましょう。亡き皇后陛下に対する孝の思いをもまた天地にお示しになることは、天下の顕名、無名なるものに向けても大いに孝徳の尊さを示すこととなるでしょう。来年早々にでも、天郊・地祇どちらにおいても祭祀を執り行えるよう、過去の事例を踏まえ入念な準備をなすべきかと愚考致します」


劉義符はこの上奏を認可した。




宋武帝永初三年九月,司空羨之、尚書令亮等奏曰:「臣聞崇德明祀,百王之令典;憲章天人,自昔之所同。雖因革殊時,質文異世,所以本情篤教,其揆一也。伏惟高祖武皇帝允協靈祇,有命自天,弘日靜之勤,立蒸民之極,帝遷明德,光宅八表,太和宣被,玄化遐通。陛下以聖哲嗣徽,道孚萬國。祭禮久廢,思光鴻烈,饗帝嚴親,今實宜之。高祖武皇帝宜配天郊;至於地祇之配,雖禮無明文,先代舊章,每所因循,魏、晉故典,足為前式。謂武敬皇后宜配北郊。蓋述懷以追孝,躋聖敬於無窮,對越兩儀,允洽幽顯者也。明年孟春,有事於二郊,請宣攝內外,詳依舊典。」詔可。


宋の武帝の永初三年九月、司空の羨之、尚書令の亮らは奏じて曰く:「臣は聞く、德を崇び祀を明らかとせるは百王の令典にして、天人を憲章せるは昔よりの同じき所なりと。因革の時に殊なり、質文の世に異なるとと雖ど、情の本にして教の篤き所以にして、其の一なる揆なり。伏して惟うに、高祖武皇帝は靈祇に允協され、天より命有り、日靜の勤を弘め、蒸民の極を立て、帝は明德を遷し、八表を光宅し、太いなる和を宣く被り、玄化は遐きに通ず。陛下の聖哲嗣徽なるを以て、道は萬國に孚む。祭禮は久しく廢され、光の鴻烈なるを思い、帝の饗せること親しきに嚴にして、今實に之を宜しくす。高祖武皇帝を宜しく天郊に配すべし。地祇の配に至らば、禮に明文無かりきと雖ど、先代の舊章は每に因循せる所たれば、魏、晉の故典も前式為るに足る。武敬皇后を宜しく北郊に配すべしと謂ゆ。蓋し述懷せるに追孝を以てし、聖敬の無窮に躋ち、兩儀に對越し、允く幽顯なるを洽むなり。明年の孟春、二郊に事有らば、宣しく內外を攝し、舊典に詳依すべく請ゆ」と。詔して可とす。


(宋書16-1)




劉宋ならではの先帝祭祀儀礼が成り立っていなかった、と言うことでいいんでしょうかね。だからとりあえず魏晋以来のやり方に則る形で行いましょうや、的な。しかしこの上奏があって間もなく北魏による襲撃が発生してしまった。では、結局この劉裕に対する祭祀はどうなってしまったのか。あるいは北魏の侵攻を受けても、祭祀だけは強行したのかなあ。謎です。劉義符なら侵攻にかこつけて中止しそうだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る