劉裕121 立皇太子詔  

劉裕りゅうゆうが即位した二ヶ月後、死別した妻のぞう氏に皇后位を追贈。また長男の劉義符りゅうぎふを正式に皇太子の地位につけました。これらにまつわる詔勅を下しています。



承曆受終 猥饗天命

荷 積善之祚

藉 士民之力

七廟備文 率由令範

 朕は先朝の終焉を受け、

 畏れ多くも天命を承った。

 先祖が積んできた徳を担い、

 士庶よりの助力を頂戴し、

 先祖の廟をよく祀ることで、

 ようやくいにしえよりの規範に

 則ることが叶った。

 

先后祗嚴 獲遂宣訓

蒸嘗肇建 情敬無違

 先の皇帝たちは祖霊を厳粛に祀られ、

 よく世に規範を示された。

 初めて祖先への祭祀が

 始められた頃より、そのメンタリティに

 変わりはなかったであろう。


加以

儲宮備禮 皇基彌固

國慶家禮 爰集旬日

豈予一人 獨荷茲慶

 いま、皇太子の確定により、

 皇統の基礎はいよいよ固まり、

 国は寿がれ、家門には礼が、

 十日もせぬうちに集ってきた。

 これら祝福を、どうして予が

 独占などできようか。

 

其見刑罪

無輕重 可悉原赦

限百日 以今為始

 諸犯罪に関する罰は、

 その軽重にかかわらず赦免とせよ。

 ただし、本日より百日間に限る。


先因軍事所發奴僮

各還本主

若死亡及勳勞破免

亦 依限還直

 また、先頃までの軍務に基づき

 借り上げていた奴僕はすべて

 元の主の元へ返還する。

 もし死亡していたり、

 また奴僕が功績を挙げることで

 庶人の地位を獲得しておれば、

 これらの補填も規定に基づき、行おう。




「朕承曆受終,猥饗天命。荷積善之祚,藉士民之力,七廟備文,率由令範。先后祗嚴,獲遂宣訓,蒸嘗肇建,情敬無違。加以儲宮備禮,皇基彌固,國慶家禮,爰集旬日,豈予一人,獨荷茲慶。其見刑罪無輕重,可悉原赦。限百日,以今為始。先因軍事所發奴僮,各還本主;若死亡及勳勞破免,亦依限還直。」


(宋書3-14_政事)




もう全然わかんなくてひーこらしていたら、以前のものに引き続き、深山氏及びくらすあてね氏よりのご教示を頂戴しました。特に「先因軍事所發奴僮~」以降はさっぱり理解できなかったので、ありがたいです。


こちらについてはご教示の内容を紹介させて頂きます。


深山氏

「還直」は「弁償する」の意味らしいので、

https://www.guoyugu.com/zh-mo/gxshibu/songshu/1115327.html

奴僮の私有が認められていたことを暗黙の前提として、基本的には元の主人に返すけれど、死亡や「勳勞破免」の場合は弁償しよう、ということでは?

それで、「勳勞破免」とは何か、ですが、

https://www.guoyugu.com/zh-mo/gxshibu/songshu/1115327.html

に「如果死亡以及因功免去奴僕身份的,也依例償還價錢。」とあり、この方は「勲功をあげたので奴僕の身分から解放された者」という解釈ですね。


くらすあてね氏

「還直」の「直」はリンク先の光武帝の例がモロにそうですけど、奴隷の買い戻し金の話であってます。「限(規定)」にしたがって踏み倒さずちゃんと払うよ、と言ってるので、暗黙というか公然と奴隷売買でござります。光武帝の場合は王莽以来の混乱のどさくさで奴隷にされちゃった者について「訴え出たら庶人にして買い戻し金は払わなくて良し」で、光武帝の責任じゃないわけですけど、劉裕は自分で借り挙げたんだからそらまぁちゃんと返さないといけませんわな。



やったー! 人身売買を行ってるなんて劉裕は人道にもとるクソ野郎だー!!!


と言うウィットに富んだジョークはさておき、ここまで戦時中と言うことで各地より「資産を借り上げて」いたものをきっちり返却するし、足りなくなった分はちゃんと補填もするよ、と言う内容のようでした。えっちょっと待って、この情報めっちゃ面白くない……?


なお、くらすあてね氏には「荷積善之祚 藉士民之力 七廟備文 率由令範」についてのご教示も頂戴しております。こちらも併せて、ありがとうございます!


ほんに、読みが多少マシになってきたって矢先にすぐ全くわけのわからん表現にぶち当たるとか、漢文の世界はひとに慢心させる気が無くて実に配慮が行き届いておりますね……。

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