劉裕120 戊寅詔壬子詔 

戊寅詔


百官

事殷俸薄 祿不代耕

雖  國儲未豐

要令 公私周濟

諸供給 昔減半者 可悉復舊

 百官の業務は多いが、給与は安い。

 その俸禄では畑仕事の代わりを

 まかないきれるものでもない。

 ならば国庫が潤沢でないと言っても、

 彼らの生活は保障されねばならぬ。

 以前に、様々なものの支給を

 半分に減らしたことがあるが、

 今、これを旧来通りに戻す。


六軍 見祿粗可 不在此例

其餘官僚 或自本俸素少者

亦疇量增之

 軍人への支給は、ほぼ問題あるまい。

 故にこの措置からは除外する。

 それ以外の官僚や、また、

 そもそも俸禄が少なかった者へ

 計算検討の上、加増せよ。



壬子詔


往者

軍國務殷 事有權制

劫科峻重 施之一時

 以前、戦乱の多かった頃には、

 様々なものが仮の措置として

 定められていた。

 このためいわゆる強盗に対する罰が

 非常に重くなっていた。

 ただしこれは、仮のものである。


王道惟新 政和法簡

可一除之 還遵舊條

 いま新たな皇帝が立つに至り、

 政は温和なものに、法は簡素なものに

 切り替えられてゆかねばならぬ。

 そこで上掲の量刑を除き、

 旧来のものに戻す。


反叛淫盜三犯補冶士

本謂一事三犯 終無悛革

 謀反・姦淫・強盗。

 これらの罪を犯したものは現在、

 鉱山での採掘、鍛造を課せられている。

 ただこれは元々、上掲犯罪を繰り返し、

 悔い改めるつもりのない者に

 課せられたものであった。


主者頃多并數眾事 合而為三

甚違立制之旨 普更申明

 しかるに、現在の量刑者は

 これら量刑裁判に多くかかずらう内、

 その基準を改変し、上掲三罪をなす者を

 鉱山送りとしてしまっている。

 これは法令の精神より

 外れたものであるから、

 ここに広く是正を命じる。




戊寅,詔曰:「百官事殷俸薄,祿不代耕。雖國儲未豐,要令公私周濟。諸供給昔減半者,可悉復舊。六軍見祿粗可,不在此例。其餘官僚,或自本俸素少者,亦疇量增之。


壬子,詔曰:

「往者軍國務殷,事有權制,劫科峻重,施之一時。今王道惟新,政和法簡,可一除之,還遵舊條。反叛淫盜三犯補冶士,本謂一事三犯,終無悛革。主者頃多并數眾事,合而為三,甚違立制之旨,普更申明。」制有無故自殘傷者補冶士,實由政刑煩苛,民不堪命,可除此條。


(宋書3-13_政事)




政令にまつわる詔勅がまた難易度跳ね上がってどうしよう、みたいな顔になってる。



○前者については、魏晋南北ブログ氏より俸給の増減に関連する詔勅二点のご紹介を頂戴した。


1:往事故之後,百度未充,羣僚常俸,並皆寡約,蓋隨時之義也。然退食在朝,而祿不代耕,非經通之制。今資儲漸豐,可籌量增俸。

372年、東晋簡文帝の治世(つまり苻堅の脅威がほぼマックスとなった頃)にある詔勅。多少蓄えが増えたから俸給を上げるよ、と言うもの。上げないと兵士たちのモチベも上がらなくてやばかった、とかもありそう。


2:狡寇縱逸,籓守傾沒,疆埸之虞,事兼平日。其內外衆官,各悉心戮力,以康庶事。又年穀不登,百姓多匱。其詔御所供,事從儉約,九親供給,衆官廩俸,權可減半。凡諸役費,自非軍國事要,皆宜停省,以周時務。

379年、淝水の四年前の詔勅。「敵からの攻撃もやべーし不作もやべー。なので俸給半分にするね」。えっ、となるとここから420年までの41年間、役人の俸給がずっと半分だったってこと……?



○後者について、ぱーまねんと・のんある氏より「刑罰を軽くする一連の措置の一環なのかもしれない」とご教示を頂戴した内容を反映してあります。うーん、自力でここに到達するの無理。


なお宋書には後日談的な内容も載せられています。それがこちら。


制有無故自殘傷者補冶士,實由政刑煩苛,民不堪命,可除此條。

法制では「何故か自殺しようとした」人間も鉱山送りとなっていたようですが、いやいやそれって政令が諸々ギチギチだったせいでしょうよという話になったので、この法制を撤廃したのだ、と。


この辺から見えてくるのは「鉱石需要が大幅に減った」ことでしょうか。そこまで採掘者、鍛冶者が要らなくなったからルールを緩めた、というように見えます。


うーん、そういう受給的な面から見れば、「宋は晋の時代に比べて平和になった」と言えなくもないのかしら?

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