礼志4  庶出家主祭母1

393 年、車胤しゃいんは再び上奏する。


「去年はじめの頃、近年の公卿より士人にいたるまで、家を継いだ庶子が生母を先代の正室と同じ手厚さにて葬礼をなすことが礼に適わず、制度を有名無実化する、なので制裁措置を取り、抑制すべきと申し上げました。しかし年改まってなお、こちらに対してのご回答を頂戴できておりません。


せめて私の上言の何がおかしいかをお教えくださってもよろしいのではないですか? もし本当におかしいのであれば経典にその旨示されておりましょうし、今の世の実情に見合わぬと仰るのであれば、今の世の典籍が成立しておるはずでございましょう。


そも 360 年、司馬晞しばき様のお母上が亡くなったときには三年の服喪が申告されましたが、樂安王がくあんおうの故事(※謎。後漢ごかん劉寵りゅうちょう、もしくは司馬炎しばえんの弟司馬鑒しばかんのことか)に則り九ヵ月の服喪となりました。また 365 年、司馬㻱しばほう様も生母を失って三年服喪を申請したところ、それこそ 360 年のケースに基づき、九ヵ月の服喪とされています。


かりに周禮しゅうれいに基づいたとすれば服喪は三ヵ月、晉制しんせいに則ったと仮定しても九ヵ月が最大となりましょう。昔から今に至るまで、庶子後継者が生母のため三年の服喪に入るだなどといった文章はどこにもありません。だというのにここ最近の服喪では私情ばかりが優先されており、さも既成事実かのように横行しております。すなわち、古の聖賢の言葉がなげうたれておるのです。


家門代々の先祖をねんごろに祀り、一方で自らに直接つながる親を愛する。どちらも人が人として生きるよすがであり、ひいては人主を父として仰ぐにあたっての基本姿勢にもつながってまいります。どちらも重んずべきことでありましょう。なればこそ先王の教えに従い、その言葉を最上に据えて教え広め、その上で家門代々の祖霊を尊び、家内における親愛の情の示し方を明確とし、庶子の服喪があくまで家内の葬礼にのみ収まるものであることを徹底するのは、人々の心を整え、天下を教化するに値するのです。




十八年,胤又上言:「去年上,自頃開國公侯,至於卿士,庶子為後者,服其庶母,同之於嫡,違禮犯制,宜加裁抑。事上經年,未被告報,未審朝議以何為疑。若以所陳或謬,則經有文;若以古今不同,則晉有成典。升平四年,故太宰武陵王所生母喪,表求齊衰三年,詔聽依昔樂安王故事,制大功九月。興甯三年,故梁王㻱又所生母喪,亦求三年。『庚子詔書』依太宰故事,同服大功。若謹案周禮,則緦麻三月;若奉晉制,則大功九月。古禮今制,並無居廬三年之文,而頃年已來,各申私情,更相擬襲,漸以成俗。縱而不禁,則聖典滅矣。夫尊尊親親,立人之本,王化所由,二端而已。故先王設教,務弘其極,尊郊社之敬,制越紼之禮,嚴宗廟之祀,厭庶子之服,所以經緯人文,化成天下。


十八年、胤は又た上言すらく:「去年の上、頃の開國公侯より卿士に至るまで、庶子の後為る者の其の庶母に服せること之を嫡と同じうせるは禮に違い制を犯さば、宜しく裁抑を加うべし。事を上げ年を經るに、未だ告報を被らず、未だ朝議の何ぞを以て疑を為なすを審らかとせず。若し以て陳ぜる所の或いは謬らば、則ち經に文有らん。若し以て古今に同じからざらば、則ち晉に成典有らん。升平四年、故の太宰の武陵王を生みたる所の母を喪うに、表し齊衰三年を求め、詔して昔の樂安王の故事に依りて聽し、大功九月を制す。興甯三年、故の梁王の㻱も又た生みたる所の母を喪い、亦た三年を求む。『庚子詔書』の太宰が故事に依り、服の大功を同じうす。若し謹みて周禮に案ざば、則ち緦麻は三月なるに、若し晉制を奉ざば、則ち大功は九月たり。古禮の今に制さるに、並べて廬に居せること三年の文無く、頃に年の已に來たれば、各おの私情を申し、更に相い襲うを擬し、漸く以て俗を成す。縱とし禁ぜず、則ち聖典は滅したり。夫れ尊を尊び親を親しむは人を立つるの本にして王化の由す所、二端なるのみ。故に先王の教を設け、其の極を弘めんと務め、郊社の敬を尊び、越紼の禮を制し、宗廟の祀を嚴とし、庶子の服を厭うは、人文を經緯し、天下を化成せる所以なり。


(晋書20-2)




まだまだ続くんじゃ。


おい司馬曜てめえこっちが公式の意見として提議した話シカトするたぁいい度胸だ、間違ってんなら間違ってるって言ってみろや、ただ根拠はちゃんと添えろよ?


みたいに食らいついてきてます。車胤さんこわひ。

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