褪めない夢
無記名
独善的好意
「好きです」
そう口に出すのは容易なことだ。相手の反応をうかがわなければいい。一方的に、相手がどう思おうと関係ない、私はあなたが好きだと一方的に、独善的に、自己完結しながら、伝えればいい。
でもきっと、そこに発展性はない。継続性もない。独り善がりなアイは、自己完結的な好きは、きっとどこかで破綻して、なにもかも「最初から無ければよかったのに」なんて、抹殺したいくらい醜い思い出に成り果てる。
なのに。
思い出したくもないのに。なにもかもが消えて仕舞えばいいのに。
それくらい憎くて恥ずかしくて忘れたいと願うのに、
あの時好きだったその瞬間の光景が、心象が、カケラが、消えてくれない。
ふとした瞬間、その人の言葉が蘇る。脳内で反響する。最後のコトバとともに。
自分のことが嫌いなあなたが何より尊く思えた。
幸せが分からないとつぶやくあなたが誰より愛おしかった。
同じ空間を共有したこともないのに
機械を経由しただけのやり取りなのに
こんなにも惹かれるなんて、思ってもみなかった。
決別した後にこんな気持ち悪い長文が書けるくらい、
それくらい
そんなにも
自分でもなぜだかわからないけれど
恋に恋していたのかもしれないけれど
あなたと見ていた夢は
たぶんきっと、いつまでも消えてくれないんだ。
たとえそれが冷めて、欠けて、腐って、朽ち果てても。
ゼロにはなれない。無にはできない。無かったことには、できないんだ。
・・・ありがとう。そして、さようなら。
幸せが分からなくてもいい。
あなたが望むことだけすればいい。
どうか。
どうか、ぼくと見たものよりもっといい夢を、未来のあなたが見られますように。
褪めない夢 無記名 @nishishikimukina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます