劉裕119 大使派遣詔  

古之王者 巡狩省方

躬覽民物 搜揚幽隱

拯災卹患

用能

風澤遐被 遠至邇安

 古の王は自ら巡察、狩猟を通じ、

 下々の様子を見て回られ、

 奥深きところに潜むものを掬い上げ、

 災いや煩いを解決なされたという。

 故にその恩寵は遙か遠方にまで及び、

 遠方のものは王を慕って集い、

 近隣のものは王の元で安んじた。


朕以寡闇 道謝前哲

因 受終之期

託 兆庶之上

鑒寐屬慮 思求民瘼

 朕の寡聞では、先王の振る舞いに

 遠く及ばぬこと、

 恥じ入るばかりである。

 しかし晋より天命を譲り渡され、

 億兆の民を導く役を担ったからには、

 寝ても覚めても思考を途切ることなく、

 民の苦しみを取り除くよう、

 計らってゆかねばならぬ。


才弱事艱 若無津濟

夕惕永念 心馳遐域

 我が才では、これら困難を

 いかほどに救済できようか。

 日々、不断に、遠方に心を馳せる。


可遣大使 分行四方

旌賢舉善 問所疾苦

 故に、各地に大使を派遣する。

 ぜひ各地の賢人善人を推挙し、

 あるいはそなたらの

 苦労している点なども伝えて欲しい。


其有

獄訟虧濫 政刑乖愆

傷化擾治 未允民聽 者

皆當 具以事聞

 訴訟ごとに関する手違い、

 政治刑罰に関する手落ち、

 教化統治に関する妨げ、

 満足に民の訴え入れを聞き入れぬ、

 と言ったようなことがあれば、

 それもまた、大使に申し出よ。


萬事之宜 無失厥中

暢 朝廷乃眷之旨

宣 下民壅隔之情

 万事を整えるためにも、

 国内に手落ちがあってはならぬ。

 朝廷の意図をあまねく伝え、

 可視化されづらい民草の思いを

 明らかとさせよ。




古之王者,巡狩省方,躬覽民物,搜揚幽隱,拯災卹患,用能風澤遐被,遠至邇安。朕以寡闇,道謝前哲,因受終之期,託兆庶之上,鑒寐屬慮,思求民瘼。才弱事艱,若無津濟,夕惕永念,心馳遐域。可遣大使分行四方,旌賢舉善,問所疾苦。其有獄訟虧濫,政刑乖愆,傷化擾治,未允民聽者,皆當具以事聞。萬事之宜,無失厥中,暢朝廷乃眷之旨,宣下民壅隔之情。」


(宋書3-12_政事)




この詔勅、不思議なんですよね。後に劉義隆りゅうぎりゅうが即位したときにも同じような動きを取ってるんですが、そのときにはどの大使がどこに行ったか、ってのが残されてるんです。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054895306127/episodes/1177354054898137619


けど、それが劉裕りゅうゆうのときには載ってない。どっちかってと劉裕のときの方の大使の方が重要じゃないっすかね? 他の列伝でも全然この話が出てこなかったってことは、すべての大使が「宋書に載ってない人物」ってことにはなるんでしょうけど。


結構晋宋しんそう交代期を占うのに面白い人物がいたんじゃないかなあって思うんですが、まぁ、いないもんは仕方ないっすね。

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