天文14 星変396年

晋書しんしょ

396 年 3 月、金星が羽林うりんにて、連日昼に見えた。「権勢持った臣下が現れ、兵乱があり、中央軍が動く」兆しとされた。4 月、金星が天囷てんかに入った。「飢饉あり」。6 月、木星が哭星こくせいと並んだ。「哭泣に値する事態が起こる」とされた。

9 月に孝武帝こうぶていが死亡。397 年には王恭おうきょうが舉兵し朝廷を脅かし、内外が戒厳体制を敷いた。最終的には王国宝おうこくほうの誅殺にてケリがつけられた。


魏書ぎしょ

396 年 6 月,彗星が髦頭ぼうとうに見えた。彗星は旧き汚濁を洗い流し新しき価値観をもたらすとされる。天が繰り広げられる無道を取り除き、有德のものを立てん、と心されたのである。故にこの星徵は繁栄も、滅亡も示す。

五胡の争乱は多くの人を踏みにじり、暴力によって中原は支配されていた。そして時の下ること百年余り、正しき王が現れることなく、天命は失われていた。しかしこの年の秋、拓跋珪たくばつけい様はついに冀方の地にて邪悪を打ち払い、德教の音を鳴り響かせ、人倫の道を開いた。長きにわたる地獄の時代を終わらせ、古の正しき儀式を復興させ、ついには皇始こうしと元号を立てた。彗星が天を拂ったのは、まさにこの兆しであったとされる。


なお同じく 6 月木星が哭星こくせいと並んでいる。木星とは人君の象徴であり、人君まわりで哭泣に値する事態が起きる、とされる。

実際同月には拓跋珪の母、賀氏がしが死亡。また秋には晉の司馬曜しばようも死んでいる。


ところでこれよりも以前、大きな黃星が昴宿こうしゅく畢宿ひっしゅくあたりに五十日あまりあらわれた。この事態に後燕出身の星見役である王先が「まさしくただしき王が燕と代とのあたりに現れ兵らはその武威を盛んなものとし、向かうところ敵なしとなろう」と語った。

11 月にもまた黃星が出現。実際に北魏は並ぶことなき強国として君臨している。




太元二十一年三月,太白連晝見,在羽林。占曰:「有強臣,有兵喪,中軍兵起。」四月壬午,太白入天囷。占曰:「為飢。」六月,歲星犯哭星。占曰:「有哭泣事。」是年九月,孝武帝崩。隆安元年,王恭舉兵脅朝廷,於是中外戒嚴,戮王國寶以謝之。


太祖皇始元年夏六月,有星彗于髦頭。彗所以去穢布新也,皇天以黜無道,建有德,故或憑之以昌,或由之以亡。自五胡蹂轥生人,力正諸夏,百有餘年,莫能建經始之謀而底定其命。是秋,太祖啟冀方之地,實始芟夷滌除之,有德教之音,人倫之象焉。終以錫類長代,修復中朝之舊物,故將建元立號,而天街彗之,蓋其祥也。先是,有大黃星出于昴、畢之分,五十餘日。慕容氏太史丞王先曰:「當有真人起於燕代之間,大兵鏘鏘,其鋒不可當。」冬十一月,黃星又見,天下莫敵。〈是歲六月,木犯哭星。木,人君也,君有哭泣之事。是月,太后賀氏崩。至秋,晉帝殂。〉




慕容氏がどんだけ強大な敵か、というか、まぁどこかに「項羽こううを倒す劉邦りゅうほう」的なアレがあったのでしょうね。それにしても魏書天象志があまりにも北朝鮮のニュースキャスターなノリで笑う。


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