劉裕83 決起檄文 下  

輔國將軍劉毅 廣武將軍何無忌

鎮北主簿孟昶 兗州主簿魏詠之

寧遠將軍劉道規 龍驤將軍劉藩

振威將軍檀憑之等

 輔国将軍の劉毅りゅうき、廣武将軍の何無忌かむき

 鎮北主簿の孟昶もうちょう、兗州主簿の魏詠之ぎえいし

 寧遠将軍の劉道規りゅうどうき、龍驤将軍の劉藩りゅうはん

 振威将軍の檀憑之だんひょうしら。


忠烈斷金 精貫白日

荷戈奮袂 志在畢命

 彼らの壮烈なる忠義心は鉄をも断ち、

 その気力は太陽にまで届き、

 戈をもって袖を振るい、

 命尽きてもこの志を果たす覚悟である。


益州刺史毛璩

萬里齊契 掃定荊楚

江州刺史郭昶之

奉迎主上 宮于尋陽

 益州えきしゅう刺史の毛璩もうきょは万里を駆け

 諸士を結び付け、荊楚けいそを掃定した。

 江州こうしゅう刺史の郭昶之かくちょうしは陛下をお迎えし、

 尋陽じんように匿った。


鎮北參軍王元德等

並率部曲 保據石頭

揚武將軍諸葛長民

收集義士 已據歷陽

征虜參軍庾賾之等

潛相連結 以為內應

 鎮北參軍の王睿おうえいらは部曲を率い、

 石頭せきとう城を占拠。

 揚武将軍の諸葛長民しょかつちょうみんは義士を集め、

 歷陽れきようを守っている。

 征虜參軍の庾賾之ゆせきしらは水面下にて相結び、

 内応の手助けをした。


同力協規 所在蜂起

即日斬偽徐州刺史安城王脩

青州刺史弘首

 皆々が協力し合い、

 己の持ち場にて蜂起し、速やかに

 徐州じょしゅう刺史・安城あんじょう王を偽称した桓脩かんしゅう

 青州せいしゅう刺史を偽称した桓弘かんこうの首を斬った。


義眾既集 文武爭先

咸謂不有一統 則事無以輯

 ここに義の徒は集まり、

 文武が先を争い、

 たとえその心がひとつところに

 集まっていないとは言えども、

 いま我々はこうして集っている。


裕辭不獲已 遂總軍要

庶上憑祖宗之靈 下罄義夫之力

剪馘逋逆 蕩清京輦

 私はやむを得ず、この軍要を

 統べることとなった。

 祖宗の霊を、義夫の力を借り、

 逋逆の徒の首を取り、都を蕩し、

 清めようではないか。


公侯諸君

或世樹忠貞 或身荷爵寵

而並俛眉猾豎 自効莫由

顧瞻周道 寧不弔乎!

今日之舉 良其會也

 公侯諸君!

 忠貞を示すもよし、

 立身出世の機会にするでも、

 また物事の道理を弁えぬ愚か者を

 誅したい、というのでも構わない。

 衰微したしゅうの歴史に

 このしんが倣うのでは、

 あまりにも悲しきことではないか!

 今日の蜂起は、諸君らが

 銘々に抱えた志を果たす好機でもある。


裕以虛薄 才非古人

勢接於已踐之機 受任於既頹之運

 私は非力で、古人のような

 才覚は持ち合わせていないが、

 今こうして義挙の機運を高めた諸君を

 目の当たりとし、

 この晋朝の危地を救うべく、

 諸君らの前に立とう。


丹誠未宣 感慨憤躍

望霄漢以永懷

眄山川以增厲

 真心はいまだ明らかとならぬが、

 感慨憤躍し、

 大いなる青天に臨んで思い久しく、

 山川が厲に増すのを見届ける。


授檄之日 神馳賊廷

 この檄を受け、

 神は賊のはびこるちまたに

 天罰を下しにやってこられよう。




輔國將軍劉毅、廣武將軍何無忌、鎮北主簿孟昶、兗州主簿魏詠之、寧遠將軍劉道規、龍驤將軍劉藩、振威將軍檀憑之等,忠烈斷金,精貫白日,荷戈奮袂,志在畢命。益州刺史毛璩,萬里齊契,掃定荊楚。江州刺史郭昶之,奉迎主上,宮于尋陽。鎮北參軍王元德等,並率部曲,保據石頭。揚武將軍諸葛長民,收集義士,已據歷陽。征虜參軍庾賾之等,潛相連結,以為內應。同力協規,所在蜂起,即日斬偽徐州刺史安城王脩、青州刺史弘首。義眾既集,文武爭先,咸謂不有一統,則事無以輯。裕辭不獲已,遂總軍要。庶上憑祖宗之靈,下罄義夫之力,剪馘逋逆,蕩清京輦。

公侯諸君,或世樹忠貞,或身荷爵寵,而並俛眉猾豎,自効莫由,顧瞻周道,寧不弔乎!今日之舉,良其會也。裕以虛薄,才非古人,勢接於已踐之機,受任於既頹之運。丹誠未宣,感慨憤躍,望霄漢以永懷,眄山川以增厲。授檄之日,神馳賊廷。


(宋書1-46_言語)




この檄文は何無忌が書いたものであると明らかになっているのですが、毛璩や郭昶之が味方に回ってくれるとは確定していない状況、さらに王睿や諸葛長民が成功するとも確定しきれない(というか、どちらも失敗した)状況でこれだけのブッパをかますとか、文章そのものについてはさておき、構想そのものにはだいぶ劉裕も噛んでいそうです。あのひとハッタリを強引に押し切って、現実にしちゃうタイプのポケモンだからね……こわい……。

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