劉裕114 即位典策文 1

420 年夏、劉裕りゅうゆうは禅譲を受諾、即位します。このとき建康けんこう城の南にある庭園に祭壇が構えられ、柴を焼いた煙で天に報告した、とのこと。ここから南朝宋なんちょうそうが始まります。関連はこちら:

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888050025/episodes/1177354054889022502



皇帝臣裕 敢用玄牡

昭告 皇天后帝

 皇帝たる臣、裕が

 上古よりの儀礼に従って黒毛の牛を捧げ、

 明らかに、天帝に申し上げる。


晉帝 以

卜世告終 歷數有歸

欽若景運 以命于裕

 しんの皇帝は裕へと天命が

 移行した旨に気付かれ、

 つつしみて天命に従い、

 裕に即位をお命じになられた。


樹君宰世 天下為公

德充帝王 樂推攸集

 君子を立てて世を統べるに、

 子でなく臣下に継承をなさるは、

 徳に満ちた帝王を民が喜んで推挙し、

 その声が募るからである、と言う。


越俶唐虞 降暨漢魏

靡不 以

上哲 格 文祖

元勳 陟 帝位

 遙かな昔の、堯や舜。

 時が下れば、漢や魏。

 最も優れた哲人が帝王の廟を継ぎ、

 最も際立った臣下が帝位に就く。

 これらは覆しようのないこと。

 

故 能

大拯黔首 垂訓無窮

 ならば我も、大いに民を助け、

 すべての民を導かねばなるまい。




永初元年夏六月丁卯,設壇於南郊,即皇帝位,柴燎告天。策曰:


皇帝臣裕,敢用玄牡,昭告皇天后帝。晉帝以卜世告終,歷數有歸,欽若景運,以命于裕。夫樹君宰世,天下為公,德充帝王,樂推攸集。越俶唐、虞,降暨漢、魏,靡不以上哲格文祖,元勳陟帝位,故能大拯黔首,垂訓無窮。


(宋書3-7_文学)




即位詔勅、現存する元ネタは、おそらく論語ろんご堯曰ぎょうえつ


 予小子履,敢用玄牡,敢昭吿于皇皇后帝。


あとは墨子ぼくし兼愛けんあいにも載ってる。


 予小子履,敢用玄牡,告於上天后。


これらが書かれた当時にあった古代儀礼の本には元ネタが載ってたんだろうけど、いまは散逸。一応書経には書いてあるんだけど、書経は半分ほどが東晋の時代の偽作と判明しているそうなので「元ネタ探しには」役に立たない。っつーか経典のはずなのに散逸してるとかどういうことなの……。


ちな「敢用玄牡」って表現、殷の湯王が、まだ殷の祭礼儀式がしっかり定まってないから、ひとまず夏の祭礼に則った形で儀式をするよ、的な意味らしい。つまり周以下の王者が国を開いたときに言うとトンチンカンな内容ってことになるんですが大丈夫なんですかね……。

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