第2話 無実の首




 下唇を噛みしめる。

 ばれないように、しかし強く。

 口のなかが鉄臭くなってきた。


 私がなんの罪を犯したのだろう。

 私は犯人を知っている。


 でも言ったところで状況は変わらない。


 女ならば容赦してくれるだろうか?

 答えは否だった。この事件は女だろうが幼児だろうが全て死に値する。


 斬首であることすら甘え。

 首斬りは貴族に与えられる処刑方法だ。


 恐怖はもう感じなくなっていた。

 刑吏を見たときも、ああ、この人が私の首を斬るんだ、と感じるほど。


 最後は凛々しく、強く、気高く散れと、先に逝っている父の教えだ。

 反抗はしない、叫びもしない。

 

 でも少しだけわがままを。


 なるべく上手くやってください。


 この刑吏はベテランだ。

 この光景をいかにもみなれていそうな、その態度からわかる。


 何人の首を落としてきたのだろう。


 でも少しだけ気がかりが。


 あの目に見えた迷いはなんだろう。





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